ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

ボヴァリー夫人

ボヴァリー夫人 (新潮文庫)ボヴァリー夫人 (新潮文庫)
(1997/05)
フローベール

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監督:アレクサンドル・ソクーロフ
(1989年/2009年 ロシア)
(1989年完成の作品を監督がディレクターズカット版として再編集)

【ストーリー】
片田舎の町医者と結婚したエマ(セシル・ゼルヴダキ)は娘も授かり、
一見幸せそうな生活を送っていた。
だが、彼女はその退屈な場所でのあまりにも単調な結婚生活に飽き飽きし、
次第にふさぎこむようになっていく。
そんなある日、裕福な隣人のロドルフが使用人の治療のために訪れたことから、
彼女は情事に身を焦がすようになっていく。(シネマトゥデイより転記させていただきました)

「私は生きたい」
ユニークで強烈な映像。ソクーロフ監督の実験的な試みと感じられるシーンもあった。

ジャン・ルノワール(1933年)、ヴィンセント・ミネリ(1949年)、クロード・シャブロル(1991年)と
何度か映画化されていた様ですね。私は映画「ボヴァリー夫人」の鑑賞自体、初めてでした。

若くも美しくもない主人公。ここからまるで見る側のイメージが覆される。
逆に言うと、夢見がちで世間知らずな主人公というのは若いからこそ許されるのだ。

原作のだいたいのあらすじだけでも知らないと???になりそうな映画ですね。

羽が舞い飛ぶ部屋。常にハエの羽音が耳障りに。
そんな状況にしっくりきているエマには、潤いがない。
筋張った顔・体つきに、妙に甲高くて神経質そうな話し方。
隣人にプレゼントされる花束は何故かドライフラワーのよう。
二人が抱き合う草原には枯れ草が生い茂る。
これは、ソクーロフなりのエマ像なんかなぁ。なんか徹底してる。

私は、エマの話し方にすべて(エゴとか自堕落さ)が集約されてる感じがして
すごいなぁーと思いました。この人、表情も面白いですね。顔から目が離せない。

これだけ男女が裸で抱き合うシーンが多くて長くて、ちっともエロティックな感じがしない
作品も珍しいですね。退廃や刹那的なものは感じられても、そこに色香はなかった。

カメラワークも独特。エマが隣人でもある愛人の顔を包み込む手がいきなり巨大化したり。
愛人との逢瀬に使うホテルの部屋もなんか不思議な構図。ベッドがやけに小さくて
赤と黒のコントラストが印象的な装飾が美しい。
死を迎える準備をする部屋には天井がないし。(笑)
オオッと思うシーンがたくさんありすぎて、メモりながら観ました。

「私の機械が気になるなんて」→後半、隣人のこのセリフがなんか好きやなぁ。

シネ・ヌーヴォにて鑑賞。最終日にギリギリセーフッ。