ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

ドラマ「クランフォード」と「女だけの町」 〜19世紀の英国本〜

2007〜2009年にBBCで放送されたドラマ「クランフォード」

クランフォード シーズン1 [DVD]

日本でも以前LaLaTVで放送されたようですが、今回イマジカBSが放送してくれたおかげで、とても素敵なこのドラマの出逢えて嬉しい気持です。

クランフォード シーズン2 [DVD]

9月(2015年)前半にも再放送されますので、これからご覧になる方は下記のサイトで放送スケジュールをご確認ください。

イマジカ番組ラインナップ(ドラマ):http://www.imagica-bs.com/genre/detail.php?genre_id=2

19世紀、イギリスの田舎町「クランフォード」に住む善良な婦人達の物語なのですが、どこか記憶と重なるなぁと思っていたら。。。

ギャスケルのこの本 ↓ がベースになってるからでした。なるほど。

女だけの町―クランフォード (岩波文庫 赤 266-1)

女だけの町―クランフォード (岩波文庫 赤 266-1)

 

しかしドラマには、本には出て来ないエピソードや人物が登場します。
どうやら、ドラマは「Cranford」の他に「My Lady Ludlow」「Mr. Harrison's Confessions」という短編も合わせて構成されているようです。
そのおかげか本よりもドラマの方が話に広がりがあり、グンと面白くなっています。

「女だけの町」の登場人物はオールドミスの姉妹をはじめ、年配の女性だらけ。
ブラウン大尉やミスターホルブルックは登場しますが、いずれにせよお年寄りだらけで、お世辞にも華やかとは言えません(笑)

一方、ドラマでは若いハリソン医師(サイモン・ウッズー最近あまり見かけないなぁ)の恋や、土地管理人エドマンド・カーター(フィリップ・グレニスター)と少年の触れ合いなども描かれています。
たいした事も起きない平和で保守的な田舎町、そこで起きるささやかなエピソードも面白いのですが、やっぱり若い男女の恋や、貧乏だけど向上心のある少年の話などが織り込まれている方がドラマ映えしますよね。

さらに、実力派俳優達の魅力ある演技によって引き込まれるのは、本にはない映像の素晴らしさ。
ジュディ・デンチやイメルダ・スタウントンの演じる老嬢が、すこぶる可愛い!

書き手(語り手)のメアリー・スミスは、ベネディクト版「ホーキング」(2004年)でジェーン役だったリサ・ディロンです。

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今作では控えめだけど芯が強く、広い視野を持った女性の役がピッタリでした。

ラドロー卿夫人役のフランチェスカ・アニスは、クリスティの「おしどり探偵」シリーズのドラマ(1980年代)でタペンス役だった方。

おしどり探偵「なぜ、エヴァンズに頼まなかったか」[英国オリジナル版] [レンタル落ち] [DVD]

このドラマシリーズ、かなりユルかったけど(笑)華麗なドレスを着こなす彼女が優雅でとても美しかった。

少年ハリー役は、ダニー・ボイル監督「ミリオンズ(Millions)」 (2004年)のアレックス・エテル

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デボラ・ジェンキンズ役のアイリーン・アトキンスは、映画「ゴスフォードパーク」(2001年)やクリスティのドラマなどで御馴染みの人
彼女のデボラは存在感あったなー。

トム・ヒドルストンの従兄弟役で出てたミシェル・ドッカリー(Michelle Dockery)は勝ち気なご令嬢という役柄が「ダウントンアビー」とカブってて、ちょっと笑えます。

他にも、メイド・マーサに、クラウディー・ブレイクリー
ブラウン大尉に、ジム・カーター
フォレスター夫人に、ジュリア・マッケンジー
ホルブルック氏に、マイケル・ガンボン等々
長くなるのでこれくらいにしておきますが、とにかく隅々まで豪華なキャスティングで、見応えタップリです。

原作「女だけの町」に登場する人達は昔堅気な生活様式を頑に守っていて、自分がその社会にいると想像すると、とても耐えられそうにありません(笑)
それでも、この人達の根底にある善良さや道徳観から一種牧歌的な懐かしさが感じられ、心穏やかになるのです。
不便さをあえてやせ我慢しているような、そんなイギリス人気質みたいなものまで愛おしく思えてくるのが不思議です。

作者ギャスケルは、同時代のディケンズやブロンテと比べるとそれほど有名な作家ではないでしょうし、私もこの本以外に彼女の作品を読んだことがありません。
ブロンテが亡くなった後、彼女と個人的にも交流のあったギャスケルが書いた伝記は、そのうち読みたいと思っている一冊。

ギャスケル全集〈7〉シャーロット・ブロンテの生涯

ギャスケル全集〈7〉シャーロット・ブロンテの生涯

  • 作者: ギャスケル,日本ギャスケル協会,山脇百合子
  • 出版社/メーカー: 大阪教育図書
  • 発売日: 2005/06/28
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
 

 

19世紀イギリスの風俗・風習がユーモラスに描かれているという点で、こちらも私が好きな本

ブレイスブリッジ邸 (岩波文庫)

