ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「ヴェルサイユの宮廷庭師」、「ベル&セバスチャン」と「ぼくらの家路」

お知らせ

諸事情で時間がないので、しばらく映画館に行けそうもありません。
上映中の映画に関する記事は、少しの間お休みさせていただきます。
その前に、直近に鑑賞した3本の感想をほんのちょこっとだけ。

 

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公式サイト:http://versailles-niwashi.jp/
※音声が出ますのでご注意ください

監督・共同脚本: アラン・リックマン
共同脚本:アリソン・ディーガン、ジェレミー・ブロック
製作:ゲイル・イーガン
撮影:エレン・クラス、ASC
美術:ジェームズ・メリフィールド
衣装:ジョーン・バーギン
ヘア&メイクアップ:イヴァナ・プリモラック
(2015年 イギリス製作 117分)
原題:A LITTLE CHAOS

※ネタバレを含みます

【ストーリー】
1682年、フランスの田園地方。心に傷を負い、ひとりで生きるサビーヌ・ド・バラ(ケイト・ウィンスレット)は、裕福とはほど遠いながら、造園家という天職を得て、樹木や土と格闘する日々を送っていた。
そんな彼女のもとに、時の国王ルイ14世(アラン・リックマン)からの書状が舞い込む。
(公式サイトより転記させていただきました)

「君と歩く道」で男くさい役を演じていた同じ俳優とは思えない程、マティアス・スーナールツが繊細でソフトな雰囲気を醸し出していて、好ましかったです。
ケイト・ウィンスレットもエネルギッシュでいいし、こういうコスチュームプレイって、やっぱりワクワクします。
個人的には、庭園ができる過程をもっと見たかったですけど。
フランスが舞台なのに、英国の俳優が英語で演じているので、それでなくてもリアリティのない物語がよけい嘘っぽいです(笑)
ストーリーは結構ベタな恋愛モノで、それなりに華やか

テアトル梅田にて鑑賞

ヴェルサイユの宮廷庭師 [DVD]

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公式サイト:http://www.belleandsebastian.net/
※音声が出ますのでご注意ください

監督・脚本:ニコラ・ヴァニエ
原作:セシル・オーブリー
脚本:ジュリエット・サレ、ファビアン・スアレ
撮影:エリック・ギシャール
音楽:アルマン・アマール
主題歌:ZAZ
(2013年 フランス製作 99分)
原題:BELLE AND SEBASTIAN

※ネタバレを含みます

【ストーリー】
アルプスの麓の小さな村で暮らす孤児セバスチャン(フェリックス・ボッスエ)は、山で一匹の野犬と出会う。
家畜や人を襲う“野獣”と誤解され村人たちから命を狙われるその犬をベルと名付け、懸命に守るセバスチャン。
そして孤独なもの同士、心を通わせていく。
(公式サイトより転記させていただきました)

オープニングから息をのむような壮大な景観が映し出され、映画館で見る醍醐味有り。

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監督は、作家・探検家でもあるという事で、山を知り尽くしているんでしょうね。
映画としての深みは感じられないけれど、とにかくグレート・ピレニーズと少年が可愛くてたまらん(’笑)
センチメンタルな挿入歌がなかったら、もっと良かったんだけど。。。

シネ・リーブル梅田にて鑑賞

ベル&セバスチャン [DVD]

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公式サイト:http://bokuranoieji.com/
※音声が出ますのでご注意ください

監督・脚本:エドワード・ベルガー
脚本:ネル・ミュラー=ストフェン
製作:ヤン・クルーガー / レネ・ローマート
(2013年 ドイツ製作 103分)
原題:JACK

※ネタバレを含みます

【ストーリー】
10歳のジャック(イヴォ・ピッツカー)は、6歳になる弟のマヌエル(ゲオルグ・アームズ)の世話で毎日大忙し。
優しいけれど、まだ若いシングルマザーの母は、恋人との時間や夜遊びを優先していた。
ところが、ある事件からジャックは施設に預けられることになる。
友達もできず、施設になじめないジャック。
待ち続げた夏休みがようやく来るが、母から迎えが3日後になると電話が入る。
(公式サイトより転記させていただきました)

