ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「ロケットマン」〜ファンタジー色がチャーミングなミュージカル〜

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公式サイト:https://rocketman.jp/

監督:デクスター・フレッチャー
脚本:リー・ホール
製作:マシュー・ボーン、デビッド・ファーニッシュ、アダム・ボーリング、デビッド・リード
製作総指揮:エルトン・ジョン、クローディア・ボーン、ブライアン・オリバー、スティーブ・ハミルトン・ショウ、マイケル・グレイシー
撮影:ジョージ・リッチモンド
美術:マーカス・ローランド
衣装:ジュリアン・デイ
121分/2019年/イギリス・アメリカ
原題:ROCKETMAN

※ネタバレを含みます

【イントロダクション】
グラミー賞を5度受賞、『ライオン・キング』の主題歌「愛を感じて」でアカデミー賞歌曲賞を受賞。代表曲の「ユア・ソング(僕の歌は君の歌)」は世代を超えて歌い継がれている。輝かしい功績で知られる伝説的ミュージシャン、エルトン・ジョンだが、その成功の裏には悲しくも壮絶なドラマがあった。
(公式サイトより転記させていただきました)


子供の頃の孤独な自分をハグしてあげる、そんな演出と美しいメロディに胸がギュッと締め付けられる。

エルトン・ジョンにさほど興味がない私でも、すごく楽しめました。
いい意味で垢抜けてなくて、おシャレなミュージカル(「ラ・ラ・ランド」みたいな)とは違う味わいがあります。


なんといっても、エルトンとバーニーの友情に胸熱!
出会って意気投合し、音楽談義に花を咲かせ時間を忘れて夢中になる様子
この時の二人の興奮が伝わってきて、ワクワクします。
バーニー役がジェイミー・ベルというのも、好ましいわ〜

けど、こんな近くに無二の親友がいても、
友人<恋人 の図式になってしまうのは、もはやお約束?
お互いに尊敬し合う友情とは違い、恋愛感情なんて所詮一時的なモノなのに、ウブな坊やは舞い上がっちゃっうのよねん。
この辺は「ボヘミアン・ラプソディ」と重ねて見てしまうなぁ。

幼少期のトラウマ、名声を得てからのプレッシャーや孤独、そこからアルコールやドラッグ、セックス依存症に陥る
と、この時代のスターを絵に描いたような話だけど。。。

エルトン・ジョンは生きててしかも現役だから、安心して見られる。

一時代ドラッグなどにハマっても、そこから復活した人と早死にしてしまう人の境目はどこなのだろう?と、しみじみ考えてしまう。
ミックやキース、スティーブン・タイラーなんか、いまだにピンピンしてるもんねぇ。

親子関係の描写など、見ていて辛いエピソードも多い。
けれど、様々な出来事があって現在のエルトン・ジョンがいるのだなーと、例のごとくエンドロールの映像を見ながらしみじみ思う、この瞬間が好きです。
「人生山あり谷あり、けれど自分自身で切り開いていくもの」と、生き証人が語ってくれているように、勝手に感じてます。

聞き覚えのある曲も多かったけど、知らない曲もメロディが素晴らしい。
タロン・エジャトンの歌声はエルトン本人よりも男っぽくて色気があり、むしろこちらの方が好みなので満足です。

そうやって、サントラとオリジナルを聴き比べるのも面白い。

ここしばらくは、通勤時間の楽しみになりそうです。
ミュージカル映画は、耳で長く鑑賞後の余韻を感じられるのがいいですね。

 

ロケットマン(オリジナル・サウンドトラック)

ロケットマン(オリジナル・サウンドトラック)

  • アーティスト: サントラ,ジェイソン・ペニーコーク,アレクシア・カディム,デニー・ランデル,サンディ・リンザー,エルトン・ジョン,バーニー・トーピン
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
  • 発売日: 2019/08/07
  • メディア: CD
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TOHOシネマズ梅田 にて鑑賞

8月第4週・第5週から公開(大阪市内)の映画で気になるのは

今日から「ロケットマン」に「ドッグマン」、
明日からミッシェル・オスロ監督のアニメーションと
見逃せない新作ばかりです

また、来週末からは話題のタランティーノの新作が公開!

