シネ・ヌーヴォで開催中の「若尾文子映画祭 青春」(2015年7月11日から9月4日まで)
先週は4本のみ鑑賞。
※ネタバレを含みます。結末に触れていますので、ご注意ください
<製作年代順>
【最高殊勲夫人】
1959年/カラー/95分
監督:増村保造
原作:源氏鶏太
脚本:白坂依志夫
撮影:村井博
美術:下河原友雄
源氏鶏太らしい、どうでもいいような(笑)ストーリーなんですが、若尾さん演じる杏子がキュートで楽しいコメディです。
杏子のちゃっかりキャラが、見てて気持ちいいんですよね。
若尾文子&川口浩の看板コンビ以上に前に出てくるのが、主人公・杏子の姉の桃子です。
この桃子、一般的なサラリーマン家庭に育ったのですが、今は三原一郎と結婚し社長夫人に収まっています。
今の桃子の狙いは、末の妹・杏子と三原家の末っ子三郎を結婚させる事なのです。
桃子は強烈キャラで、自分の意見をガンガン押し通そうとします。
この役の丹阿弥谷津子さん、イギリス人俳優 Cheryl Campbell (シェリル・キャンベル)さんに似ている。
シェリルさんは、私が見ているどのイギリス刑事ドラマに、必ずゲスト出演してる人です。
「バーナビー警部」には2回も(違う役で)出ちゃってるし(笑)
どっしりとした美人&周りに有無を言わせない雰囲気を持ってる役なので、二人がダブッて見えました。
気になったのは、会社の上司が女性社員を「おい」と呼びつけてタバコを持って来させてたシーンの意味。
誇張した表現だとしても(それともこの時代は普通だったのかな?)、なぜ必要だったのかよくわかりませんでした。
オープニングクレジットは、文字の色が保護色化してて全く見えなかったし、ちょっとセンス良くないかも。
「お嬢さん」のオープニングが昭和的レトロな可愛さタップリだっただけに、つい比べてしまいます。
【婚 期】
1961年/カラー/97分
監督:吉村公三郎
脚本:水木洋子
撮影:宮川一夫
「だまれババァ、うるせーぞ」
↑こんな暴言が家庭内で飛び交う映画(笑)
野添ひとみさんだから、可愛いですまされる気もしますが。
今回、映画祭の中で一番面白かったコメディ。
オリジナルの脚本が素晴らしく、セリフのテンポがいい。
このDVD、購入決定です。
若尾さん演じる唐沢波子は、いわゆるハイミス(今は死語なのかな?)
結構な近眼で、キャットアイシェイプの眼鏡をかけたりはずしたりしてます。
実は私、幼少時にこのキャットアイ型の眼鏡をかけさせられて恥ずかしかった想い出があるのです。
なんでもっと普通の眼鏡を、親は選ばなかったんだろうか。。。
とにかくこの眼鏡のせいもあってか、波子は(嫁への)行き遅れ感がすごく出てます(笑)
そして、妹の鳩子(野添ひとみ)は姉に輪をかけて毒舌、義姉や婆やをこき使う現代っ子。
こんな二人の小姑にいじめられるのが、唐沢卓夫(船越英二)の妻、静(京マチ子)なんですが、なかなかどうして、この妻は何を考えてるのかよくわからないタイプです。
この妻のすっとぼけた感じも面白いし、お嬢様がた二人の素行をボヤく婆や(北林谷栄)のセリフが抱腹ものです。
よく考えると、唐沢家の女性の中で金銭面・精神面共に自立してるのは、出戻りの長女冴子(高峰三枝子)だけなんですよね。
これも、時代を反映してるな〜と思います。
【爛】
1962年/モノクロ/88分
監督:増村保造
原作:徳田秋声
脚本:新藤兼人
撮影:小林節雄
美術:下河原友雄
若尾さんは、愛人を持つ元ホステスの増子という役柄
なんか生活が荒んでる感じなのですよね。
スリップ姿でタバコを吸い、ゴロッと寝転んでなんだか暇そう。
こんなだらしない役も、若尾さんが演じると汚くはないのだけれど。
愛人を待っているだけの生活なんて、想像しただけでうんざりです。
増子が自分主体の人生を歩もうとしないので全く共感できないのですが、一人の男の情を死守しようという、その執念はすごいです。
このエネルギーを他の事に回した方が人生豊かになる、とか思うのは私が恋愛体質じゃないからでしょうかね〜。
同じような境遇でありながら「女は二度生まれる」の主人公とは対照的。
「女は〜」の小えんは浮気性だったし、最後には男と切り離したところで自分が生きる道を模索しようとします。
一方、増子はもっと本気で男女問題に取り組んでいます。
「男と女の問題は、ぼんやりしてる方の負け」なんていう感じのセリフがあったけど、真剣勝負ですね。
「家賃5万円は贅沢」とか、「68歳で長生き」なんてセリフに時代を感じます。
私が目をみはったのは、鰻屋で一人前4尾ずつ鰻がならんで出てきたこと。
この時代も鰻は贅沢品だったでしょうが、今より確実に沢山採れてたんでしょうね。
それにしても、いっぺんに4尾も食べるとは。羨ましい。
この映画でも市田ひろみさんが脇役で出演されてました。この映画祭の作品ではよくお見かけします。
【越前竹人形】
1963年/モノクロ/102分
監督:吉村公三郎
原作:水上勉
脚本:笠原良三
撮影:宮川一夫
美術:西岡善信
抑制された欲望、そこにエロティシズムを感じるのかな〜
若尾さんの、いい女っぷりが堪能できます。エロスです
加えて、カメラワークが素晴らしく美しい〜!
相手役の山下洵一郎さん、ちょっと素人っぽい演技ですが逆にそれがこの映画では良かったりします。
それにしても、若尾さんの一挙手一投足が優雅で美しい。
この時代の女優さん、着物を着た時の所作が勉強になりますわ〜。ホホホ
以上、この週の心残りは「清作の妻」(1965年)を見逃したことです。
今週は「しとやかな獣」「女の勲章」「雁の寺」などを見る予定
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