ブレイスブリッジ邸 (岩波文庫)

 

著者は19世紀前半のアメリカ人作家、ワシントン・アーヴィング
アーヴィングは、こちらの短編集 ↓ の方が有名ですが、私は未読。

スケッチ・ブック(上) (岩波文庫)

スケッチ・ブック(上) (岩波文庫)

 
スケッチ・ブック(下) (岩波文庫)

スケッチ・ブック(下) (岩波文庫)

 

この中の「クリスマス・イヴ」の続編的物語が「ブレイスブリッジ邸」らしいので、後々この本も読みたいと、楽しみにしています。

 

【関連する記事】

「ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール」〜1粒で2度美味しい!〜

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<p公式サイト:http://www.godhelpthegirl.club/
※音声が出ますのでご注意ください

監督・脚本:スチュアート・マードック
製作:バリー・メンデル
(2014年 イギリス製作 111分)
原題:GOD HELP THE GIRL

※ネタバレを含みます

【この映画について】
ベル・アンド・セバスチャン(Belle and Sebastian)のフロントマン、スチュアート・マードックが、2009年に発表したソロ・アルバムを自らミュージカル映画化した。
【ストーリー】
スコットランド、グラスゴー。
拒食症で入院中の少女イヴ(エミリー・ブラウニング)は、ある日病院を抜け出し、ライブハウスに向かう。
そこでジェームズ(オリー・アレクサンデル)と知り合ったイヴは、彼の友人のキャシー(ハンナ・マリー)を紹介される。

スチュアート・マードックって、なんかすごくセンスいい人だなぁ。

物語ではなく、音と映像で魅せる映画。

God Help The Girl Official Teaser Trailer #1 (2014) - Emily Browning Movie HD

 
この映画に関しては言葉で説明するよりも、まずサントラを聴いてもらう方がいいと思います。

最近(1990年以降ずっとですが)の音楽には疎い私、、、
ベル・アンド・セバスチャンもスチュアート・マードックも全く知りませんでした。
が、映画の予習でサントラを聴くと、ものすごくイイ曲ばかりじゃありませんか!

ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール オリジナル・サウンドトラック

ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール オリジナル・サウンドトラック

  • アーティスト: サントラ,ニール・ハノン&エミリー・ブラウニング with ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール,オリー・アレクサンデル with ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール,スティービー・ジャクソン with ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール,エミリー・ブラウニング with ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール,セリア・ガルシア with ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール,ハンナ・マレー with ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール,エミリー・ブラウニング,ベル&セバスチャン,オリー・アレクサンデル with エミリー・ブラウニング&ハンナ・マレー,スチュアート・マードック&イザベル・キャンベル
  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2015/07/22
  • メディア: CD
  • この商品を含むブログ (1件) を見る
 

とりあえず、オープニングのこの曲&映像を見てワクワクする方なら、映画を見に行っても楽しいんじゃないでしょうか。

God Help the Girl - Act of the Apostle


"I Just Want Your Jeans" はキャシー役のハンナ・マリーが歌う曲です。
彼女の歌は音程が非常に不安定で、悪く言うとヘタ、良く言うと初々しくてこの曲にすごくあってると思います。
実はこのアルバムの中で、一番好きな曲だったりします。

God Help The Girl Soundtrack - 24 "I Just Want Your Jeans"

キャシーが歌う姿は、ぜひ劇場で確認してください。

二番目に好きな曲はこちら。

 God Help The Girl Soundtrack - 11 "Perfection as a Hipster"

この曲を聴くと、なぜか私はD.ボウイを連想する。

さて、出演俳優の中では馴染みのあるオリー・アレクサンダー(ジェームズ役)ですが、彼はYears & Yearsというバンドのボーカルでもあって、歌が上手い。
ほんの少しだけネタバレかもしれませんが、ジェームズの繊細さが伝わってくる映像なので貼っておきます。

God Help the Girl - Pretty Eve in the Tub


オールディーズからフレンチポップス、ネオアコースティックなど、様々なエッセンスが感じられる数々の曲、登場人物達のキュートなファッション、16mm撮影で撮られた映像など、監督のセンスが感じられる作品です。
ちょっと素人っぽい感じが逆に良いのかな〜


ちなみに、イアン・カーティス(ジョイ・ディヴィジョン)、ザ・パステルズ、ロディ・フレイムなどについて語っていたDJは、BBCラジオのパーソナリティ、Radcliffe & Maconie らしいです。

2009年に発売されたアルバム ↓「God Help the Girl」と、昨年発表された映画のサントラバージョンのそれとを聴き比べするのも面白いかもしれません。

God Help the Girl

God Help the Girl

 

映画自体も楽しいし、後々サウンドドラックを聴く楽しみもあるから、長く楽しめます。
できればもう一度、見に行きたいですけどね。

参考までに、オリー・アレクサンダー率いる3人組ユニットYears & Yearsの曲はこんな感じ

7Years & Years - Real

ビデオではベン・ウィショーが変テコなダンスを披露してる!
こうして映画の共演者にPV出演してもらってるんですね。
今作で共演したエミリー・ブラウニングも「Take Shelter」という曲のビデオに出ています。

