ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

夏時間の庭

オフィシャルサイト

監督:オリヴィエ・アサイヤス
原題:L'HEURE D'ETE/SUMMER HOURS
(2008年 フランス)

【物語のはじまり】
母親(エディット・スコブ)の誕生日を祝うために、パリ郊外ヴァルモンドワの邸宅へと
集まった兄弟達。著名な画家、大叔父ポール・ベルティエが生前使っていた
アトリエでもあるこの家と美術品の数々。母は自分が死んだ後の
それらの処分方法について長男フレデリック(シャルル・ベルリング)に伝えるが…。

ヴァルモンドワのやわらかな景色と本物の美術品にうっとり。

オルセー美術館20周年企画として製作されたこの映画は、
印象派の画家たちが愛したというパリ郊外のヴァルモンドワが舞台。
ポントワーズのあたりになるんでしょうか?

小鳥のさえずり、おいしげる緑、子供たちのはしゃぐ声、
いきいきと駆け回る犬達。心地よさを予感させる冒頭。

映像に出てくるイギリスの庭の整然とした美しさに比べ、
フランスの庭は、けだるい昼下がりの様な雰囲気を感じる。
その明るい陽光のせいだろうか。
庭に出したテーブルに広げられた食器類やワイン、
草の上に放置された子供の玩具等。その雑多な感じも悪くない。

オーブンに入れられるハーブを詰めた鶏肉、花瓶にいけられた庭の花等、
この家の匂いが感じられる様な映像の数々。
エリック・ゴーティエのカメラワークは素敵。

映像に登場する美術品の数々、中でもアール・ヌーヴォーの家具類や調度品等が
いかにもこの家にあるべき姿をしていて素晴らしい。
生活の中で役割をはたしてこそこれらの品々は光るのかもしれない。
ブラックモンの花器などは、オルセーに展示されている状態が
可愛そうに思えた。家で花を生けられた時はあんなにイキイキとしていたのに。

この家の主でもある母親役のエディット・スコブさん。凛とした美しさを感じました。
フィルモグラフィーを見ると、今まで見た映画にちょこちょこ出てはるんですが
思い出せない。
特にブニュエル監督『銀河』で聖母役(この映像は結構衝撃的!やったはず)を
演じてはったらしいのに、あまりに昔に見たので全く顔が一致しません。
おそらく神々しい姿だったんでしょうね!

そしてジェレミー・レニエがあまりにもフツーの好青年で、
最初彼だとは気が付きませんでした。うーん、俳優さんはこれでないと。

3人の子供たちの決断によって、彼等が失ったものは決して少なくないかもしれない。
それでも、ものごとの移り変わり、うつろいの中にも美しさがあるのかもしれないなぁ
などと感じさせられた。

テアトル梅田にて鑑賞。