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若尾文子映画祭 青春ーその4

シネ・ヌーヴォで開催中の「若尾文子映画祭 青春」(2015年7月11日から9月4日まで)

今週は4本鑑賞。
※ネタバレを含みます。結末に触れていますので、ご注意ください

【心の日月】
1954年/モノクロ/91分
監督:木村_恵吾
原作:菊池寛
脚本:木村_恵吾/田辺朝二
撮影:姫田眞佐久

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私なら、間違いなく中田社長を選びます!

戦前に入江たか子さん主演で映画化された、菊池寛原作の再映画化です。
1953年に公開された松竹映画「君の名は」の大ヒット以降、こういう「すれ違い」をテーマにしたメロドラマは量産されたらしいので、その影響もあるのかもしれません。
ちなみに、映画版「君の名は」岸恵子・佐田啓二(←中井貴一のお父さん)主演。

田舎から出て来た麗子(若尾文子)は仕方がないとしても、そこに下宿している磯村(菅原謙二)が駅の出口を確認しないのにイラッとします(笑)
ま、磯村がこれほどボンヤリした人間だから、この物語が成り立つんですが。

デパートのハンカチ売場で働く麗子を尋ねる中田(船越英二)ですが、来る度、あんなに何ダースもハンカチを買って大丈夫でしょうか?(笑)
経済的には余裕でしょうが、お使い物にするにしても限度があるでしょうし。

この映画、磯村と麗子を引き合わせる中田がカッコよすぎます!
逆に、あんなスカタンな磯村にすぐ幻滅しそうな麗子が心配です(笑)

飯田橋駅の道が鋪装されてなくて土だったり、公衆電話ボックスが木造だったり、昭和30年代の日本が垣間見れます。

【氾濫】
1959年/カラー/97分
監督:増村保造
原作:伊藤整
脚本:白坂依志夫
撮影:村井博
美術:西岡善信

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増村監督、それはアカン!

この映画、若尾さんは脇役です。
なのに、クレジットもトップ、ポスターにもお顔がデカデカと。
若尾さん人気にあやかろうという、当時の会社の意図がミエミエです(笑)

主役は佐分利信さん演じる、化学技術者・真田佐平
佐分利さんといえば、多くを語らずぶっきらぼうだけど頼もしい、
「うーん」とも「うん」とも言えない返事をする、そんなイメージ。
小津監督「お茶漬の味」(1952年)では、妻に「鈍感さん」と呼ばれてましたっけ。

真田佐平以外の登場人物達はみな、物質的または性的欲望を追い求めます。

真田が重役になり、生活が派手になった妻・文子(沢村貞子)と娘・たか子(若尾文子)
そこに群がるお花の師匠(伊藤雄之助)とピアノの教師(船越英二)
自らの出世という野心の為、女性を利用する種村(川崎敬三)
現金と引き換えに、種村に見切りをつける京子(叶順子)
援助が目的で、真田近づく幸子(左幸子)
考えてみれば、金銭&出世目的で真田に近づく人物ばかりが登場します。

中でも、久我教授のネチネチした態度にイライラします。
中村伸郎さん、さすがですね。
潮万太郎さん演じる社長も下衆の極みといった感じで、あの笑い方に「おまえは悪代官か!」とツッコミ入れたくなるし(笑)

一番憎たらしいはずの種村にさほど怒りを覚えないのは、川崎敬三さんの演技が軽過ぎるからかな?
野心家のギラギラした感じが、全く伝わってこないのです。
例えば田宮二郎さんだと、その辺がもっと出て良かったんじゃないかなぁ。

たか子は鏡を見ながら「私ってなかなか魅力のある娘でしょ」なんて浮かれポンチな事を言っています。
なので後々種村に捨てられても、全く同情する気持ちが起こりません。
どのみち、彼女に捨てられた悲壮感はありませんでしたけどね(笑)

