ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

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「夏をゆく人々」 〜土の匂いのする映画〜

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公式サイト:http://www.natsu-yuku.jp/
※音声が出ますのでご注意ください

監督・脚本:アリーチェ・ロルヴァケル
撮影:エレーヌ・ルヴァン
編集:マルコ・スポレンティーニ
録音:クリストフ・ジョヴァンノーニ
美術:エミータ・フリガート
衣装:ロレダーナ・ブシェミ
製作:カルロ・クレスト=ディナ、カール・バウムガルトナー、ティジアナ・スダニ、マイケル・ウェバー
(2014年 イタリア/スイス/ドイツ製作 111分)
原題:LE MERAVIGLIE

※ネタバレを含みます。

【ストーリー】
光と緑あふれるイタリア中部・トスカーナ州周辺の人里離れた土地で、昔ながらの方法で養蜂を営む一家の物語。
ジェルソミーナ(マリア・アレクサンドラ・ルング)は4人姉妹の長女で、自然との共存をめざす父ヴォルフガング(サム・ルーウィック)の独自の教育と寵愛を受け、今や父よりもミツバチに精通している。
家族は自然のリズムのなかで生活を営んできたが、夏、村にテレビ番組「ふしぎの国」のクルーが訪れ、一家がひとりの少年を預かった頃から、日々にさざなみが立ち始める。
(公式サイトより転記させていただきました)

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薄っぺらくない、力強さのある作品

自然と共存し暮らす人々が描かれるが、何か寓話的な要素もある不思議な映画。
見ていると、『父 パードレ・パドローネ』や『サン★ロレンツォの夜』といった、タヴィアーニ兄弟の作品を思い出す。

暗闇の中、狩人達の車のライトだけが光る。
「あんな所に家があるなんて」
そう言われるような所にこの一家は住んでいる。

村社会では未だに沢山いそうな、超封建的な父親・ヴォルフガング。
「お金より大切なものがある」などもっともらしい事をいうが、全く頼りなく、計画性がない(笑)
父が言うように、この家の家長は長女・ジェルソミーナだ。
蜜蜂については父以上に熟知しているし、家族がかろうじてその姿を崩さず成り立っているのは彼女の存在があるからこそ。

そんな父親と、父との離婚を考える母親と、言う事を聞かない妹達の先頭に立って一家を支えていくという過酷な環境なのだが。
ジェルソミーナは彼女なりに楽しんでいて、その生命色のようなものに触れると、さほどしんどい状況とも思えなくなってくるから不思議。
妹に納屋で流行歌を歌わせたり、男の子達の存在にはしゃいだり、彼女の少女らしい一面が垣間見えるシーンなども、ちょっとくすぐったくてイイ!

小さい時から父親に可愛がられてきたジェルソミーナも、娘に依存するような父の一方的な愛情に気がついてしまっている。
少女なのに大人にならざるを得ない、ジェルソミーナの繊細な心の揺れを表現したマリア・アレクサンドラ・ルングが素晴らしい。

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ぽっちゃりとした妹・マリネッラや、小さくてわんぱくな二人の妹達がとても生き生きとしていて、明るい子供の存在は家庭を照らす光なのだなぁと思わずにはいられない。
母アンジェリカは「ボローニャの夕暮れ」(2008年)や「やがて来たる者へ」(2009年)のアルバ・ロルヴァケルが演じている。
なんと、監督は彼女の実の妹らしい。

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素朴に暮らす人々の中に、TV番組の司会者ミリー(モニカ・ベルッチ)が登場すると、急にその世界が俗っぽくなるのが印象的。
ドイツ人少年マルティンの、天使のような口笛がまた聴きたい。

テアトル梅田 にて鑑賞。

 

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