ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「君と歩く世界」 〜フランス的寛容さ〜

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公式サイト:http://www.kimito-aruku-sekai.com/main.html 音が出ます!

監督・脚本:ジャック・オディアール
共同脚本:トーマス・ビデガン
撮影:ステファーヌ・フォンテーヌ
音楽:アレクサンドル・デスプラ
編集:ジュリエット・ウェルフラン
(2012年 フランス/ベルギー 122分)
原題:RUST AND BONE

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
南仏アンティーブの観光名所マリンランドのシャチ調教師ステファニー(マリオン・コティヤール)を
突然襲った事故は、彼女の人生を一変させた。失意のどん底に沈んだ彼女の心を開かせたのは、
5歳の少年のシングルファーザー、アリ(マティアス・スーナールツ)だった。
(公式サイトより転記させていただきました)

マリオン・コティヤール主演のジャック・オディアール作品という事で見に行きましたが、
全く予備知識がなかったせいか、驚かされたり、予測がつかなかったりと
楽しい時間を過ごす事ができました。
出演者や監督だけで選択して見にいくのも良いなぁと、思ったりして。

まず、ステファニーの事故と足について。CGの技術がここまで進歩してるとは!
全く違和感なく、というかマリオンの足はどうなってるんだ?とちょっと心配してしまった位
リアルな映像で驚きです。というか、私が時代についていってないだけかも。

事故直後のステファニーの生きる気力がない、やさぐれててる感じが上手い。
そんな彼女に同情する風でもなく普通に接するアリ。ステファニーにとって
彼といると心が開放されたんじゃないでしょうか。きっとステファニーの周りの他の人達は
彼女を思いやるあまりに、それまでとは異なる接し方に(無意識に)なっていたのかも。

この二人の関係を見て思い出したのは、「最強のふたり」のフィリップとドリスです。
細かい事に無頓着なアリはステファニーに変な気を使わないので、
彼女の心の負担が少ないでしょうね。

ただ、ステファニーが全く関係のないアリに電話をかけてみたのはちょっと想像がつくのですが、
アリがそれに応えたというのは意外な気がしました。ちょっとそこにリアリティがない気もします。

それでなくても、私にとってアリはなかなか理解しにくい人物です。
育った環境のせいなのか、人がどう考えるか想像せずに行動するところや、好戦的なところも。
元々、何故人は戦い合いたいのか?というのテーマは、私には難問なのです。
ステファニーは、そんな男達の戦いに惹かれるものがあったようですね。

そんなアリも、深く考えずに手伝っていた監視カメラの仕事が原因で
姉を追いつめる事になり、自分の人生をみつめ直す事になります。

そして、それ以上にアリの気持ちに変化をおこしたのは息子サムの存在でした。
アリという人物の善い面を信じていたステファニーと、
彼女が大切な存在だと認識したアリの会話には胸うたれます。
それまでの彼からは決して発せられなかった“ジュ・テーム”には、重みがありました。

この映画を見て感じたのは、フランス人の個人の個性に対する寛容さみたいなものです。
主人公を良い人として描くのではなく、多くの欠点を持ちながらも何かを持ってる人物として
魅力的に描いています。普通に考えたら“できた人”なんてそうそういないし、
そういう人が主人公なんて、当たり前すぎて面白くないかもしれませんね。

サムは乱暴者だったり、彼女の前で平気で他の女性と立ち去ってしまったりするヤツですが、
彼自身が人生に真摯に向き合った時、その道が開けていくという展開が良いのです。

水にまつわるシーンの映像がどれも印象的です。

大阪ステーションシティシネマにて鑑賞。