健気なジャックに胸が締め付けられる!
心地よいけれどなんか物足りなかった先の2作品に比べ、この映画は見ている間&その後も色々考えさせられました

ラスト、ジャックの決断がいや、もう、やるせないのです。

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そして、演じている子供がめちゃくちゃ上手い。
弟マヌエル役の子は演技というよりも自然体という感じで、これまた涙を誘う。

ちょっとダルデンヌ兄弟の映画を思い出す作風なんだけど、あそこまで厳しい環境という感じでもない。
二人の母親を始め、周りの大人もそう悪い人ではないんです。
それでも、しわ寄せは弱い子供にいってしまうのが世の常というか。
はぁ〜、せつない映画だ。

テアトル梅田にて鑑賞

ぼくらの家路 [DVD]

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「キングスマン」 〜“ダブル・オー・セブン”にはないモノ〜

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公式サイト:http://kingsman-movie.jp/
※音声が出ますのでご注意ください

監督:マシュー・ヴォーン
原作:マーク・ミラー
(2014年 イギリス製作 129分)
原題:KINGSMAN:THE SECRET SERVICE

※ネタバレを含みます。結末に触れていますので、ご注意ください 

【ストーリー】
ロンドンのサヴィル・ロウにある高級テイラー「キングスマン」。
しかし、その実態はどの国にも属さない世界最強のスパイ機関だった。
(公式サイトより転記させていただきました)

オープニングのダイアー・ストレイツに、気分がアガル〜♪
思いの外、大ノリの "スパイアクション" でした。

マシュー・ヴォーン監督は「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」や「スナッチ」の製作も手がけてたんですね。
なるほど〜。この洒落感、なんか納得。

スナッチ [Blu-ray]

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主役のタロン・エガートンはウィキによるとウェールズ人らしいけど、小柄でがっしりした顔つきなのでそれっぽい。

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英ドラマ「ルイス」のS7 "The Ramblin' Boy" では、ちょっと甘ったれた兄ちゃん役。

この時は特に印象に残らなかったけど、今作はシュッとスマートな他の男性俳優達と対照的で(笑)いい感じです。

この対照的というのは外見だけでなく、見た目はスマートだけど肝の据わってないオックスブリッジ出身の青年達との、対比を際立たせる為のキャスティングかもしれない〜と思ったりします。

しかし、もう一人の主役コリン・ファースをはじめ、マイケル・ケイン御仁やマーク・ストロングなど、安定のイギリス俳優陣がいてこその映画です。
個人的には、マーク・ストロングの「あせってる」演技に萌える ♪

そして、何よりも笑いですよ。楽しくないとね。
これがあるから、この映画が好きなんですわー。
かなりブラックですけどね。そういうのが好きな人はぜひ!

ブライアン・フェリーの歌声も久しぶりに聴き、最後まで音楽のチョイスも満足いく映画でした。

TOHOシネマズなんば にて鑑賞

KINGSMAN / キングスマン(初回限定版) [DVD]

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「アントマン」 〜MARVELに興味なくても面白い〜

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公式サイト:http://marvel.disney.co.jp/movie/antman.html

監督:ペイトン・リード
脚本:エドガー・ライト/ジョー・コーニッシュ/アダム・マッケイ/ポール・ラッド
原案:エドガー・ライト/ジョー・コーニッシュ
製作:ケヴィン・ファイギ  
(2015年 アメリカ製作 117分)
原題:ANT-MAN

※ネタバレを含みます。結末に触れていますので、ご注意ください

【ストーリー】
やる気も能力もあるのに、なぜか空回りばかりのスコット(ポール・ラッド)は、仕事も家庭も失い絶体絶命…。
彼にオファーされた最後にして唯一の“仕事”は、身長わずか1.5cmになれる驚異の“スーツ”を着用し、想像を絶する特殊能力を持つ“アントマン”となることだった。
(公式サイトより転記させていただきました)

ポール・ラッド主演の映画が日本で上映されるのは初めてでは?!
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画像は「ウォールフラワー」(2012年)より
(P.ラッド演じる先生が、これまた良い〜)

「我が家のおバカで愛しいアニキ(Our Idiot Brother)」(2011年)はDVDスルーみたいだし。

我が家のおバカで愛しいアニキ [DVD]