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素敵な女の子達が登場して良いメロディを奏でるミュージカルって、やっぱりそれだけでウキウキする ♪
久しぶりに「ロシュフォールの恋人たち」(1966年)を見たくなりました。

シネ・リーブル梅田 にて鑑賞

 

ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール 通常版 DVD

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【類似する映画の記事】

 

 

「彼は秘密の女ともだち」〜性別なんかどうでもよく思える〜

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公式サイト:http://girlfriend-cinema.com/
※音声が出ますのでご注意ください

監督・脚本:フランソワ・オゾン
原案:ルース・レンデル
衣装:パスカリーヌ・シャヴァンヌ
メイクアップ:ジル・ロビヤール
撮影:パスカル・マルティ
(2014年 フランス制作 107分)
原題:Une nouvelle amie

※ネタバレを含みます

【ストーリー】
クレール(アナイス・ドゥムースティエ)は幼い頃からの親友のローラ(イジルド・ル・ベスコ)を亡くし、悲しみに暮れていた。
残された夫のダヴィッド(ロマン・デュリス)と生まれて間もない娘を守ると約束したクレールは、二人の様子を見るために家を訪ねる。
するとそこには、ローラの服を着て娘をあやすダヴィッドの姿があった。
(公式サイトより転記させていただきました)

ロマン・デュリスの役者っぷりを見た!

大切な人を失った喪失感、その人と過ごした想い出の日々ー
哀しみにどっぷり浸ったセンチメンタルな映画の始まり

しかし、ジョギング途中のクレールがダヴィッドの様子を見に彼の家を訪れたあたりから、映画のトーンがグッと変わります。

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見る前は、デュリスが女装ってどうなん?と(笑)
かなりコメディ寄りの映画なのかな〜?とか勝手に想像してましたが、いやいや。
クスッと笑えるシーンもありますが、恋愛映画としての比重が高いです。

なんといっても女性の姿をしたロマン・デュリス、立ち居振る舞いや仕草がエレガントなんです。
そして、足が奇麗!
あのゴツくてヒゲの濃いご面相から、こんな素敵な女性になるとは想像できなかったけど。

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ダヴィッドは異性装者ですが、ゲイではありません。
グザヴィエ・ドラン監督の「わたしはロランス」(2012年)を思い出します。
こちらの主人公もただ女性になりたいだけで、愛する対象は女性でした。

そんなダヴィッドを最初は非難していたクレールですが、女装した彼を「ヴィルジニア」と名づけ、秘密を共有することになります。
夫といる時よりも、ヴィルジニアと会っているクレールは楽しそうでウキウキしています。

ここまでくると、ハンサムで仕事もできて優しい非の打ち所がない夫ジル(ラファエル・ペルソナ)が可哀想になってきます。
見ているこちらは、ロマン・デュリスよりラファエル・ペルソナの方が、ずっといいのに〜などと思ってしまうわけです(笑)

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しかし、クレールはヴィルジニアに夢中になるんですね。
彼女はバイセクシャルなのかもしれませんが、自覚していなかった幼馴染ローラに対しての恋愛感情も、ここで初めて認識したようです。

フランス映画らしくベッドシーンも結構ありますが、現実のソレはアイナス・ドゥムースティエが少女体型なせいか、全くエロティックではありません。
逆にクレールの妄想、男同士ダヴィッドとジルのシーンがエロいです。
このあたりはオゾン監督ならではというか、ちゃんといやらしく撮れてて、さすがだなぁと感心(笑)

ヴィルジニアとクレールが夜遊びに行った先、ドラッグクイーンがショウで歌うシャンソンが印象的です


Nicole Croisille Une femme avec toi

↑ 「男と女」のあの「ダバダバダ〜♪」(フランシス・レイ作曲)も歌っているニコール・クロワジールです ♪

この歌詞に共感する人達が集う、その場所・その瞬間は二人にとっても特別なモノだっただろうし、見ているこちら側にもそんな「何か」が伝わってきます。
この曲は後にクレールによっても歌われますが、こういう音楽の使い方がホント、上手いと思います。

個人的には女装でも男装でも、好きな相手が男性でも女性でも、またはどちらでもなくても良いと思うのですが、便宜上、性別で区切りたがるのが今の社会。
本音で生きていく方が楽しいのに、それをなかなか実践するのが困難な世の中だからこそ、こういう作品が生まれるんでしょうね。

シネ・リーブル梅田 にて鑑賞

 

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若尾文子映画祭 青春ーその4

シネ・ヌーヴォで開催中の「若尾文子映画祭 青春」(2015年7月11日から9月4日まで)

今週は4本鑑賞。
※ネタバレを含みます。結末に触れていますので、ご注意ください

【心の日月】
1954年/モノクロ/91分
監督:木村_恵吾
原作:菊池寛
脚本:木村_恵吾/田辺朝二
撮影:姫田眞佐久

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私なら、間違いなく中田社長を選びます!

