ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

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若尾文子映画祭 青春ーその3

シネ・ヌーヴォで開催中の「若尾文子映画祭 青春」(2015年7月11日から9月4日まで)

先週は3本のみ鑑賞。
※ネタバレを含みます。結末に触れていますので、ご注意ください

<製作年代順>

【女の勲章】
1961年/カラー/110分
監督:吉村公三郎
原作:山崎豊子
脚本:新藤兼人
撮影:小原譲治

女の勲章 [DVD]


「あんじょうやっときまっさ」
コテコテの田宮二郎と、展開の早さに引っ張られる悲劇

冒頭、後ろ姿で登場する銀四郎(田宮二郎)の存在感が半端ない!
絵に描いたような如才ない大阪の商人なのですが、その狡猾さを女性陣は最初から本能的に感じていたわけです。
ただし、いとはん(お嬢さん)の式子(京マチ子)だけは、世間知らずというか、女の勘が鋭くない。

六甲のホテルに式子を尋ねるシーンで、若尾さんが摩耶ケーブルに乗ってる!
やっぱり地元が登場する映画は、ウキッと楽しい。
しかし、倫子(若尾文子)が出屋敷のアパートに住んでるとは。
庶民的な下町に住む彼女は、結構お金に苦労してきた人物かもしれません。

一方、父親が銀行員のかつ美(叶順子)からはそれほどの野心は感じられず、一般庶民の真面目な家庭に育ったという感じでしょうか。

富枝(中村玉緒)はある意味、一番したたかです。
銀四郎の弱みを握ってそれを利用し、感情移入はしない。
縫製工場を営む父親の苦労を見てきたのかもしれません。

そして、フランス文学の白石教授(森雅之)は、最終的に腰が引けてました。
森雅之さんは「浮雲」(1955年)のダメ男・富岡のイメージが強いんですが、ここでも「やっぱりか。。。」とガッカリしましたよん。

女優さん達の衣装が華やかで目の保養&勉強になります。
特に帽子が素敵です。
ファッションに興味のある方なら、より楽しめるのでは。
また、田宮二郎さんが細マッチョな上半身を披露してはりますよ。

女の勲章 [DVD]

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【雁の寺】
1962年/パートカラー/98分
監督:川島雄三
原作:水上勉
脚本:舟橋和郎、川島雄三
撮影:村井博
美術:西岡善信

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じっとりと湿度の高い映画
水上勉の直木賞作品「雁の寺」が原作だけあって、暗く陰湿なんですが、コメディのような要素があったり(笑)
これは、川島監督だからなのかしらん。

雁が羽ばたき飛んでいるようなオープニング、素晴らしいですね。
若尾さんのエロスはさすが! 
慈海(三島雅夫)の生臭坊主っぷりも上手い!
ただ、慈念役の俳優さんの演技はちょっと一本調子に感じられました。

あのラスト(カラーになってからの)はいかがなもんでしょうか。
私にはなんだかしっくりきませんでした。

雁の寺 [DVD]

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【しとやかな獣】
1962年/カラー/96分
監督:川島雄三
原作・脚本:新藤兼人
撮影:宗川信夫
美術:柴田篤二

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舞台劇のような、斬新な演出

主役は若尾さんじゃなく、夫(伊藤雄之助)と妻(山岡久乃)だと私は思います。
特に山岡久乃さんの演技からは、どこか人生を諦めているような妻の怖さのようなものが感じられて、素晴らしい。

会話劇としての面白さと、その面白さを表現できる役者によって支えられた作品。
ただし、実役の俳優さんと、謎のミュージシャン(笑)の登場にはちょっと不満でした。

しとやかな獣 [DVD]

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今週は「心の日月」「氾濫」「東京おにぎり娘」「砂糖菓子が壊れるとき」などを見に行く予定。
「瘋癲老人日記」も谷崎原作で気になるし、「閉店時間」は野添ひとみさんが出演&DVDが発売されていないので、できれば見たいところ。

 

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