しかし、たか子が種村と男女の関係になるあのシーンは許せませんよ。
2回ビンタされた上に首をしめられて、いいなりになる。。。
ちょっとしたマゾヒストでも、そんな事されて醒めない女性なんていません。
いるとしたら、よっぼどの変態です。
増村監督、このシーンでガクッと品位を落としましたね。

【砂糖菓子が壊れるとき】
1967年/カラー/96分
監督:今井正
原作:曾野綾子
脚本:橋田壽賀子
撮影:中川芳久
美術:下河原友雄

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これは正直、面白くない。

橋田壽賀子さんの脚本が、好みから大きく外れてしまう原因だと思います。
テレ朝の2時間ドラマかと思うような、大げさなBGM
歯が浮くようなセリフ
と、生理的に受け付けない部分が目についてしまった。

て言うか、若尾さんの良い部分が全く引き出されてない!
逆に、原知佐子さんと山岡久乃さんが光っていました。
「M.モンローをモデルとした曾野綾子の同名小説を映画化」
そのせいなのか、衣装がやけにケバケバしくて(笑)
頭があまり良くない女性というのを、強調したかったのかなぁ。

マリリン=京子はもちろん、彼女と結婚する男性達の描き方もステレオタイプ化されているで、面白くないのですよね、きっと。
田村高廣さんが好きなのに、この映画ではパッとしなかったし。

今回の映画祭、どの作品もそれなりに
面白かったのですが、この映画だけはいただけなかったですね。
若尾さんは相変わらず、お美しいのですが。
あっ、津川雅彦さんが格好良かったです。

【閉店時間】
1962年/カラー/100分
監督:井上梅次
原作:有吉佐和子
脚本:白坂依志夫
撮影:中川芳久

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いいな〜、この昭和感!
気楽に楽しめる、恋愛コメディ

マルタカデパートに勤める女性3人
呉服売場の紀美子(若尾文子)
食料品売場の節子(野添ひとみ)
エレベーター係のサユリ(江波杏子)
三者三様の恋愛模様が描かれます。

この映画祭で見た野添ひとみさん、どの役も可愛い!

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家城巳代治監督「姉妹 」(1955年)のような可憐な少女役もいいけど、こういうおっちょこちょいなキャラクターでは、よりキュートさが強調される気がします。

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若尾文子さんは、10代の頃からあまりキャピキャピしてなくて落ち着いたイメージです。
明るいんだけど腰のすわった感じというか。
そのせいか、紀美子は節子と同年代にしてはかなり大人な感じです。髪形のせいもあるかな。(実際の若尾さんは、野添さんより4つ年上)
紀美子と節子、言いたい事を言い合っていいコンビです。
紀美子が反目する新入社員役が川口浩さんなので、この後の展開はすぐにわかってしまいますね(笑)

川崎敬三さんは、またも女に手が早い不誠実な役です。
「氾濫」とは違いコメディなので、この軽薄さは逆に良かったかも。

そして、江波杏子さんの水着姿が眩しい!  
彼女のファッション&素晴らしいプロポーションに見とれます。

オープニングや劇中で、マネキンを上手く使ってました。


さて、「若尾文子映画祭」は9月4日まで継続中ですが、私は金曜日に見たこの映画が最後になりそうです。
時間があれば「東京おにぎり娘」「美貌に罪あり」に行くかもですが。

今回の映画祭、鑑賞した中で特に好きなのは
「婚期」「お嬢さん」「閉店時間」
あら、全部に野添ひとみさんが出演されてますね。
そしてどれも、たわいないコメディ(笑)

若尾さんの美しさを堪能できる&良い作品という意味では
「安珍と清姫」「女は二度生まれる」「越前竹人形」が特に良かったな〜。

「清作の妻」「永すぎた春」「初春狸御殿」「新源氏物語」その他を見逃した事が残念ですが、次回に期待したいと思います。

こういう女優さんをテーマにした映画祭は、日本映画に馴染みがない人にとってもいいきっかけになると思います。
東京で上映されてる「芦川いづみさん特集」とか、関西でもどこかでかからないかな〜?

 

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