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ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「危険なプロット」 〜少年は残酷な描写をする。続く…〜

映画 か行

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公式サイト:http://www.dangerousplot.com/

※音声が出ますのでご注意ください

監督・脚本:フランソワ・オゾン
原作:フアン・マヨルガ
(2012年 フランス制作 105分)
原題:DANS LA MAISON

※ネタバレ含みます

【ストーリー】
作家となる夢を諦めた高校の国語教師ジェルマン(ファブリス・ルキーニ)は、
凡庸な作文添削にうんざりしながら毎日を送っていた。
新学期を迎えたばかりのある日、生徒クロード(エルンスト・ウンハウアー)が
書いた作文に心をつかまれる。(公式サイトより転記させていただきました)

偶然にも直前に見た「タンゴ・リブレ」と同様、
主人公がある人物と出逢う事で人生の転機を迎えるといった内容でした。
また彼自身が無意識にそれを望んでたとも思える部分が、共通しているかも。

担当する生徒達の作文があまりにもレベルが低く、
妻ジャンヌ(クリスティン・スコット・トーマス)に愚痴っていたジェルマン。
そんな中、唯一彼の興味をひいたのは、一人の生徒クロードの書いた作文です。

そこには、実験的ドキュメンタリーとも捉えられる物語が綴られています。
クロードが、以前から行ってみたかった同級生ラファの家に入り込み、
彼と家族について皮肉を込めた描写していて、文末には「続く」の文字が。
(連続ドラマでも「続く」って文字にキーッ!となります。一気に見たい派なので)

ジェルマンは、クロードの作文の中に優れた表現力を見いだしたのでしょう。
ですがそれ以上に彼の興味をひいたのは、そこに描写されている家庭の中で
今後何かが起こるかもしれないという、ちょっとした期待感だったのかもしれません。
ジャンヌも「クロードはどこか異常だ」と言いつつ、作文の続きを心待ちにしているよう。

古典文学を愛するジェルマンと、現代アートを取り扱う画廊に勤める妻ジャンヌ。
このスノッブな夫婦が、クロードの作文を通して他の家庭を覗き見るような
下世話な楽しみを心待ちにしている様子が、少し意地悪に描かれています。
ジャンヌの画廊には冗談みたいな作品ばかり展示されているのも、皮肉っぽいし。

やがて、クロードの作文の続きが気になって仕方がないジェルマンは一線を
越えてしまいます。ここは、物語の展開として必要だったのかもしれませんが、
ここまで作文に執着する彼の気持ちは、ちょっとピンと来ませんでした。
ジェルマンがたとえ作家になる夢をクロードに投影していたとしても。

自分には作家としての才能がないと自覚しているジェルマンには、どこか
自虐的なところが感じられます。そんな所や早口でまくしたてる様子から
ファブリス・ルキーニがウディ・アレンに重なって見える瞬間がありました。

クロードという少年は、その不敵な微笑みが「少年は残酷な弓を射る」の
ケヴィンを思い出させるんですが、彼のように“邪悪”というのとは違うのです。
「実に独特な中産階級の女の匂いだ」というクロードの文章や、
「彼の家は僕の家の4倍の広さはある」という記述から
クロードが労働者階級の家庭の子で、父親と二人暮らしらしいという事は
わかるのですが、彼の狙いが何なのかは途中までよくわからない。

最後まで見て、彼はラファのような家庭の一員になりたかっただけ
なのかもしれないなと思いました。
公園からラファの家を眺めて言った「ずっとあの家に入りたかった」という言葉と、
ジェルマンと二人、その家の窓から見知らぬ家族に思いをはせる様子を見ていると、
そう思えてきます。クロード役のエルンスト・ウンハウアーは、
なかなか複雑な捉えどころのない役を、さらりと演じていました。

そんなクロードの術中にはまってしまったように見えるジェルマン。
「悪夢だ!」なんて叫んでいましたが、案外彼が望んでいたのは
こんな結末だったのかもしれません。
見る側の捉え方によっては、複雑にもなり得る面白い作品でした。

ラファの母親エステル役のエマニュエル・セニエは、ますます色っぽくて
ちょっとジェシカ・ラング化してきたような気がします。

テアトル梅田 にて鑑賞。