ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

パリ20区、僕たちのクラス

ENTRE LES MURS

公式サイト

監督・脚本:ローラン・カンテ
製作:キャロル・スコッタ/キャロリーヌ・ベンジョ/バルバラ・ルテリエ/シモン・アルナル
脚本:フランソワ・ベゴドー/ロバン・カンピヨ
撮影:ピエール・ミロン
編集:ロバン・カンピヨ
音響:オリヴィエ・モヴザン/アニェス・ラヴェズ/ジャン=ピエール・ラフォルス
衣装:マリー・ル・ガレック
制作担当・助監督:ミシェル・デュボア
ポストプロダクション:クリスティナ・クラサリス

ネタバレ含みます!

【ストーリー】
この中学に赴任して4年目になる国語教師のフランソワ(フランソワ・ベゴドー)は、
新学期初日に教室の入口で24人の生徒を出迎える。
彼らの担任でもあるフランソワは教室では帽子を脱ぐように注意したり、
生徒たちに静かにするよう指示したりしている。
だが、スレイマン(フランク・ケイタ)らは相変わらず反抗的な態度で……。
(シネマトゥデイより転記させていただきました)

24ヒキのイキのいいサカナたち

フランスの学年制度は小・中・高で5・4・3制で、小学校1年から高等学校1年までの10年間が
義務教育という事です。(高等学校3年終了時には、大学入学資格試験が実施されます。)

フランソワという教師が、とある中学のクラスで教える国語の授業、そのシーンがほとんどを占める。
移民の多い地域のようで白人よりも中東やアフリカ系の生徒が多く、生徒の親もフランス語が
ほとんど話せなかったりする。教師が保護者とコミュニケーションをとる事も困難な様子。

12〜14才位の時って、自分に置き換えてみるとまだまだ子供でしたね。
このクラスの生徒達も精神的に結構子供っぽい、でも大人として扱ってほしい願望が強い年代なのか、
お国柄なのか、とにかく自己顕示欲が強い!
欧米では子供とはいえ精神的に独立した人格として対等に扱う傾向がありそうで、
この生意気な子供達を扱う様子を見ていると、日本とは違うなぁと思う。
上から力で押さえつける方法というのはとられていない。

クラスの中には教師に反発したり問題行動を起こす生徒も多く、授業はなかなかスムーズに進まない。
それでもフランソワが子供達の発言に対し、その都度真剣に答えている様子が微笑ましかった。
お互いの意見をちゃんと言いあってコミュニケーションをとる事も、国語の授業の一環と言えるかも。
ただ、あまりにも屁理屈を言う生徒に対しては、正直イライラしたけど。
フランソワ、そこはもうちょっとビシッ!と言ってやって!

そこでハッとした。この作品はドキュメンタリーじゃないという事を思い出す。
イキイキ、ピチピチとした、若くてエネルギッシュで瑞々しい生徒役の子供達。
プロの役者じゃない人達の演技には今迄幾度も感動させられてきた。
その多くは、ナチュラルでリアリティにあふれているが、
この作品もフィクションである事を時々忘れてしまうほどの鮮明さがあった。

日本人である私から見ると、アジアと西洋のものの考え方の違いも面白かった。
中国から来たウェイ(いい子ちゃん!)の「行儀の悪いクラスメイトは恥ずかしいと感じる」
という言葉にフランソワは「“礼儀”と“恥”を混同していないか」と言っていたり。
私ら日本人からしたら、回りに迷惑をかけたりする行動は“恥ずかしいこと”やもんね。

なんだかせつないなぁと思ったのは、学年末にアンリエットが言った「この1年間何も学んでいない」
という言葉。自分が先生やったら脱力するよぉ。教師というのは、忍耐力のいる仕事ですねぇ。

原作者でもある主演のフランソワ・ベゴドーは、実際に中学で2年間国語教師を経験している。
映画の中のフランソワは、決して完璧な先生ではなく、生徒の無分別な発言に対して感情的になり
失言したりしている。その変がまたリアリティを感じるところかもしれない。
それでも、生徒を安易に切り捨てる教師や事なかれ主義の教師とは違う
こんな先生がいたらいいよね。
でも携帯は、教室持ち込み禁止にした方がいいと思うよ!フランソワ〜

テアトル梅田にて鑑賞。