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そんな、記念すべきP.ラッド主演の日本初劇場公開作品の脚本に携わったのは以下の人達。
撮影前に監督を降板してしまったエドガー・ライトとイングランドのコメディアン、ジョー・コーニッシュ、さらには「俺たち」シリーズの監督アダム・マッケイ、そして主演のポール・ラッド。
ヒジョーに気になりますよね、この顔ぶれ。

結果は、マーベルコミックの世界に無知な私でも充分楽しめました
劇中アベンジャーズとのからみもありましたが(後で調べるとファルコンらしい)、そこはわからなくても特に問題もなく。
ゆるい映画だし、細かい事は気にしない〜のノリで観られます。
  
メキシコ人ルイス(マイケル・ペーニャ)のキャラが、個人的にはすごいツボ(笑)
同じく窃盗団のデイヴ(ティップ・“T.I.”・ハリス)やカート(デヴィッド・ダストマルチャン)も含め、ポンコツそうなこの3人が実は結構頼れるヤツらという設定が良かった。
アントマンはこの愉快な仲間達と、多くのアリ達にささえられているのです!
必然的にアリ達がめちゃくちゃ登場しますので、昆虫が異常に苦手な人にはキツい映画かもしれません。

可愛い娘キャシーと誕生日プレゼントのぶさいくなうさぎのぬいぐるみとのコンビネーションが良いし、ホープ役のエヴァンジェリン・リリー姉さんもパワフルで、またもその美貌にみとれてしまいました。

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最後にホープが着用する新しいスーツが登場し、クレジット後の展開(ここで登場するキャラも私にはチンプンカンプン)からも、続編は作られるという解釈でいいんですよね?
「アントマンは再び帰ってくる」って言ってしまってるし。
今後の作品を観るには、少しだけマーベルのお勉強した方が楽しめるかもしれないなぁ〜と思い始めた次第です。



以前も言いましたが、アメリカのコメディ作品は日本でDVDスルーされる傾向があるので、P.ラッドのような上手いけど脇役の多い俳優は、まだまだ日本での認知度が低いですよね。

日本でもメジャーなコメディアンと言えば、ベン・スティラーかな。

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  ↑ ばかばかしさもここまでくると笑えるという見本みたいな映画

ウィル・フェレルも、結構有名でしょうか。

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P.ラッドやスティーブ・カレルをはじめ、セス・ローゲン、ジャック・ブラック、ヴィンス・ヴォーン、ルーク・ウィルソン、ベン・スティラーなどめちゃくちゃ豪華なメンツが揃う記念的作品ですが、私が好きな「俺たちシリーズ」はこれではありません。

一押しは「俺たちダンクシューター(Semi-Pro)」(監督は ケント・アルターマン)です。

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スティーブ・カレル主演・脚本のこの映画は超有名ですね。
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P.ラッドやセス・ローゲンとのブロマンス的要素も好ましくて、笑えるだけじゃなく、愛おしさも感じる作品。

 

正直、全く笑えない作品に遭遇する時もたまにありますが(笑)、コメディでいい味出してる俳優には、今後も注目していきたいと思います。

TOHOシネマズ梅田 にて鑑賞

 

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マシュー・ボーンの「眠れる森の美女」 〜おとぎ話の意外な主役〜

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公式サイト:http://matthewbournecinema.com/nemurerumorinobijo.html
※音声が出ますのでご注意ください

演出・振付:マシュー・ボーン
音楽:ビョートル・イリイチ・チャイコフスキー
舞台・衣装デザイン:レズ・ブラザーストン
照明:ポール・コンスタブル
指揮:ポール・グルースイス
収録:2013年5月、イギリス、ブリストル ヒッポドローム劇場
(105分)
原題:MATTHEW BOURNE'S SLEEPING BEAUTY

※ネタバレを含みます。結末に触れていますので、ご注意ください

【ストーリー】
魔法使いの呪いで100年の眠りについたオーロラ姫。
彼女が目を覚ました世界は現代だった・・・。
古典バレエとしてだけでなくディズニー映画でも世界的に有名なストーリーを、バレエ界の奇才マシュー・ボーンがアレンジしたゴシックロマンス。
(公式サイトより転記させていただきました)

8月の「白鳥の湖」に続き、ボーン振付作品の舞台が映像で見られるチャンス!
私のように、バレエ&コンテンポラリーダンスに興味はあるけど劇場は敷居が高いと思われている方に、ぜひお勧めします。
テアトル梅田では、2015年9月25日までの上映です。

