ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

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「ある海辺の詩人 -小さなヴェニスで-」 〜ちいさなともしび〜

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公式サイト:http://www.alcine-terran.com/umibenoshijin/ 音が出ます!

監督・原案・脚本:アンドレア・セグレ
共同脚本:マルコ・パテネッロ
(2011年 イタリア/フランス 98分)
原題:IO SONO LI

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】

"小さなヴェニス"と呼ばれるラグーナ(潟)に浮かぶ美しい漁師町― キオッジャ。
中世さながらの建物が並び、石橋、石畳、様々な漁船が行き交う運河、
漁具を担ぐ男たちの姿など、素朴な雰囲気をもった町である。
海辺に佇む小さな酒場"オステリア"で出会った常連客のべーピ(ラデ・シェルベッジア)と
シュン・リー(チャオ・タオ)は、お互い異国の地からやって来たという共通点から、
二人にしか分りえない孤独を美しい詩を通して分かち合っていく。
(公式サイトより抜粋・転記させていただきました)

勉強不足で全く知らなかったんですが、イタリアの地方都市にまで中国人社会が
出来上がってるんですね。いやー、恐るべし華僑たち。

イタリアの小さな街のオステリアを、中国人が買い受け経営しているというのは、
実際に監督自身が見聞きした事のようです。
ドキュメンタリー出身のこの監督、移民に関する社会学を学んだかたという事で、
こういう実態については専門分野という感じなのかもしれません。

主役は「長江哀歌」のチャオ・タオ。この映画では若く見えます、というか
欧米人の中にいるとやはりアジア人は幼く見えます。

カメラが良いですね。素朴で美しい映像が印象的です。
キオッジャの観光地化されていない雰囲気も良いなぁ。
ヴェネツィアに行くなら、むしろこの街に行きたいですね。

そういう街だからこそ、村社会とまではいかなくても閉鎖的なところがある訳で、
洗練されていない人達は、べーピとシュン・リーの関係に眉をひそめ
邪な想像をめぐらせるのです。

中国の詩人“屈原”の命日、水にローソクの灯を浮かべて流すシュン・リーと、
水位が上がり水につかったオステリアでそれを真似るべーピ。
この何度か出てくる、水に浮かぶ灯の映像はこの映画の雰囲気そのものです。
どこかゆったりと流れる時間の中で、心を通わせる人の間に生まれる
ぬくもりのようなものが感じられる作品です。

シネ・リーブル梅田にて鑑賞。