ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「友だちのうちはどこ?」 〜乾いた大地に咲く小さな花〜

友だちのうちはどこ? [DVD]友だちのうちはどこ? [DVD]
(2001/09/21)
ババク・アハマッドプール、アハマッド・アハマッドプール 他

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監督:アッバス・キアロスタミ
(1993年 イラン 84分)
原題:KHANE-YE DOUST KODJAST?

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
授業中のある小学校。モハマッド少年(アハマッド・アハマッドプール)は、
宿題をノートに書かずに叱られていた。
授業が終わり、モハマッドは駆け出すが、転んで怪我をしてしまう。
隣の席の少年アハマッド(ババク・アハマッドプール)はその手当てをしてやるのだが、
その際にモハマッドのノートを間違えて持ち帰ってしまう。
あわてたアハマッドは、モハマッドにノートを返すため、彼の家を目指して外出するが……。
(“午前十時の映画祭”公式サイトより転記させていただきました)

スクリーンでは初鑑賞。

アハマッド少年の必死さが、やっぱり伝染してしまう。
「ノートを届けなければ友達が退学させられてしまう」という、彼の真摯な思いに
「ガンバレ!」と心の中で叫びつつ、大人達にはほんとうにがっかりさせられる。

けど、以前よりはそんな大人たちのコトも面白がりながら見る余裕が私自身に感じられた。
後半のお母さんって、あんなに優しかったっけ?
疲れきって食欲もないアハマッドに、あとで食べなさいとそっと食事を置いたり、
「疲れたら、宿題するよりも寝なさい」みたいな事を言ったり。

昼間は、「宿題しなさい」と言いつつ「タライを取れ」とか「赤ちゃんの様子を見ろ」とか
用事をいいつける様子にかなりイラッとさせられたけど、やっぱり母は優しい。

ここに登場する大人は、子供の声に耳を傾けない。
規則を守る事だけを重んじる高圧的な教師、ひたすら「宿題しろ」と言う母親、
子供は暴力で支配し教育するものだと言う老人、自分の要求だけ通そうとする工務店の職人。
ただ目上だというだけで、子供は大人の言う事を(たとえそれが理不尽な事でも)
聞かなくてはいけない社会。

モハマッドが教師にひどく叱られている間の、アハマッドの表情からは
いたたまれないような彼の気持ちがすごく伝わってくる。
アハマッドの視点で描かれた物語で、見ているこちら側の気持ちは完全にアハマッド寄りになる。
それだけに、ラストシーンの小さな押し花を見た時には彼と一緒に胸をなでおろす気分。

唯一アハマッドに道案内してくれた老人とのシーンは、暗闇の中に窓の明かりが浮かび上がり幻想的だった。
究めてスローなペースで歩きながら「速いだろ」と言う、この老人はなんだか憎めない存在。
「鉄のドアは一生壊れないというが、人生とはそんなに長いものか」なんていうセリフも印象的。
この老人がせっかく道案内してくれたを配慮して、ノートを服の中に隠すアハマッドの行動がいじらしい。

TOHOシネマズなんばにて鑑賞。

こちらの劇場では、先週の「禁じられた遊び」、今週の「友だちのうちはどこ?」
そして来週は「汚れなき悪戯」が上映と、子供達に心寄り添う3週間といった感じです。嬉しい♪
ただ、同じ予告(いかにもハリウッド的作品の)を見せられるのは、ちょとウンザリしますね。