またまた、マシュー・ボーン独自のストーリー展開と演出に驚き。
全部で4幕の構成ですが、圧倒的に第1幕「オーロラ姫の誕生」が好みです。

子宝に恵まれない王&妃は、邪悪な妖精カラボスに願掛けし、やがてオーロラが誕生します。
ここで操り人形の赤ん坊(オーロラ姫)が登場するのですが、このパペットの生き生きしていてユーモラスで可愛いこと!
今作、私にとっての主役はこのベビーかもしれません。
やんちゃなベビーに翻弄される乳母や使用人達の様子が可笑しくて、コメディとしても楽しい〜

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ベビーの誕生を祝い、妖精達が訪れるシーンは幻想的。
これはもう、単純にドキドキ、ワクワクの世界です。
窓窓越しに見える大きな月、立ち込める霧の中、妖精達のダンスはそれぞれ個性的。
ベルトコンベアーみたいなモノも使われてました。
ベビーが首をかしげ、彼らのダンスを見守る様子も可愛い。

第2幕に入り、成人したオーロラ姫(ハナ・ヴァッサロ)は相変わらずお転婆。
彼女と王の狩猟番レオ(ドミニク・ノース)、若い二人の戯れ合うようなダンスがとても可愛いですね。
ドミニク・ノースは、先日の「白鳥の湖」で王子役だった人。
彼のダンスは、伸びやかで美しく素直な感じなので、この若い恋人というキャラクターにピッタリです。

リラ伯爵はそういうキャラだったのか!という驚きと共に、2幕は終了し、第3幕では小さな羽が生え妖精となったレオが登場します。
悪役カラドック役のアダム・マスケル、男性的フェロモンがムンムンに見えるのは、そのモミアゲのせいなのか?(笑)
彼が第1幕で演じたカラドックの母親カラボスは、予備知識も英語字幕もなければ女性とはわかりませんでした。
「白鳥の湖」のザ・スワン/ザ・ストレンジャーもそうでしたが、悪役のダンス、特に4幕のカラドックのダンスからはラテン系の匂いを感じました。

ラストにもう一度、あのパペットが登場して嬉しかった。
演劇の要素が強いマシュー・ボーン作品は、バレエだけではちょっと。。という方にも楽しめると思います。
ただ、日本語字幕がないせいで、ストーリー展開がちょっとわかりにくいかもしれませんね。

テアトル梅田 にて鑑賞

 

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「ヴィンセントが教えてくれたこと」 〜想定内だけど楽しい〜

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公式サイト:http://www.vincent.jp/
※音声が出ますのでご注意ください

監督・脚本・製作:セオドア・メルフィ
製作:ピーター・チャーニン
プロダクションデザイン:インバル・ワインバーグ
作曲:セオドア・シャピロ
音楽監修:ランドール・ポスター
(2014年 アメリカ製作 102分)
原題:ST. VINCENT

※ネタバレを含みます

【ストーリー】
アルコールとギャンブルに溺れるちょい悪オヤジのヴィンセント(ビル・マーレイ)は、ひょんなことからお隣に引っ越して来た、いじめられっ子オリバー(ジェイデン・リーベラー)の面倒を見ることになる。
(公式サイトより転記させていただきました)

ある程度予想できる展開だけど、音楽&俳優が良いから楽しめる。

最近は味のある脇役が目に付くビル・マーレイが、久しぶりにガッツリ主役。
酒場でジュークボックスをかけ一人踊りまくるシーンが、無理なくすんなりはまるのも、彼だからかも。

「酒とギャンブルで借金まみれのオヤジと、いじめられっ子の少年の友情」と聞くと、ちょっとコソバユイ。
確かに、ラストはとって付けた感があるし、ベタではあるんだけれど。
ビル・マーレイの飄々とした感じと、オリバー役の子の利発そうな雰囲気で、なぜか暑苦しくない

ロシア人移民のストリッパー・ダカ(ナオミ・ワッツ)の、エネルギッシュな感じも見ていて気持ちいい。
報酬はきっちり取るけれど、いやむしろそこはお金をもらうからこそ、きっちり働くダカの姿が偽善的でなくて良いのだ。