戦前に入江たか子さん主演で映画化された、菊池寛原作の再映画化です。
1953年に公開された松竹映画「君の名は」の大ヒット以降、こういう「すれ違い」をテーマにしたメロドラマは量産されたらしいので、その影響もあるのかもしれません。
ちなみに、映画版「君の名は」岸恵子・佐田啓二(←中井貴一のお父さん)主演。

田舎から出て来た麗子(若尾文子)は仕方がないとしても、そこに下宿している磯村(菅原謙二)が駅の出口を確認しないのにイラッとします(笑)
ま、磯村がこれほどボンヤリした人間だから、この物語が成り立つんですが。

デパートのハンカチ売場で働く麗子を尋ねる中田(船越英二)ですが、来る度、あんなに何ダースもハンカチを買って大丈夫でしょうか?(笑)
経済的には余裕でしょうが、お使い物にするにしても限度があるでしょうし。

この映画、磯村と麗子を引き合わせる中田がカッコよすぎます!
逆に、あんなスカタンな磯村にすぐ幻滅しそうな麗子が心配です(笑)

飯田橋駅の道が鋪装されてなくて土だったり、公衆電話ボックスが木造だったり、昭和30年代の日本が垣間見れます。

【氾濫】
1959年/カラー/97分
監督:増村保造
原作:伊藤整
脚本:白坂依志夫
撮影:村井博
美術:西岡善信

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増村監督、それはアカン!

この映画、若尾さんは脇役です。
なのに、クレジットもトップ、ポスターにもお顔がデカデカと。
若尾さん人気にあやかろうという、当時の会社の意図がミエミエです(笑)

主役は佐分利信さん演じる、化学技術者・真田佐平
佐分利さんといえば、多くを語らずぶっきらぼうだけど頼もしい、
「うーん」とも「うん」とも言えない返事をする、そんなイメージ。
小津監督「お茶漬の味」(1952年)では、妻に「鈍感さん」と呼ばれてましたっけ。

真田佐平以外の登場人物達はみな、物質的または性的欲望を追い求めます。

真田が重役になり、生活が派手になった妻・文子(沢村貞子)と娘・たか子(若尾文子)
そこに群がるお花の師匠(伊藤雄之助)とピアノの教師(船越英二)
自らの出世という野心の為、女性を利用する種村(川崎敬三)
現金と引き換えに、種村に見切りをつける京子(叶順子)
援助が目的で、真田近づく幸子(左幸子)
考えてみれば、金銭&出世目的で真田に近づく人物ばかりが登場します。

中でも、久我教授のネチネチした態度にイライラします。
中村伸郎さん、さすがですね。
潮万太郎さん演じる社長も下衆の極みといった感じで、あの笑い方に「おまえは悪代官か!」とツッコミ入れたくなるし(笑)

一番憎たらしいはずの種村にさほど怒りを覚えないのは、川崎敬三さんの演技が軽過ぎるからかな?
野心家のギラギラした感じが、全く伝わってこないのです。
例えば田宮二郎さんだと、その辺がもっと出て良かったんじゃないかなぁ。

たか子は鏡を見ながら「私ってなかなか魅力のある娘でしょ」なんて浮かれポンチな事を言っています。
なので後々種村に捨てられても、全く同情する気持ちが起こりません。
どのみち、彼女に捨てられた悲壮感はありませんでしたけどね(笑)

しかし、たか子が種村と男女の関係になるあのシーンは許せませんよ。
2回ビンタされた上に首をしめられて、いいなりになる。。。
ちょっとしたマゾヒストでも、そんな事されて醒めない女性なんていません。
いるとしたら、よっぼどの変態です。
増村監督、このシーンでガクッと品位を落としましたね。

【砂糖菓子が壊れるとき】
1967年/カラー/96分
監督:今井正
原作:曾野綾子
脚本:橋田壽賀子
撮影:中川芳久
美術:下河原友雄

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これは正直、面白くない。

橋田壽賀子さんの脚本が、好みから大きく外れてしまう原因だと思います。
テレ朝の2時間ドラマかと思うような、大げさなBGM
歯が浮くようなセリフ
と、生理的に受け付けない部分が目についてしまった。

て言うか、若尾さんの良い部分が全く引き出されてない!
逆に、原知佐子さんと山岡久乃さんが光っていました。
「M.モンローをモデルとした曾野綾子の同名小説を映画化」
そのせいなのか、衣装がやけにケバケバしくて(笑)
頭があまり良くない女性というのを、強調したかったのかなぁ。

マリリン=京子はもちろん、彼女と結婚する男性達の描き方もステレオタイプ化されているで、面白くないのですよね、きっと。
田村高廣さんが好きなのに、この映画ではパッとしなかったし。

今回の映画祭、どの作品もそれなりに
面白かったのですが、この映画だけはいただけなかったですね。
若尾さんは相変わらず、お美しいのですが。
あっ、津川雅彦さんが格好良かったです。

【閉店時間】
1962年/カラー/100分
監督:井上梅次
原作:有吉佐和子
脚本:白坂依志夫
撮影:中川芳久

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いいな〜、この昭和感!
気楽に楽しめる、恋愛コメディ

マルタカデパートに勤める女性3人
呉服売場の紀美子(若尾文子)
食料品売場の節子(野添ひとみ)
エレベーター係のサユリ(江波杏子)
三者三様の恋愛模様が描かれます。

この映画祭で見た野添ひとみさん、どの役も可愛い!

