公式サイト:http://mybookshop.jp/
監督:イザベル・コイシェ
製作:ジャウマ・バナコローチャ、ジョアン・バス、アドルフォ・ブランコ、クリス・カーリング
112分/2017年/イギリス、スペイン、ドイツ
原題:La libreria
※ネタバレを含みます
【ストーリー】
1959年のイギリス、海辺の小さな町に住むフローレンス(エミリー・モーティマー)は、亡き夫との夢だった書店を開こうとする。
町の有力者ガマート夫人(パトリシア・クラークソン)の嫌がらせに遭うが、ブランディッシュ氏(ビル・ナイ)に励まされ。。。。
本好き、イギリス好きのための、ほのぼのとした映画かと思いきや。
いやー、そんなのんびりした物語ではありませんでした。
村社会で起こる理不尽な出来事にイーッ!となります。
個人的にはめちゃ好みですが、スカッとハッピーな結末を期待する方には向かないかも。
原作はペネロピ・フィッツジェラルドの「ザ・ブックショップ」
こちらの翻訳本は発売されたばかりのよう。
同作家が1979年にブッカー賞を受賞した「テムズ河の人々」
この群像劇はとても面白いけど、哀しくてラストもモヤッとした感じが残ります。
そして、真っ直ぐすぎるがゆえに物事がうまく運ばない人が出てきます。
この映画の主人公フローレンスも、人が良すぎるのです。
人を疑いうまく立ち回る、なんていう事ができない。
それだけに非常に魅力的な女性なのですが。
これまでは脇役のイメージが強かったエミリー・モーティマーが演じたのは、
ピュアで、理知的で優しくて穏やかで、その佇まいに品性を感じる女性。
こんな店主がいる本屋なら、常連になる!と思います。
「町の小さな本屋さん」
私自身は大都市に住んでいるので縁がないのですが、
その存在自体が今はもう、ほとんどないのかもしれませんね。
好きな本、良質な本を吟味して置く本屋さんは、小さくても良質な映画をかけ続けてくれる映画館と通じる部分もあり、無くなって欲しくない存在です。
ところで、あの偉そうなガマート夫人にも腹たちますが、
飛び抜けてムカついたのが、BBC職員のマイロ!
久しぶりに映画で、大嫌いなキャラクターに出会いました。
もったいぶった話し方に、自分では何も考えないかのような権威主義
その第一印象から胡散臭さを感じていただけに、フローレンスがあっさり信用してしまう事にハラハラしてしまった。
原作者のフィッツジェラルドはBBCで働いていた事があるようなので、その時周りにこの人物のベースとなるような人がいたのかもしれませんね。
永年邸宅に引きこもっている、ちょっと変わり者のブランディッシュ氏
どこかユーモラスに感じるのは、ビル・ナイが演じてるからかな。
彼とフローレンスの関係性がしみじみと、控えめで余韻がのこります。
それだけにまた、せつないのですが。
少女クリスティーンのまっすぐな眼差しも印象的でした。
彼女の起こした行動によって、ガマート夫人の野望は挫折したのかしらん?
やっぱり原作を読んでみたい。
その苦みばしった内容とは裏腹に、1950時代の英国らしいとても可愛いファッションや雑貨に目を奪われます。
そして、イギリスらしい景観と曇った空の下ならではの色彩に心惹かれるのです。
ブランディッシュ氏のリクエスト「たんぽぽのお酒」
ここから少しだけ世界が広がるかもしれない、そんな映画はいいなぁ。
シネ・リーブル梅田にて鑑賞