ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

12月第2週・第3週から公開(大阪市内)の映画で気になるのは

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「台湾、街かどの人形劇」

台湾の人間国宝で布袋戯の人形遣い・陳錫煌(チェン・シーホァン)さんを追ったドキュメンタリー。
チェンさんの手の動きも素晴らしいけど、その顔、表情がとてもいいんだなー。台湾の下町っぽい通りとそこに住む老爺達を見てるだけで頬がゆるむ。
同じく人間国宝であった父・李天との確執などにも触れられていたが、そこはなんとなくモヤモヤして消化できなかった。

芸能文化の伝統を継承することの難しさと、衰退していくことの寂しさを感じる映画。
ふと「文楽」を応援したい、久しぶりに国立文楽劇場にも足を運びたいと思った。


12月第2週・第3週から大阪市内で公開される映画、その中から気になる作品をピックアップします。

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「読まれなかった小説」〜多面的な存在〜

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公式サイト:http://www.bitters.co.jp/shousetsu/

監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
脚本:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン、アキン・アクス、エブル・ジェイラン
製作:ゼイネプ・オズバトゥール・アタカン
2018年/189分//トルコ・フランス・ドイツ・ブルガリア・マケドニア・ボスニア・スウェーデン・カタール合作
原題:Ahlat Agaci(野生の梨の木)

※ネタバレを含みます

 

【物 語】
シナンの夢は作家になること。
大学を卒業し、重い足取りでトロイ遺跡近くの故郷の町チャンへ戻ってきた。
シナンの父イドリスは引退間際の教師。競馬好きなイドリスとは相容れない。
(公式サイトより転記させていただきました)


人間の多面性を見せてくれる、そんな長編小説を読んだような感覚が残る。
脚本家の一人でもあるアキン・アクス(イスラム教の指導者を演じてた人)の自伝的な物語がベースになっているらしい。

そこに視覚的な効果が加わり、見応えあるいい時間が過ごせた。
「雪の轍」でも感じたけど、ちょっと意地悪だなと思うほど人間の愚かな部分を曝け出してくる、その感じがクセになる。
やっぱり私は人間に興味があるんだなぁと自覚する。
その描き方が平たくない事に、一種の安堵感も感じたり。

 

井の中の蛙的存在、無知な若者が主人公、だけど議論しようとする姿勢がいい。
宗教に関してはっきりと意見を言うシーンは、監督が意図したものだとインタビューで見かけたけれど。

パッとしない見た目の主人公とは対照的に父親はハンサムだが、あの情けない笑い方やお金のせびり方には嫌悪感!
このあたりがうまいわ〜。
ギャンブルで家も信用も失っている父親に、失望感しかない主人公だったけれど、、、、

ラストの展開、父と息子の会話は素敵だった。
ここでの会話は、母親が語る若き日の父親像とも合致して胸がすく。

 

ただ、長い!(笑)
やっぱり会話が圧倒的に多いから?!
宗教に関する議論のシーン、それなり面白いけど、もう少し短くてもいいかなと思う。


シネ・リーブル梅田 にて鑑賞

 

 

「わたしは光をにぎっている」〜しゃんとする〜

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公式サイト:https://phantom-film.com/watashi_hikari/

監督:中川龍太郎
脚本: 中川龍太郎・末木はるみ・佐近圭太郎
脚本協力:石井将・角屋拓海
96分/2019年/日本


※ネタバレを含みます

【物 語】
亡き両親に代わって育ててくれた祖母・久仁子の入院を機に東京へ出てくることになった澪。
都会の空気に馴染めないでいたが「目の前のできることから、ひとつずつ」という久仁子の言葉をきっかけに、居候先の銭湯を手伝うようになる。
(公式サイトより転記させていただきました)


「形あるものはいつかなくなるが、言葉は残り続ける」


ドラマチックな展開は訪れないが、この主人公は確実に成長している。
しみじみと、そしてジワジワと好きな作品になった。


二十歳なのに子供のような主人公、最初は澪のグズグズ加減に少しイラッとする。

道を尋ねた相手に、スマホを手渡し黙ってついて行くし。
人気のない道に入りこんだ時、襲われないかとつい考えてしまう私は、知らない人を信用しない都会人です、ハイ。

しかし、やる時はヤル子なんですね(笑)
「犯罪ですよ!」と。
「そんな大きな声出せるのねー」←このおばちゃんに激しく同意。
そして変に妥協して大人にならない、フグ屋での澪の態度に共感した。


