ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「人生はビギナーズ」 〜この爺さまの輝きを見よ!〜

BEGINNERS

監督・脚本:マイク・ミルズ
プロデューサー:レスリー・アーダング、ディーン・ヴェネック、ミランダ・ドゥ・ペンシエ、ジェイ・ヴァン・ホイ、ラース・ヌードセン
撮影監督:キャスパー・タクセン
編集:オリヴィエ・ブッゲ・クエット
衣装デザイン:ジェニファー・ジョンソン
音楽:ロジャー・ネイル
チーフ・アニマル・トレーナー:マティルディ・ドゥ・キャグニー
(2010年 アメリカ 105分)
原題:BEGINNERS

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
ある日突然、父・ハル(クリストファー・プラマー)からのカミングアウト。
「私はゲイだ。これからは本当の意味で人生を楽しみたいんだ」
それは44年連れ添った母がこの世を去ってから、癌を宣告された
父・ハルからの突然の告白。元々は厳格で古いタイプの人間だった父が、
そのカミングアウトをきっかけに若々しいファッションに身を包み、
パーティやエクササイズに精を出し、若い恋人まで作って、新たな人生を謳歌した。
一方、息子・オリヴァー(ユアン・マクレガー)は38歳独身のアートディレクター。友達は仕事と犬。
元々の臆病な性格故か、父のカミングアウトにも戸惑いを隠せない。
(公式サイトより転記させていただきました)

ミルズ監督と父親との関係によって生み出されたオリジナル脚本。
75歳の父親から“実はゲイだ”と言われたら、そりゃビックリしますよね。
それなら、長年連れ添った妻(監督にとっては母)は何だったんだ!とも思うだろうし。

その母は、映画の中でもちょっと風変わりで印象的な人物でした。
“わが道を行く”タイプの人というか。だからこそ、夫がゲイだと知りつつ求婚したのかも。
こんな風に究めて私的なストーリーが元になっていても、そこには普遍的なテーマが含まれています。

自分に正直に生きる父の姿は、見ていて清清しいですね。人生の残り時間が少ないなら、なおさら。
多少自分勝手に振舞ってるように見えたとしても、自分自身の人生なんだもの。
その父を見ていながら(ある意味、父からの教えとも言える)何故、オリヴァーは煮え切らないんだろう。
それでも、オリヴァーを演じたのがユアンだったから、イラッとする事も無く見る事ができたのかも。
センシティヴというか、考えすぎというか、このファザコン気味な中年男性が、何故か可愛らしいのだ。

オリヴァーが恋するアナ役のメラニー・ロラン、おフランス的なファッションが似合ってる。
特に、青い花柄のローブがブロンドに映えて可愛かったですね。
どこか浮世離れした雰囲気を持つ彼女とユアンの組み合わせは、
12歳という年の差を感じさせず、すごくキュートでした。

物語は、そんな二人が共に過ごす2003年と、父がカミングアウトした後の5年間と、
幼少の頃の主人公と母との暮らし、その3つがシャッフルされ進行していきます。
さらには、各時代の風俗や政治等アメリカ史も紹介されつつ。
グラフィックデザイナーでもある監督のイラストでは、主人公の内向的な性格が表現されているよう。

これまた監督の嗜好なのか、“女優・ヴェロニカ・レイク”、“アレン・ギンズバーグの詩集「吠える」”
“女優・リヴ・ウルマンの本”や“レゴマン”や“ビロードうさぎ(絵本)”といったキーワードも出てきます。

ビロードうさぎビロードうさぎ
(2002/03)
マージェリィ ウィリアムズ

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「僕が『Beginners』で最も表現したかったことは、人生の冒険についてであり、自分の殻を破ることについてだ」
との監督の言葉にもあるように、重要なのは“怖れる事なく人とコミットしていく”という事なのかも。
そういう点では、オリヴァーにはもうちょっと頑張って欲しい!と感じてしまう。

ジャックラッセル・テリア、アーサー(コスモ)の存在が、ユーモラスで大きな魅力。
BEGINNERS02
毛質はラフなのかブロークンか見分けが付かないけど、可愛い〜♪
そういえば、話題の映画「アーティスト」(2011年 フランス)でも、
ジャックラッセルテリアのアギーが大人気という事です。

梅田ガーデンシネマにて鑑賞。