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他にも色々、気になる映画をピックアップします

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「トム・オブ・フィンランド」〜今いる場所だけが世界じゃない〜

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公式サイト:http://www.magichour.co.jp/tomoffinland/

監督:ドメ・カルコスキ
脚本:アレクシ・バルディ
撮影:ラッセ・フランク
116分/2017年/フィンランド・スウェーデン・デンマーク・ドイツ・アメリカ
原題:Tom of Finland

※ネタバレを含みます

【ストーリー】
同性愛が厳しく罰せられた第二次世界大戦後のフィンランド。帰還兵のトウコ・ラークソネンは、昼間は広告会社で働き、夜は鍵のかかかった自室で己の欲望をドローイングとして表現していた。
(公式サイトより転記させていただきました)


情熱溢れる人たちが登場する、静かな映画
フィンランドからLAへ、その対比が面白い


トウコは戦争で受けた心の傷をひきずりながら、自分が殺したロシア兵を一人のキャラクターとして昇華させていきます

が、闇にまぎれて相手を探す夜の森は寒々しく、抑圧され本来の自分を隠した生活からはウツウツとした暗さが。

反面フィンランドの夏は柔らかな日差しが美しく、このパートは少しもどかしさを感じるようなリズムで淡々と描かれます


一方、LAの映像はスコーンと抜けた青空とプールの水しぶきが眩しい!
「開放感」「自由」という文字が頭に浮かびます

彼の絵がいかに多くの人に影響を与えたか、そんな空気感が伝わってきます
70年代のゲイカルチャーは、こうやって生まれていったんだなぁ

内から湧き出てくるものを描いた絵の数々は、最初はあくまでも個人的なモノだったんでしょうね。
それが遠く離れたアメリカで大勢の人の共感を得て支持される、その時の驚きと感動はいかばかりか!

これを見て、当時不思議に思ってたヴィレッジ・ピープルのコスプレも納得
「マッチョ、マッチョ、マーン♪」というゲイ色を前面に出した曲には、少なからずカルチャーショックを受けたけれど

 

そんなアメリカでも、80年代HIVの大流行と共にゲイに対するバッシングがひどくなっていきます

長い間抑圧されていた同性愛者たちにとって、不特定多数と活発に性交渉を持つ場ができた事は、流行の要因の一つと言えるかもしれません
それもこれも今だから言える事であって、当時は治療できないこのウイルスは未知のモノだったのです
ゲイであってもなくても、欲望に流されず安全な性交渉を!という事につきますね


シネ・リーブル梅田 にて鑑賞

「存在のない子供たち」〜記憶に刻まれた子供たち〜

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公式サイト:http://sonzai-movie.jp/

監督・脚本: ナディーン・ラバキー
125分/2018年/フランス、レバノン
原題:Capharnaüm

※ネタバレを含みます

【ストーリー】
わずか12歳で、裁判を起こしたゼイン。訴えた相手は、自分の両親だ。裁判長から、「何の罪で?」と聞かれたゼインは、まっすぐ前を見つめて「僕を産んだ罪」と答えた。
(公式サイトより転記させていただきました)


久しぶりに、すごい作品を見た

ドキュメンタリーのようなリアルさを感じつつ、カリスマ性のある主役が演じる物語に強く引き込まれていく、そんな心動かされる映画

 

法的に存在していない子供たち
愛されず、教育を受けられない子供たち
第2級市民や不法就労者たち
演じるのは、登場人物と似たような境遇にいる人達ばかり

中でも自身がシリア難民でもある主役ゼインくん、そのスター性に惹きつけられる


映画は、ゼインが自分の両親を訴える裁判所のシーンから遡っていく

親から生活の糧として扱われてきたゼインの、唯一の拠り所でもあった妹サハル
その妹を必死に守ろうとする彼の努力もむなしく、彼女は強制的に結婚させられてしまう

親に見切りをつけた彼は家を飛び出し、助けを求めたのが不法滞在エチオピア人女性ラヒル
極貧とはいえ、彼女の赤ん坊ヨナスは愛情をもって育てられている
ここでゼインが守るべき存在は、自然とヨナスとなっていく
(このヨナスがまた、最高に可愛いです!)

