ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン

監督:トラン・アン・ユン
(2009年 フランス)

【ストーリー】
他人の痛みを身代わりとなって引き受ける特殊能力を持つ男シタオ(木村拓哉)が
失踪。元刑事の探偵クライン(ジョシュ・ハートネット)は彼の行方を追って、
ロサンゼルスからフィリピン、そして香港へとたどり着く。
そこでシタオがある女性リリ(トラン・ヌー・イェン・ケー)と一緒にいて、
彼女を愛する香港マフィアのボス、ス・ドンポ(イ・ビョンホン)も
シタオを探していることが判明する。(シネマトゥデイより転記させていただきました)

「イエスの苦悩は終末まで続く」

トラン・アン・ユン監督作品は、過去に「青いパパイヤの香り」「夏至」の
2本しか見てませんが、そのみせ方に“あざとさ”の様なものを感じつつも、
美しい映像は記憶に残っています。
東南アジアのモンスーン気候というか、何か湿度の高い
汗や水を伴う表現にハッとさせられ、緑ゆたかな家屋にも心なごみ、
抑制された感情表現にも心地よさが感じられました。

今回の作品は、やたらとマスメディアで宣伝してたのと予告編で
ちょっと変な予備知識が入ってしまいました。
加えて、監督が意図しているのかと思われるテーマは、
冒頭すぐに猟奇殺人の犯人が口にするので、なんだか
まっさら・新鮮な気持ちで見られなかったかもという
気もわれながらする。あーイカン!です。

ストーリー自体は単純ですが、登場人物の“今”の場面でその人物の思考の中の
“過去”のシーンが交錯するので、ちょっとわかりずらい。

この映画の“汗”は、上記2作品とは明らかに違いましたね。
生命の息吹、女性のエロス等というものの表現には一目おくところがある
トラン監督ですが、
やたらと男3人の裸がシーンが多いこの映画。
はたしてそんな必要があるのか?と思うシーンもチラホラ。
服は、脱いでしまうより着てる方がエロスを感じます。
男性をエロティックにみせる手法に関しては、今ひとつでした。
そこは意図してないと言われたとしても、どーせならって思います。

逆に、あまり奇麗とも思えないトラン・ヌー・イェン・ケー だけは、
これまでどおり美しくエロティックに描かれていて、
やっぱり女性を撮るのはうまいなぁとちょっと感心。

人間の体を使ったという設定のオブジェの数々。
クリーチャーの様なその姿に、どこがどうなってんのか思わず見入ってしまいました。
けど「これを見てどう思う」と犯人に聞かれれば、「醜悪!」と答えたい。

空に切り取られた十字架や、シタオが復活する場面等いい意味で
印象的なシーンもある一方、一人よがりな部分も感じられる作品でした。

トラン・アン・ユンは村上春樹著「ノルウェイの森」映画化の監督であるという事で、
ここんところ話題になってましたね。
私自身「ノルウェイの森」はほとんど記憶にありません。
羊をめぐる冒険」の方がずっと面白いやん!と思ったことは覚えてますが。
思えばここらあたりから村上春樹ばなれしてしまいました。
それでも、若かった頃と今では感じ方も違ってるかもやし、
もう一度映画を見た後にでも読み返してみたいなぁ。

梅田TOHOにて鑑賞。

エンドロールの最中にガヤガヤと話してるオバサマたち、
携帯の液晶画面を振り回してるオネエちゃん、
それならいっそ、外に出たらどうでしょう。
もう少し映画館でのマナーを守って欲しいです。( ̄▽ ̄;A