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ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「ひかりのまち」 〜心寄り添える映画〜

ひかりのまち [DVD]

ひかりのまち [DVD]

 

監督:マイケル・ウィンターボトム   
製作総指揮:デヴィッド・M・トンプソン、スチュワート・ティル
脚本:ローレンス・コリアット   
撮影:ショーン・ボビット   
音楽:マイケル・ナイマン
(1999年 イギリス制作 109分)

【物 語】
ロンドンのカフェで働くナディア(ジーナ・マッキー)は、
伝言ダイヤルで恋人を募集しているが、なかなか思うような出逢いがない。
姉のデビー(シャーリー・ヘンダーソン)は、息子ジャックと
二人で暮らしながら、美容師として働いている。
教師をしていた妹のモリー(モリー・パーカー)は妊娠中だが、
夫エディ(ジョン・シム)は妻に打ち明けられない気持ちを抱えていた。


「いとしきエブリデイ」と対になる映画、と監督が言っていたこの作品、
↑よりもさらに良かったです。ジワジワ染みるタイプの映画で。
すごく好みの作風なので、今まで見てなかったのが不思議な気がします。

マイケル・ウィンターボトムは、いろんなタイプの映画を監督しているなあぁと
思いますが、この2本(「いとしきエブリデイ」と「ひかりのまち」)では
市井の人達の日常生活における閉塞感と、
そこに注がれる監督の暖かい眼差しが感じられます。

同じように労働者階級の家族が主人公の映画では、マイク・リー監督の
「人生は、時々晴れ」が思い浮かぶのですが、
今作の登場人物達は、そこまで生活に追われてはいません。
日々の暮らしに事欠くような貧しさではないようですし、
ニートの息子がいるわけでもないのです。

むしろ、この映画の主人公三姉妹の両親が抱えているのは、
贅沢な悩みのように感じます。
定年退職した後、まだまだ働ける体力もあるのに時間を持て余している
この夫婦の姿を見ていると、経済的には困窮していなくても、
“心の豊かさとは何なのか、それを知らずに過ごす事のむなしさ”
みたになものが感じられます。

私自身も“心の豊かさ”について十分理解してるとは言えません。
この夫婦と同じく、生きる支え、情熱の源と確信できるモノを
持ち合わせていないかもしれないと思うからです。
幸運にもソレを持っている人は、案外少ないのかもしれませんね。

人生を諦めているような両親とは対照的に、娘3人はもちろん、
これからの人生に対する希望を胸に抱いているわけです。
けれど、彼女らの人生もそう思い通りにいくわけでもなく。。。

ナディアが「この人良いかも」と思った男性と相手の部屋で過ごした後、
バスで一人帰るシーンは哀しいですね。せつないなぁ。
男見る目ないやん!と思うけど、こればっかりはしょうがないし。

鬱々とした日常の中、家族の愛、姉妹の愛、隣人への愛と、
ここでもやっぱり「愛」がキーワードなんです。
行方の知れない息子からのメッセージに釘付けになる父親と、
その父を気遣う娘の心。その娘を密かに慕う内向的な青年など。
小さな希望や愛であっても、それを大切にすくいとって描いています。

たぶんこの映画が好きな人は、忘れた頃に繰り返し見るんじゃないかな。
私もすぐに、レンタル落ちのDVDが安かったので買ってしまいました。