ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

抵抗(レジスタンス)死刑囚の手記より

抵抗-死刑囚は逃げた [DVD]抵抗-死刑囚は逃げた [DVD]
(2009/02/28)
フランソワ・ルテリエシャルル・ル・クランシュ

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↑DVDは、原作「死刑囚は逃げた」(アンドレ・ドゥヴィニ)からの引用か、
映画とは異なったタイトルなんですね。

監督・脚本:ロベール・ブレッソン
製作総指揮:ジャン・テュイエ、アラン・ポワール
原作:アンドレ・ドゥビニー
撮影:レオンス=アンリ・ビュレル
美術:ピエール・シャルボニエ 
編集:レイモン・ラミ
出演:フランソワ・ルテリエ、ロジェ・トレルヌ、シャルル・ル・クランシュ
(1956年 フランス)
原題:Un condamné à mort s'est échappé ou Le vent souffle où il veut

今回も激しくネタバレしてますので、ご注意ください。

「海の沈黙」に続き、岩波ホールセレクション Vol.1「抵抗と人間」の2作品目はこれ。
上映してくれた梅ガデさんに感謝!です。

DVDの、いきなりネタバレ(?)的タイトルどおり、ドイツ軍に捕らえられたレジスタンス派の
フランス軍中尉が監獄から脱走する、それだけのストーリーなんですが。

この緊張感。メルヴィルの「海の沈黙」には張り詰めた糸のような緊張感がありましたが、
こちらはもっとスリリング。実話に基づいているらしいので、余計にドキドキしてしまう。
もちろん実話に基づいた脱獄モノは他にもあるんですが、この作品では、ひたすら主人公からの
目線で物語が語られているだけに、彼の心を揺れ動きが透けて見える分、緊張してしまうのかも。
“脱獄”そのものの行為にスリルを感じるというよりは、主人公に気持ちを寄り添わせてると
いやでもモチベーションが高くなってしまう感じです。現実的には、私ならすぐあきらめてしまいそうですが。

自分の中で譲れない(抵抗すると決めた)領域を守る為に危険を冒したり、
その人物を信頼していいのかそれとも裏切り者なのかと悩んだり、
気持ちの休むヒマがなかなかありません。
モーツァルトの曲は使われているものの、基本的には静寂の中での、
ドアを削る音や、看守の歩く音、列車の音等も緊張感を煽る効果が。
あえて感情的な部分や過度な演出を好まない手法が活きてます。

teikou

フォンテーヌ中尉役のフランソワ・ルテリエ(当時はソルボンヌで哲学を
専攻していた27才の学生)の目や手をクローズアップしたカメラワークが好み。
ラストシーンもよかった。

過去のこういった作品を観る度に、世の中に存在する素晴らしい映画の中の1パーセントも
私は観る事ができてないのかもしれないなぁと思います。
これからそういった作品を観る楽しみもあるけれど、映画は日々創られていくので
現実的には全部観るというのは無理ですよね。。。。
だからこそ、多くの映画の中から選んで観て素晴らしいと感じる事ができた作品とは
何かしらの“縁”を感じます。今回もいい縁やったなぁ。

梅田ガーデンシネマにて鑑賞。