何気ないのに素晴らしく印象に残ったのは、澪が銭湯のお湯をすくい取るシーン。

澪が自分の居場所を見つけた瞬間のようで。
まるで光をすくい取ったようで。

山村暮鳥の詩「自分は光をにぎつてゐる」ともリンクして、胸が熱くなった。


薪でお湯をわかす銭湯、いいなー

下町にある古い銭湯、小さな映画館、庶民的な飲食店や市場など。
市井の人々の思いとは別に、消失していく場所やモノに思いを馳せる瞬間も愛おしい。

ちなみに、横浜のシネマジャック&ベティさんがロケ地で使われているよう。
大阪在住でも耳にした事がある劇場なので、一度は訪れてみたいなぁ。


長野県野尻湖、ロケーションが最高ですね。
エンドロールを飾るカネコアヤノさんの曲もいい

同監督の「四月の長い夢」も見たくなった。

 

シネ・リーブル梅田 にて鑑賞

「i ー新聞記者ドキュメントー」〜知る義務〜

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公式サイト:https://i-shimbunkisha.jp/

監督・森達也
企画・製作:河村光庸
音楽:MARTIN
113分/2019年/日本


※ネタバレを含みます

【イントロダクション】
権力とメディアの“たった今”を描いた衝撃の問題作『新聞記者』と同じプロデューサーが、私たちが生きる“今”と“メディアの正体”に警鐘を鳴らす、新感覚ドキュメンタリー!
(公式サイトより転記させていただきました)


ドキュメンタリーといいつつ、監督の主観がかなり入ったエンターテイメント作品という印象
テーマは重いけど


記者クラブ制度なんて、ほんと要らない。

以前から疑問に思ってたこと
内閣官房長官の記者会見は、誰のためのものなのか?
国民の知る権利にこたえるためのものではないのか?

形骸化されていく記者会見の中で、東京新聞社会部記者の望月衣塑子氏さんの存在には注目していた。

が、やはり疑問は疑問のまま残った。


外国人記者達が望月さんを訪ねてくるシーンには、うなづけた。

外国人記者「日本のジャーナリズムは不誠実な方向へ向かっている
監督「望月さんは当たり前の仕事をしているだけ、なのに何故注目されるのか。
僕も何故こうして彼女を撮っているのか。。。」

確かに、この映画が成立するという事自体、この国の危うさを象徴しているなぁ。


しかし、記者会見における望月さんの質問内容(自分に対する質問妨害に関する事)も、ちょっと違うなーという気もする。

個人的には、記者クラブ主催の定例記者会見は止めて、ちゃんとした情報公開の場を設けるべきだと思う。

少なくても、馴れ合いの関係になっているとしか思えない特定の記者だけでなく、フリーの記者でも取材できるオープンな場が必要だと、普通の感覚では感じるのですが。
これって、少数意見なんだろうか?


それにしても、望月さんには頑張ってほしい。
あのパワー、彼女の食事シーンからその生命力が感じられるようで元気が出た。
恨み言を言うでもなく、諦めず事実を追求しようとするところ、
忙しくてもお洒落には気を遣っているところが素敵。


映画で伊藤詩織さんや前川喜平さんの姿を見られたのも、思いがけず嬉しかった。


今の政権下で何が行われているか、民主主義社会の一員なら様々な角度から情報を精査し「知る義務」がある。
そして、情報に流されず自分の頭で考える必要がある。
ついつい流されてしまう自分を反省し、そんな事を考えさせられる毎日です。


第七藝術劇場 にて鑑賞

11月第3週・第4週から公開(大阪市内)の映画で気になるのは

たっぷりとした花弁の気品ある姿とダマスクの芳醇な香り
シャルトルーズ・ドゥ・パルム(10月30日/中之島バラ園)

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この秋は、たくさんの素晴らしい薔薇と出会えました。
薔薇の季節が終わると、ちょっと切ない気分です。


さて、今週末と来週末より大阪市内で上映される映画の中から、気になる作品をピックアップします。

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「タレンタイム」〜忘れがたい映画〜

公式サイト:http://moviola.jp/talentime/

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監督・脚本:ヤスミン・アフマド
撮影:キョン・ロウ
音楽:ピート・テオ
115分/2009年/マレーシア
原題:Talentime

※ネタバレを含みます

【イントロダクション】
2009年7月25日、51歳の若さで亡くなったマレーシアの女性監督ヤスミン・アフマド。
そんなヤスミンの最高傑作で、長編映画としての遺作になったのが今作です。


