ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「トゥルー・グリット」 〜少女の逞しさを見よ!〜

公式サイト:http://www.truegritmovie.com/intl/jp/音が出ます!

TRUE GRIT

監督・脚色・製作:ジョエル・コーエンイーサン・コーエン
原作:チャールズ・ポーティス
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ
撮影:ロジャー・ディーキンス
(2010年 アメリカ)
原題:TRUE GRIT

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
父親を殺された14歳の少女マティ(ヘイリー・スタインフェルド)は、
真の勇気を持つといわれる保安官のコグバーン(ジェフ・ブリッジス)に犯人の追跡を依頼。
テキサス・レンジャーのラビーフ(マット・デイモン)も加わり、
かたきのチェイニー(ジョシュ・ブローリン)を追うこととなる。
(シネマトゥデイより転記させていただきました)

「悪しき者は追う人もないのに逃げる 箴言28章1節」

1969年のアメリカ映画「勇気ある追跡」(監督はヘンリー・ハサウェイ)のリメイク。
ジョン・ウェイン主演の西部劇といえば、かつてアメリカが求めた父性の象徴のような気がして
あまり食指が動かずオリジナルは未見ですが、今は今作との比較として見たい気がします。

勇気ある追跡 [DVD]勇気ある追跡 [DVD]
(2010/11/26)
ジョン・ウェイン

商品詳細を見る

そのジョン・ウェイン演じた保安官のコグバーン役を、今回はジェフ・ブリッジスが。
「クレイジー・ハート」で演じたカントリー歌手同様、お酒に飲まれてしまうちょっと情けないヤツ。
小汚いオヤジでも、彼が演じるとなんだかカッコよく見えてしまう。
グダグダの状態の時と、やるときはヤル!状態の時の差のつけかたも上手いです。

特筆すべきは、マティ役のヘイリー・スタインフェルドの素晴らしさ。
ミア・ワシコウスカアリス・イン・ワンダーランド)のような見た目の美しさや
華やかさは無いものの、その芯の強さ、凛とした様子には強く惹かれます。

かつての父の取引相手である商人ストーンヒルとの、一歩も引かない交渉術や
大の大人を言い負かしてしまう言葉の巧みさ。
こういう切れ者で生意気な少女!いいですねぇ〜。なんだか胸のすく思いがします。
後のチャイニーのセリフでハッキリするんですが、どうやらマティは家業の会計係で、
これまでも父と二人で家族を支えてきた背景があるようです。

で、マティの存在が圧倒的にこの作品を面白くしてる気がしました。
ラビーフと初めて対峙した時の「その逆立ってる毛をどうにかしたら?」というセリフや
「綴り(スペル)が間違ってる」とコグバーンに指摘したり、相部屋の老女のイビキに悩まされたり。
ラビーフにお仕置きされるシーンはちょっとやりすぎかな。可笑しかったけど。

そして、マット・デイモン演じるラビーフの登場シーン。
ポーチで椅子に腰かけパイプに火をつける彼は、意外(?)にもカッコよかった。
が、見た目どおりこのテキサスレンジャー野郎は、堅物の田舎者で
マティの事も“女子供”というひとくくりで判断します。
こういうマッチョな単細胞役は、マット・デイモンのビジュアルからいってハマる気がします。
役によっていろんな味わいが出せるというのも彼の魅力かも。

true grit02

短い旅の中でさえ、季節の移ろいを感じさせるような自然描写が美しい。
ラスト近く、コグバーンがマティを抱きかかえ疾走するシーンも非現実的に綺麗でした。
ロードムービーであり、少女と男達の友情物語でもあります。

ノーカントリー」の保安官(トミー・リー・ジョーンズ)は
事件を追いながらも自分の無力感に打ちのめされてましたが、
そういう空しさとは異なり、それなりにカタルシスを感じられる作品です。
残酷なシーンは少々ありますが、こういったコーエン作品の中では少なめな方かも。

TOHOシネマズ梅田にて鑑賞。