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家城巳代治監督「姉妹 」(1955年)のような可憐な少女役もいいけど、こういうおっちょこちょいなキャラクターでは、よりキュートさが強調される気がします。

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若尾文子さんは、10代の頃からあまりキャピキャピしてなくて落ち着いたイメージです。
明るいんだけど腰のすわった感じというか。
そのせいか、紀美子は節子と同年代にしてはかなり大人な感じです。髪形のせいもあるかな。(実際の若尾さんは、野添さんより4つ年上)
紀美子と節子、言いたい事を言い合っていいコンビです。
紀美子が反目する新入社員役が川口浩さんなので、この後の展開はすぐにわかってしまいますね(笑)

川崎敬三さんは、またも女に手が早い不誠実な役です。
「氾濫」とは違いコメディなので、この軽薄さは逆に良かったかも。

そして、江波杏子さんの水着姿が眩しい!  
彼女のファッション&素晴らしいプロポーションに見とれます。

オープニングや劇中で、マネキンを上手く使ってました。


さて、「若尾文子映画祭」は9月4日まで継続中ですが、私は金曜日に見たこの映画が最後になりそうです。
時間があれば「東京おにぎり娘」「美貌に罪あり」に行くかもですが。

今回の映画祭、鑑賞した中で特に好きなのは
「婚期」「お嬢さん」「閉店時間」
あら、全部に野添ひとみさんが出演されてますね。
そしてどれも、たわいないコメディ(笑)

若尾さんの美しさを堪能できる&良い作品という意味では
「安珍と清姫」「女は二度生まれる」「越前竹人形」が特に良かったな〜。

「清作の妻」「永すぎた春」「初春狸御殿」「新源氏物語」その他を見逃した事が残念ですが、次回に期待したいと思います。

こういう女優さんをテーマにした映画祭は、日本映画に馴染みがない人にとってもいいきっかけになると思います。
東京で上映されてる「芦川いづみさん特集」とか、関西でもどこかでかからないかな〜?

 

【関連する記事】

「八月の鯨」 〜永遠のドレス〜

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第三回 新・午前十時の映画祭公式サイト:http://asa10.eiga.com/

監督:リンゼイ・アンダーソン    
製作:キャロリン・ファイファー/マイク・カプラン
脚本:デヴィッド・ベリー    
撮影:マイク・ファッシュ    
音楽:アラン・ブライス
(1987年 アメリカ製作 91分)
原題:THE WHALES OF AUGUST

※ネタバレを含みます

【ストーリー】
メイン州の小さな島にある別荘で、毎年夏を過ごす老姉妹リビー(ベティ・デイヴィス)とセーラ(リリアン・ギッシュ)。
かつて島の入り江は8月になると鯨が現われ、少女だったころの二人は鯨を見に行くのが楽しみだった。
(映画紹介サイトより転記させていただきました)

この映画、もしかして劇場で見るのは初めてかもしれません。
初めて見た時、一番印象に残った事だけは鮮明に覚えているのですが。
それは、別荘で過ごすセーラがお客様を迎える為に念入りにドレスアップしたという事。

当時の私は、それほど世間知らずな若造だったということです。
(今も世間知らずですが、ちょっとはマシになったと思いたい)
一日の中でTPOに合わせ服を着替えるという習慣も知らず、年をとってもお洒落に着飾る心を忘れない人達を、想像すらしていなかったのです。

ちょっとした事に胸をときめかせたり、新たなことを始めたり、そんな事は若者の専売特許だと思ってたのかもしれません。
やがて自分も年を取るのにねぇ。
あぁ! 愚かしい、過去の自分

今見ても、女性達のファッションはエレガントです。
亡命貴族マラノフ役ヴィンセント・プライスも、とても素敵。
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特に、ディナーの為のセーラの装いが大好きなのです。
胸元のペンダントとブレスレットの淡い色調が、なんとも可愛い。
しかし、夫との結婚記念日を祝う為にセーラが着替えたドレス(この日2回目のお着替え)は素晴らしく奇麗ですが、一人ではとても着られそうにないデザインだったのは、ご愛嬌でしょうか。
首から背中にかけてのあの細かいくるみボタンに、ご老人の手が届くとは思えない(笑)

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普段着のワンピース+カーディガンも、色の組み合わせが各女優さんにピッタリ。
リビーは「ブルーが好き」だと言っていましたが、ストライプのシャツドレスはキャサリン・ヘップバーン風で、颯爽としていて素敵です。

私事ですが一時、1950〜60年代のアメリカの古着にはまってた時期がありまして、ここで姉妹が着ているワンピース・ドレスは涎ものなのです。
前回「ボヴァリー夫人とパン屋」でもそうでしたが、そこに登場するのは私にとって永遠の憧れのドレスなんだと思います。