しかし、ラヒルは不法就労で警察に拘束されてしまう
ゼインはヨナスの世話をしながら、毎日をなんとかしのいでいく
が。。。。

親からの愛情を知らないゼインが、自分より弱いものを守ろうとするその逞しい姿に感動し、心の中で必死に応援してしまう

どんなに厳しく辛いギリギリの状況でも、ゼインは常に冷静に行動しようとする
そんな彼が裁判で「自分のような子供をこれ以上増やさないで欲しい」と訴えた時や、面会で母に見せた怒りと悲しみの表情が胸に突き刺さる


監督が3年間レバノン国内でリサーチした事が元に作られた作品だけに、現実の重みを考えると暗い気持ちになる

私が知らなかったのは、レバノンでは完全に国民としては認められていない「第二級身分」というモノが存在するという事
ゼインの両親だけが一方的に「悪」なのではなく、社会制度自体が負の連鎖を引き起こしているという事
それでも、そこに「愛情」が存在していれば少しは救いがあるのだが

どこまでいっても、努力してもどうにもならない、すごい閉塞感

ただ、ゼインくんの逞しや賢さに感心し、その優しさに涙し、祈り、時に共感して夢中になっていたせいか、救いようのないしんどさではない
強く生きる彼に教えられ、勇気付けられた、そんな時間だった
映画としても、ちゃんと落とし所も心得ている

出演者達がこの映画をきっかけに、人生が好転したのではないかと考えると少し明るい気持ちにもなる

もちろん名もなき忘れられている人々が、今も苦しんでいる現実を忘れてはいけないし、欧州へ渡りたいと話していたストレートチルドレンの女の子に思いをはせるだけでもいいと思う

ここ日本でも、家庭内暴力など様々な事情で戸籍がない人々が存在するし、色々と問題が山積みなんですけどねぇ


この映画を見に行った日、シネ・リーブルが大入りの様子で嬉しくなりました。
メディアにでも取り上げられたんでしょうか? 広まるといいな

ぜひ、10代とか若い人達にも見て欲しい
この間、文部科学省選定の「風をつかまえた少年」を夏休み映画でオススメしたばかりだけど、本作はもう少し年長の子供達に見て欲しい作品です


シネ・リーブル梅田 にて鑑賞

8月第2週・第3週から公開(大阪市内)の映画で気になるのは

トレーラーを見ただけでワクワクが止まらない!

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大好きなミッシェル・オスロ監督でベル・エポック期のパリが舞台って、めちゃくちゃ期待してしまう。
「ディリリとパリの時間旅行」は8/24(土) 〜 からの上映で、もうちょっと先です、待ち遠しい!

 

さて、今週末からと来週末から大阪市内で上映される映画の中から気になる作品をピックアップしました。

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7月第4週・8月第1週から公開(大阪市内)の映画で気になるのは

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新海誠、監督・脚本・原作の「天気の子」

「君の名は。」のようなエンターテインメント性はなかったけれど、背景のヴィジュアルには圧倒されるような美しさが
「千と千尋の神隠し」の千がハクと手をつないで空を舞うシーン、そんな高揚感はなかったなぁ
主人公の少年に全く感情移入できなかったのも、少々辛かった
個人的には少女メインがやっぱり好きだ


さて、今日を含めた今週末からと、来週末から大阪市内で上映される映画の中から気になる作品をピックアップしました。

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「ゴールデン・リバー」〜狂気と癒し〜

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公式サイト:https://gaga.ne.jp/goldenriver/


監督:ジャック・オーディアール
脚本:ジャック・オーディアール、トマ・ビデガン
原作:パトリック・デウィット
122分/2018年/フランス、スペイン、ルーマニア、ベルギー、アメリカ
原題:THE SISTERS BROTHERS

※ネタバレを含みます

【ストーリー】

カリフォルニアがゴールドラッシュで沸く1851年のアメリカ
オレゴンで通称「提督」に雇われた殺し屋、イーライ(ジョン・C・ライリー)とチャーリー(ホアキン・フェニックス)のシスターズ兄弟は、ウォーム(リズ・アーメッド)を追ってサンフランシスコへと南下していた。


悲劇なんだけど喜劇、狂気と癒しのバランスが絶妙!