ヴィンセントとダカ、マギー(メリッサ・マッカーシー)とオリバー親子の関係が、さらっとベタつかずよい感じ。

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「人は一人では生きていけない」は当たり前だけど、どうせなら周りの人の事をちょっとだけ気にかけて暮らして行きたいと思ったりした。

オリバーの担任役クリス・オダウドが、個性的でなんか笑える〜
ヴィンセントの飼い猫、フィリックスのふてぶてしい面構えも素敵

Ost: St Vincent

Ost: St Vincent

 

要所要所で使われてる音楽が良かった
Wilco のジェフ・トゥイーディと、息子スペンサーの親子バンドTweedyのこの曲は、ちょっとグラムロックっぽくて好き。

Jeff Tweedy - Everyone Hides


そして、映画で聴くボブ・ディランは、なぜかいつも沁みる。

TOHOシネマズ梅田 にて鑑賞

 

ヴィンセントが教えてくれたこと [DVD]

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「夏をゆく人々」 〜土の匂いのする映画〜

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公式サイト:http://www.natsu-yuku.jp/
※音声が出ますのでご注意ください

監督・脚本:アリーチェ・ロルヴァケル
撮影:エレーヌ・ルヴァン
編集:マルコ・スポレンティーニ
録音:クリストフ・ジョヴァンノーニ
美術:エミータ・フリガート
衣装:ロレダーナ・ブシェミ
製作:カルロ・クレスト=ディナ、カール・バウムガルトナー、ティジアナ・スダニ、マイケル・ウェバー
(2014年 イタリア/スイス/ドイツ製作 111分)
原題:LE MERAVIGLIE

※ネタバレを含みます。

【ストーリー】
光と緑あふれるイタリア中部・トスカーナ州周辺の人里離れた土地で、昔ながらの方法で養蜂を営む一家の物語。
ジェルソミーナ(マリア・アレクサンドラ・ルング)は4人姉妹の長女で、自然との共存をめざす父ヴォルフガング(サム・ルーウィック)の独自の教育と寵愛を受け、今や父よりもミツバチに精通している。
家族は自然のリズムのなかで生活を営んできたが、夏、村にテレビ番組「ふしぎの国」のクルーが訪れ、一家がひとりの少年を預かった頃から、日々にさざなみが立ち始める。
(公式サイトより転記させていただきました)

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薄っぺらくない、力強さのある作品

自然と共存し暮らす人々が描かれるが、何か寓話的な要素もある不思議な映画。
見ていると、『父 パードレ・パドローネ』や『サン★ロレンツォの夜』といった、タヴィアーニ兄弟の作品を思い出す。

暗闇の中、狩人達の車のライトだけが光る。
「あんな所に家があるなんて」
そう言われるような所にこの一家は住んでいる。

村社会では未だに沢山いそうな、超封建的な父親・ヴォルフガング。
「お金より大切なものがある」などもっともらしい事をいうが、全く頼りなく、計画性がない(笑)
父が言うように、この家の家長は長女・ジェルソミーナだ。
蜜蜂については父以上に熟知しているし、家族がかろうじてその姿を崩さず成り立っているのは彼女の存在があるからこそ。

そんな父親と、父との離婚を考える母親と、言う事を聞かない妹達の先頭に立って一家を支えていくという過酷な環境なのだが。
ジェルソミーナは彼女なりに楽しんでいて、その生命色のようなものに触れると、さほどしんどい状況とも思えなくなってくるから不思議。
妹に納屋で流行歌を歌わせたり、男の子達の存在にはしゃいだり、彼女の少女らしい一面が垣間見えるシーンなども、ちょっとくすぐったくてイイ!