忘れがたい映画に出会った。

 

厳しい現実を捉えながらも、ユーモアと優しさに溢れている。
大きく包みこむような監督の眼差しが温かで心地よい。

「偏見だらけの世界は 僕の永遠の敵」

宗教や民族の違いを超え、たとえ理解できなくても理解したいと思い合える気持は、今の社会に一番必要なモノかもしれない。

 

ピート・テオの楽曲も、この映画の大きな魅力の一つ。

映画のラスト近く、一番気持ちが盛り上がった時にかかった曲、“I go”


I go (with lyrics) by aizat

 

少年達の抱擁に心震え、涙が溢れた。

青春群像劇とも言えるけど、キラキラした初恋より、ハフィズと周りの友人や母のエピソードにグッときた。

時々はさまれる映像(赤ちゃん!)や、音楽の使い方など独自の作家性を感じさせる。

先日「細い目」で初めてアフマド作品を体験し「あっ、この監督好きだ」と思った気持ちが、より大きなものとなった。

この映画(監督)に関しては、すごく大切に思っているファンがきっとたくさんいるんだろうなーと感じる。


映画鑑賞後、山本博之さん(京都大学 東南アジア地域研究研究所 准教授)による特別講義「ヤスミン・アフマドとマレーシア映画の世界」、素晴らしい時間を過ごすことができた。

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講義で見せていただいた、ヤスミンが撮った映像「恋するタン・ホンミン」と「葬儀(愛おしい欠点)」、これがまたどちらも素敵で胸が熱くなる。

 

山本博之さんの著書

マレーシア映画の母 ヤスミン・アフマドの世界――人とその作品、継承者たち (シリーズ 混成アジア映画の海 1)

マレーシア映画の母 ヤスミン・アフマドの世界――人とその作品、継承者たち (シリーズ 混成アジア映画の海 1)

  • 作者: 山本博之,秋庭孝之,及川茜,金子奈央,篠崎香織,宋鎵琳,西芳実,野澤喜美子,深尾淳一,増田真結子,光成歩
  • 出版社/メーカー: 英明企画編集
  • 発売日: 2019/07/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

売上はヤスミン・アフマド基金的なもの(正確な名称は失念しました)に寄付されるようです。


というわけで、昨日・今日ファンになった私のような者がこの映画を語るのはなんかおこがましい気がしないでもないのです。

が、無条件(エンターテイメント的ド派手な映画が好きな人は除きますが)でおすすめできる映画に久しぶりに出会ったので、ご紹介しなければ!という気持ちが勝りました。

あー、また観に行きたいなっ


シアター・セブン にて鑑賞

11月第1週・第2週から公開(大阪市内)の映画で気になるのは

中之島バラ園

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万博記念公園と同様、こちらもウェーヴした花びらやまん丸な形など、最近人気の進化した薔薇も多くなってきた気がします。
今回一番強く香りを感じたのは、日本の薔薇「みさき」

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シャロー&カップ咲きで、花弁がタップリでクラシックな雰囲気、魅惑的な甘い香りにうっとり

 

さて、今週末と来週末より大阪市内で上映される映画の中から、気になる作品をピックアップします。

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10月第3週・第4週から公開(大阪市内)の映画で気になるのは

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「ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん」
主人公がチャーミング、彼女の冒険を応援する気持ちで見てた
シンプルな絵だけどセンスが良くてずっと見てられる感じ
がちゃがちゃしてないのがいいナ
日本のアニメみたいに細かい所まで描き込んでるのも時にはいいけど、
今作はスッキリとした画面から伝わる迫力に潔い美しさを感じた
ロシアが舞台なのにフランス語なのは、残念だけど仕方ないかな。

今週末と来週末より大阪市内で上映される映画の中から、気になる作品をピックアップします。

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10月第1週・第2週から公開(大阪市内)の映画で気になるのは

戦場記者メリー・コルビンの半生をロザムンド・パイク主演で。

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「ホテル・ムンバイ」の後にコレは連続できつかった。
現実は映画以上にどこまでも厳しい、その事ばかり考えてしまう。

「おやすみなさいを言いたくて」(2013年)のように、家族(子供)からの視点が少なく、淡々とした乾いたタッチで描かれているのは好き。
考えさせられるが、映画としては入り込めなかった


今週末と来週末より大阪市内で上映される映画の中から、気になる作品をピックアップします。

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