もちろん衣装だけが良いわけじゃなく、それを着こなす女優さんが素晴らしい。

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ベティ・デイビスは何と言っても心理サスペンス「何がジェーンに起ったか?」(1962)の演技がすごすぎて、他のイメージが吹っ飛んじゃってますが、この映画のリビーは刺々しい態度の中にも相反する可愛いらしさがあって、彼女にピッタリだと思います。

何がジェーンに起ったか? [DVD]

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リリアン・ギッシュは登場シーンからしてもう、愛らしくて

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何度見ても「散り行く花」(1919年)の面影そのままなのに、いたく感動してしまうのです。

散り行く花【淀川長治解説映像付き】《IVC BEST SELECTION》 [DVD]
 

 
「月が波間に銀貨をばらまいている」なんて詩的な表現も、素敵です〜
ミスター・マラノフは “girls” とご婦人達を呼んでいましたね。

庭の花を摘み、部屋に飾る。
朝、故人の写真に挨拶をする。
八月に訪れる鯨を見るために、大きな窓をつくる。
そんな一つ一つがセーラにとって大事な事なんだな〜とスッと胸に入ってくるのは、リリアン・ギッシュが演じるせいなのかも。
主演二人あってこその映画だと思います。

私達は一秒一秒確実に死に向かっているのだから、豊かな気持ちで毎日を過ごしたいーそんな気持ちを思い出させてくれる作品です。

八月の鯨 [DVD]

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大阪ステーションシティシネマ にて鑑賞

 

【類似する映画の記事】

「ボヴァリー夫人とパン屋」 〜カラッとしたお色気コメディ〜

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公式サイト:http://www.boverytopanya.com/
※音声が出ますのでご注意ください

監督・脚本:アンヌ・フォンテーヌ
原作:ポージー・シモンズ
脚本:パスカル・ボニゼール
音楽:ブリュノ・クーレ
(2014年 フランス製作 99分)
原題:GEMMA BOVERY

※ネタバレを含みます

【ストーリー】
ランス、ノルマンディーの美しい村でパン屋を営む文学好きのマルタン(ファブリス・ルキーニ)。
愛読書はこの地を舞台にした「ボヴァリー夫人」。
妻と息子と平穏に暮らしていたある日、イギリス人夫婦が隣に越してくる。
妻(ジェマ・アータートン)の名はジェマ・“ボヴァリー”!
(公式サイトより転記させていただきました)

ジェマ・アータートンのお色気が眩しい、妄想コメディ
最近、若尾文子映画祭で見たジメッとしたエロス満載の日本映画とは、実に対照的です。
フランス映画でも「マドモアゼル」(1966年)とか「ラマン」(1992年)とか湿度高めの作品もありますが、今作はカラッと明るいタッチです。

パン屋のマルタンは、隣に越してきたジェマとボヴァリー夫人を重ね合わせ、その考えに夢中になります。

「危険なプロット」(2012年) と同様、ファブリス・ルキーニは他人の生活を覗き見てソワソワする役柄。
彼の得意とするところなので新鮮味はありませんが、それなりに面白い。

マルタンの妄想の対象は、あひる口女優のジェマ・アータートン

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色っぽいというよりは、健康的で庶民的な雰囲気の、キユートな女優さんだと思います。
最近イマジカTVで放送してた「Tamara Drewe」でも、男達をメロメロにする役所でした。

ジェマがよろめく(死語?)相手を演じるニールス・シュナイダー。
こちらも、グザヴィエ・ドランの「胸騒ぎの恋人」(2010年)でモテモテの青年役でした。
しかし、個人的には今ひとつ魅力を感じない俳優さん。
ロバート・パティンソン系の顔は、どーも苦手です。

イギリス人の夫を持つフランス人・ウィジーのキャラが、プチブルジョアを皮肉っているようで面白い。
演じるエルザ・ジルベルスタイン(Elsa Zylberstein)さんは、とてもエレガント(主役と対照的)な女優さんなんですが、この滑稽な役もとてもお上手。

ジェマが着ている普段着のワンピースがどれも可愛くて。
フランス映画に登場する小さなプリント模様のワンピースは、きまっていつも可愛いんです。

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そう思い続けて30数年、私はこんなドレスが似合う年頃をすっかり過ぎてしまいました。シクシク

マルタンの愛犬ギュスが、ウエスティ(ウェスト・ハイランド・ホワイトテリア)の匂いを嗅ぎ付ける出逢いのシーンから、犬の愛らしさも随所で楽しめます。

最後に、ジェマ・アータートン、エディ・レッドメイン共演のTVドラマ「テス(Tess of the D'Urbervilles)」(2008年・BBC制作)が、イマジカTVで9月に再放送されます。
実は前回放送時に見逃したので嬉しいのですが、やっぱりテス役はナスターシャ・キンスキーのようなハッとする美女の方がいいんじゃないかなぁ。
未見なので、言いきることはできないんですけどね。

テアトル梅田 にて鑑賞

 