小さい時から父親に可愛がられてきたジェルソミーナも、娘に依存するような父の一方的な愛情に気がついてしまっている。
少女なのに大人にならざるを得ない、ジェルソミーナの繊細な心の揺れを表現したマリア・アレクサンドラ・ルングが素晴らしい。

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ぽっちゃりとした妹・マリネッラや、小さくてわんぱくな二人の妹達がとても生き生きとしていて、明るい子供の存在は家庭を照らす光なのだなぁと思わずにはいられない。
母アンジェリカは「ボローニャの夕暮れ」(2008年)や「やがて来たる者へ」(2009年)のアルバ・ロルヴァケルが演じている。
なんと、監督は彼女の実の妹らしい。

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素朴に暮らす人々の中に、TV番組の司会者ミリー(モニカ・ベルッチ)が登場すると、急にその世界が俗っぽくなるのが印象的。
ドイツ人少年マルティンの、天使のような口笛がまた聴きたい。

テアトル梅田 にて鑑賞。

 

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「あの日のように抱きしめて」〜人の心の弱さをあらわにする戦争〜

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公式サイト:http://www.anohi-movie.com/
※音声が出ますのでご注意ください

監督・脚本:クリスティアン・ペッツォルト
共同脚本:ハルン・ファロッキ
原作:ユベール・モンティエ
撮影監督:ハンス・フロム
編集:ベッティナ・ブーラー
プロダクションデザイン:アネット・グター
衣装デザイン:シュテファン・ヴィル
音楽:ヤチェック・ガチュコフスキ
製作総指揮:ピオットル・シュトエレキ
プロデューサー:フロリアン・ケルナール・フォン・グストフ / ミハイル・ヴィーバー
(2014年 ドイツ製作 98分)
原題:PHOENIX

※ネタバレを含みます。結末に触れていますので、ご注意ください

【ストーリー】
1945年6月ベルリン。元歌手のネリー(ニーナ・ホス)は顔に大怪我を負いながらも強制収容所から奇跡的に生還し、顔の再建手術を受ける。
彼女の願いはピアニストだった夫ジョニー(ロナルト・ツェアフェルト)を見つけ出し、幸せだった戦前の日々を取り戻すこと。
顔の傷が癒える頃、ついにネリーはジョニーと再会するが、容貌の変わったネリーに夫は気づかない。
 (公式サイトより転記させていただきました)

やるせない 映画

暗闇の中、車を走らせるレネ(ニーナ・クンツェンドルフ)
流れる曲は「Speak low(スピーク・ロウ)」
この、亡命したユダヤ人作曲家クルト・ヴァイル(Kurt Weill)の曲は、映画の中で重要な役割を果たす。
助手席には、顔中を包帯で巻いたネリーが居る。
印象的なオープニング


ネリーの世話をするユダヤ人の友人レネは、彼女の夫ジョニーを憎んでいる。
しかし、レネはその理由を小出しにしかネリーに伝えない。
彼女を傷つけたくなかったのか、生きる気力を失ってほしくなかったのか。

そんなレネの気持ちをよそに、ネリーは夫を捜し求める。
というより、幸せだった過去の自分を捜しているのかもしれない。
自分の存在を夫に気付いて欲しいと、必死で彼に訴えかける表情がせつない。

 

収収容所での経験があまりにも壮絶だったせいなのか、常にビクビクしている様子のネリー。
おそらく以前は、優雅で美しく堂々とした女性だったのだろう。
ジョニーが妻に気付かないのは、彼女の放つ雰囲気が以前とは大きく異なっていたせいではないのか。
彼自身の、過去の行為を封印したいという無意識の意識ようなものも関係しているのかもしれないが。

自転車を漕ぐジョニーにつかまる、ネリーの様子が微笑ましい。
この構図「東ベルリンから来た女」でもあった気がする。
ジョニー役の俳優さんがちょっとぽっちゃりで、モフッとした感じが可愛い。

終盤、友人達を前に、わざとらしい愛の言葉をささやいたジョニーの手を離し、ネリーのとった行動が潔かった。
この時、彼女は決心をしたんだと思う。
ある意味、ジョニーの方が何かを引きずりながら生きていくのかもしれない。
このラストシーンは見事。

劇中ではクルト・ヴァイル自身が歌う "Speak low" も流れるが、私はこのバージョンが好き。


Sarah Vaughan - Speak Low (Live @ The London House) Mercury Records 1958



ITVのドラマ「フォイル刑事(Foyle’s War)」でも、戦争中以上に戦後、人々の心の傷とその波紋を描いた話が切なかったのを思い出します。
戦争というものは、兵士はもちろんその家族の心に大きく暗い影を落とすのでしょう。
今、こうしている間にも、そんな経験をする人が増え続けているのだから、やるせないですね。

テアトル梅田 にて鑑賞

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