ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

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木と市長と文化会館 〜エリック・ロメールの作品を振り返って〜

木と市長と文化会館/モンフォーコンの農婦 (エリック・ロメール コレクション) [DVD]木と市長と文化会館/モンフォーコンの農婦 (エリック・ロメール コレクション) [DVD]
(2007/06/30)
パスカル・グレゴリーアリエル・ドンバール

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監督・脚本:エリック・ロメール
(1992年 フランス)

【物語】
パリ郊外、ヴァンデ県のコミューンの市長ジュリアン(パスカル・グレゴリー)は、
村の草原にスポーツ文化会館を建てる事を目論んでいる。
一方、その計画に反対するエコロジストの小学校教師マルク(ファブリス・ルキーニ) は、
ジャーナリストのブランディーヌ(クレマンティーヌ・アムルー)にもその考えを主張する。
また、ジュリアンの恋人でもある小説家ベレニス(アリエル・ドンバール)は、
都会こそ自分の生活の場だと思っているらしい。

前回、ロメールについてはさらっとうわべをなでただけのような文章になってしまったので、
好きな作品について個々にも記していこうかなぁ思います。今後続くかどうかは、未定です〜。

今日あらためて観たのは、1992年に16ミリで撮られたこの作品。低予算でつくられ、
パスカル・グレゴリー、ファブリス・ルキーニ共に無報酬の出演だったようです。

ロメールの映画において常に大きな割合を占める“恋愛”というものがここでは影をひそめ、
人々は社会問題(環境・政治・教育問題など)について、語り合います。
というか、好き勝手な事言ってる人が相変わらず多いです。フフッ
「恋愛」の駆け引きがない分、出てくる人はいつも以上に饒舌で会話の洪水です。

社会問題とはいっても、この意見が正しいんだ!なんて示唆するものではありません。
登場人物それぞれの発言とその矛盾、時には考えに固執してしまってる様子等、皮肉がきいてます。
こちら側は客観的に観ているつもりでも、ハッと我にかえる瞬間があったりして面白いですね。

小学校教師マルクの娘ゾエをみていると、大人になってからは素直に単純に物事を見ることが
できなくなってしまってるかもと、自分について考えてしまいます。
このおしゃまなゾエちゃんが市長と会話するシーンは素敵ですね。
気持ちのいい陽光、緑豊かな広い庭とベンチ。その時、その場所の空気感が伝わってくる、
これもロメール作品の最大の特長ではないでしょうか。

素朴・シンプルな方法で撮影してるからこその、臨場感といえるかもしれません。
少しドキュメンタリータッチでつくられてるこの作品は、
ジャーナリスト役のクレマンティーヌ・アムルーが町の人達にインタビューするシーン、
ジュリアンとベレニスが建築事務所を訪問するシーン等が即興だそうです。

エリック・ロメールに興味はあるけど、恋愛映画は苦手!という人にも超おすすめの作品です。