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若尾文子映画祭 青春ーその3

シネ・ヌーヴォで開催中の「若尾文子映画祭 青春」(2015年7月11日から9月4日まで)

先週は3本のみ鑑賞。
※ネタバレを含みます。結末に触れていますので、ご注意ください

<製作年代順>

【女の勲章】
1961年/カラー/110分
監督:吉村公三郎
原作:山崎豊子
脚本:新藤兼人
撮影:小原譲治

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「あんじょうやっときまっさ」
コテコテの田宮二郎と、展開の早さに引っ張られる悲劇

冒頭、後ろ姿で登場する銀四郎(田宮二郎)の存在感が半端ない!
絵に描いたような如才ない大阪の商人なのですが、その狡猾さを女性陣は最初から本能的に感じていたわけです。
ただし、いとはん(お嬢さん)の式子(京マチ子)だけは、世間知らずというか、女の勘が鋭くない。

六甲のホテルに式子を尋ねるシーンで、若尾さんが摩耶ケーブルに乗ってる!
やっぱり地元が登場する映画は、ウキッと楽しい。
しかし、倫子(若尾文子)が出屋敷のアパートに住んでるとは。
庶民的な下町に住む彼女は、結構お金に苦労してきた人物かもしれません。

一方、父親が銀行員のかつ美(叶順子)からはそれほどの野心は感じられず、一般庶民の真面目な家庭に育ったという感じでしょうか。

富枝(中村玉緒)はある意味、一番したたかです。
銀四郎の弱みを握ってそれを利用し、感情移入はしない。
縫製工場を営む父親の苦労を見てきたのかもしれません。

そして、フランス文学の白石教授(森雅之)は、最終的に腰が引けてました。
森雅之さんは「浮雲」(1955年)のダメ男・富岡のイメージが強いんですが、ここでも「やっぱりか。。。」とガッカリしましたよん。

女優さん達の衣装が華やかで目の保養&勉強になります。
特に帽子が素敵です。
ファッションに興味のある方なら、より楽しめるのでは。
また、田宮二郎さんが細マッチョな上半身を披露してはりますよ。

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【雁の寺】
1962年/パートカラー/98分
監督:川島雄三
原作:水上勉
脚本:舟橋和郎、川島雄三
撮影:村井博
美術:西岡善信

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じっとりと湿度の高い映画
水上勉の直木賞作品「雁の寺」が原作だけあって、暗く陰湿なんですが、コメディのような要素があったり(笑)
これは、川島監督だからなのかしらん。

雁が羽ばたき飛んでいるようなオープニング、素晴らしいですね。
若尾さんのエロスはさすが! 
慈海(三島雅夫)の生臭坊主っぷりも上手い!
ただ、慈念役の俳優さんの演技はちょっと一本調子に感じられました。

あのラスト(カラーになってからの)はいかがなもんでしょうか。
私にはなんだかしっくりきませんでした。

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【しとやかな獣】
1962年/カラー/96分
監督:川島雄三
原作・脚本:新藤兼人
撮影:宗川信夫
美術:柴田篤二

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舞台劇のような、斬新な演出

主役は若尾さんじゃなく、夫(伊藤雄之助)と妻(山岡久乃)だと私は思います。
特に山岡久乃さんの演技からは、どこか人生を諦めているような妻の怖さのようなものが感じられて、素晴らしい。

会話劇としての面白さと、その面白さを表現できる役者によって支えられた作品。
ただし、実役の俳優さんと、謎のミュージシャン(笑)の登場にはちょっと不満でした。

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今週は「心の日月」「氾濫」「東京おにぎり娘」「砂糖菓子が壊れるとき」などを見に行く予定。
「瘋癲老人日記」も谷崎原作で気になるし、「閉店時間」は野添ひとみさんが出演&DVDが発売されていないので、できれば見たいところ。

 

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若尾文子映画祭 青春ーその2

シネ・ヌーヴォで開催中の「若尾文子映画祭 青春」(2015年7月11日から9月4日まで)

先週は4本のみ鑑賞。
※ネタバレを含みます。結末に触れていますので、ご注意ください

<製作年代順>

【最高殊勲夫人】
1959年/カラー/95分
監督:増村保造 
原作:源氏鶏太 
脚本:白坂依志夫 
撮影:村井博 
美術:下河原友雄

源氏鶏太らしい、どうでもいいような(笑)ストーリーなんですが、若尾さん演じる杏子がキュートで楽しいコメディです。
杏子のちゃっかりキャラが、見てて気持ちいいんですよね。

最高殊勲夫人 [DVD]

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若尾文子&川口浩の看板コンビ以上に前に出てくるのが、主人公・杏子の姉の桃子です。

この桃子、一般的なサラリーマン家庭に育ったのですが、今は三原一郎と結婚し社長夫人に収まっています。
今の桃子の狙いは、末の妹・杏子と三原家の末っ子三郎を結婚させる事なのです。

桃子は強烈キャラで、自分の意見をガンガン押し通そうとします。
この役の丹阿弥谷津子さん、イギリス人俳優 Cheryl Campbell (シェリル・キャンベル)さんに似ている。