 

原題は「シスターズ兄弟」だけど、兄弟に加え同志として結ばれた二人の男が登場します

兄弟のうち一人、ホアキン・フェニックスは「ビューティフル・デイ」(2017)同様に、幼少期のトラウマと狂気を抱えた役柄

そんなチャーリーを何かと助けるのが、ジョン・C・ライリー演じるイーライ
このイーライ、とにかく純情で可愛くて、仕草もユーモラス
しかも強いのだから、大好きになってしまう

彼が無意識にある物を食べてしまうシーンでは、笑いが起こっていました
翌朝それが大変な結果をもたらすのですが、それさえもどこか可笑しい

ジョン・C・ライリーが伝説のコメディアン役だった「僕たちのラストステージ」(2019)は、正直あまりピンとこなかったのです
が、今回の緊張感の中での笑いには、かなりグッときました
イーライが歯を磨くだけで、ニマニマしてしまいます

さて、この二人が旅立つ際には、不協和音の音楽が見るものの不安を煽ります
ここら辺、胸がザワザワする感じは従来の「西部劇」っぽい

暴力で人々を支配する、そんな荒くれ者が登場する西部劇はちょっと苦手です
ただ、この映画の主要人物4人のうち3人は心優しき男達

自ら発明した溶液で砂金を取り新世界を築こうとするウォームと、最初は彼を追っていたもののやがて彼と志を同じくするモリス(ジェイク・ギレンホール)
この知的な二人が兄弟に変化をもたらすのですが。。。。

ここから物語は、チャーリーによって急展開します

父との残酷な関係性と、何者にも代えがたい母の存在
人の悪魔的な部分と良心、その両面がエンターテイメントとして描かれ、意外なラストにも救われます


ジョン・C・ライリーが、自ら演じるという条件を付けて映画化の権利を買った原作はこちら

シスターズ・ブラザーズ (創元推理文庫)

シスターズ・ブラザーズ (創元推理文庫)

 

 

大阪ステーションシティシネマ にて鑑賞

 

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7月第2週・第3週から公開(大阪市内)の映画で気になるのは

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肉体的にも精神的にも、見ていて痛い映画だった。
バレリーナの主人公が繊細で、悩みを一人抱え込んでしまう様に胸が痛くなる。
残酷で意地悪な女の子達も登場するけど、あくまでも淡々とした作品のタッチは変わらない。
それにしても、弟の可愛さは反則だわ!

 

さて、今日を含めた今週末からと、来週末から大阪市内で上映される映画の中から気になる作品をピックアップしました。

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「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」〜開かれた図書館とは〜

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公式サイト:http://moviola.jp/nypl/


監督・製作・編集:フレデリック・ワイズマン
製作総指揮:カレン・コニーチェク
撮影:ジョン・デイビー
205分/2017年/アメリカ
原題:Ex Libris: The New York Public Library

※ネタバレを含みます

【ストーリー】
荘厳なボザール様式建築によって観光名所としても名高い本館と、研究目的のために公開されている4つの研究図書館、そして地域に密着した88の分館を合わせた92の図書館のネットワークである「ニューヨーク公共図書館」のドキュメンタリー

 

頭がクリアな時に見るべき映画

205分は特別長いわけじゃないけど、ドーキンス博士のトークイベントに始まり幹部会議での言葉の応酬など、情報量が多くて結構頭が疲れる

けど、とても面白い
NYの人たちの置かれている環境や暮らしを、垣間見れた気がした
ドキュメンタリー好き、ワイズマンの作品好きなら、間違いなく見応えある作品だと思う

 

世の中には面倒な事は多いけれど、その面倒な事の一つ一つに対処していくことが必要だし、スタッフやボランティアの人達のアクレッシヴさには頭が下がる


結局人なんですよね、重要なのは
どう運用していくのかも考えずに箱物を作り続けていたバブル期の日本とは対極的
これだけ地域と深く関わっていく図書館なのか!と圧倒された
教育機関の役割も担っていて、教養のセイフティーネットのような存在と言えるかも

トランプ就任後、漠然と抱いていたアメリカに対する失望感が少し薄れたというか、民主主義の可能性をちょっと感じられた気がする

『コレラの時代の愛』の読書会、いいな〜。参加したい
夜に見に行ったのと疲れていたので、パティ・スミスが登場したあたりで少し意識が遠のいてしまったが残念

日本の図書館もこういう積極的に地域と関わっていくタイプの場所なら、もっと頻繁に訪れるかもしれないなぁと、超羨ましい
けど、これって図書館に限らず、公共施設が情報を自ら作って発信するにはどうしたら良いのかという問題かも
日本では、職員だけでなく市民側の意識も変える必要があるんじゃないかと思ったりする

ちなみに、今日図書館で借りた本はこちら

THE LAST GIRLーイスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語―

THE LAST GIRLーイスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語―

 

何やかんや、日頃から図書館にはお世話になってます

 

テアトル梅田にて鑑賞