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シェリルさんは、私が見ているどのイギリス刑事ドラマに、必ずゲスト出演してる人です。
「バーナビー警部」には2回も(違う役で)出ちゃってるし(笑)

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どっしりとした美人&周りに有無を言わせない雰囲気を持ってる役なので、二人がダブッて見えました。

気になったのは、会社の上司が女性社員を「おい」と呼びつけてタバコを持って来させてたシーンの意味。
誇張した表現だとしても(それともこの時代は普通だったのかな?)、なぜ必要だったのかよくわかりませんでした。

オープニングクレジットは、文字の色が保護色化してて全く見えなかったし、ちょっとセンス良くないかも。
「お嬢さん」のオープニングが昭和的レトロな可愛さタップリだっただけに、つい比べてしまいます。

【婚 期】
1961年/カラー/97分
監督:吉村公三郎
脚本:水木洋子
撮影:宮川一夫

「だまれババァ、うるせーぞ」
↑こんな暴言が家庭内で飛び交う映画(笑)
野添ひとみさんだから、可愛いですまされる気もしますが。
今回、映画祭の中で一番面白かったコメディ
オリジナルの脚本が素晴らしく、セリフのテンポがいい。
このDVD、購入決定です。

婚期 [DVD]

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若尾さん演じる唐沢波子は、いわゆるハイミス(今は死語なのかな?)
結構な近眼で、キャットアイシェイプの眼鏡をかけたりはずしたりしてます。

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実は私、幼少時にこのキャットアイ型の眼鏡をかけさせられて恥ずかしかった想い出があるのです。
なんでもっと普通の眼鏡を、親は選ばなかったんだろうか。。。

とにかくこの眼鏡のせいもあってか、波子は(嫁への)行き遅れ感がすごく出てます(笑)
そして、妹の鳩子(野添ひとみ)は姉に輪をかけて毒舌、義姉や婆やをこき使う現代っ子。
こんな二人の小姑にいじめられるのが、唐沢卓夫(船越英二)の妻、静(京マチ子)なんですが、なかなかどうして、この妻は何を考えてるのかよくわからないタイプです。
この妻のすっとぼけた感じも面白いし、お嬢様がた二人の素行をボヤく婆や(北林谷栄)のセリフが抱腹ものです。

よく考えると、唐沢家の女性の中で金銭面・精神面共に自立してるのは、出戻りの長女冴子(高峰三枝子)だけなんですよね。
これも、時代を反映してるな〜と思います。

【爛】
1962年/モノクロ/88分
監督:増村保造
原作:徳田秋声
脚本:新藤兼人
撮影:小林節雄
美術:下河原友雄

若尾さんは、愛人を持つ元ホステスの増子という役柄
なんか生活が荒んでる感じなのですよね。
スリップ姿でタバコを吸い、ゴロッと寝転んでなんだか暇そう。
こんなだらしない役も、若尾さんが演じると汚くはないのだけれど。

爛 [DVD]

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愛人を待っているだけの生活なんて、想像しただけでうんざりです。
増子が自分主体の人生を歩もうとしないので全く共感できないのですが、一人の男の情を死守しようという、その執念はすごいです。
このエネルギーを他の事に回した方が人生豊かになる、とか思うのは私が恋愛体質じゃないからでしょうかね〜。

同じような境遇でありながら「女は二度生まれる」の主人公とは対照的。
「女は〜」の小えんは浮気性だったし、最後には男と切り離したところで自分が生きる道を模索しようとします。
一方、増子はもっと本気で男女問題に取り組んでいます。
「男と女の問題は、ぼんやりしてる方の負け」なんていう感じのセリフがあったけど、真剣勝負ですね。

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「家賃5万円は贅沢」とか、「68歳で長生き」なんてセリフに時代を感じます。
私が目をみはったのは、鰻屋で一人前4尾ずつ鰻がならんで出てきたこと。
この時代も鰻は贅沢品だったでしょうが、今より確実に沢山採れてたんでしょうね。
それにしても、いっぺんに4尾も食べるとは。羨ましい。

この映画でも市田ひろみさんが脇役で出演されてました。この映画祭の作品ではよくお見かけします。

【越前竹人形】
1963年/モノクロ/102分
監督:吉村公三郎
原作:水上勉
脚本:笠原良三
撮影:宮川一夫
美術:西岡善信

抑制された欲望、そこにエロティシズムを感じるのかな〜
若尾さんの、いい女っぷりが堪能できます。エロスです
加えて、カメラワークが素晴らしく美しい〜!

越前竹人形    [DVD]

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相手役の山下洵一郎さん、ちょっと素人っぽい演技ですが逆にそれがこの映画では良かったりします。

それにしても、若尾さんの一挙手一投足が優雅で美しい。
この時代の女優さん、着物を着た時の所作が勉強になりますわ〜。ホホホ

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以上、この週の心残りは「清作の妻」(1965年)を見逃したことです。
今週は「しとやかな獣」「女の勲章」「雁の寺」などを見る予定

 

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