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ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

サタジット・レイ監督 「大地のうた」他 オプー三部作

大阪九条のシネ・ヌーヴォさんでは4月1日まで、サタジット・レイ監督の
「大地のうた」「大河のうた」「大樹のうた」三部作を上映しています。
(その後、シネ・ヌーヴォXでは4月15日まで引き続き上映)

日曜日に「大地のうた」「大河のうた」、そして今日「大樹のうた」を観てきました。
「大地のうた」は過去に劇場鑑賞したはず。(25年以上前になると思いますが)
なのに、全くといっていいほど何も覚えていなかった自分にビックリ。
若い時に見た映画ですらそうなんですから、最近見た映画について
すぐ忘れてしまうのは仕方ないかも。。。等とヘンに納得してしまいました。

<大地のうた>
1955年/インド/モノクロ/125分/西ベンガル州政府制作
原作:ビブティブション・バナルジ
脚本:サタジット・レイ
撮影:シュブロト・ミットロ
音楽:ラヴィ・シャンカル
美術:バンシ・チャンドラグプタ
編集:ドゥラル・ドット
20世紀初頭のベンガル地方に父母と娘、居候の父の姉の四人家族が貧しくも慎ましく暮らしていた。
そんな暮らしの中、皆の祝福を受けて男の子オプーが誕生する…。
成長したオプー少年の純粋な眼をとおして、インドの片田舎の日常生活を
厳しいリアリズムと叙情性をもって見事に描ききった傑作。
サタジット・レイ 34歳の時の処女作にして、各国映画祭で認められ、
その名を知らしめた出世作である。全三作を通して、オプーという、
一人の人間の半生をきめ細かく描きあげた<大河映画>として、
世界の映画史上屈指の名作という評価を得ている。

<大河のうた>
1956年/インド/モノクロ/110分/エピック・フィルムズ社
原作:ビブティブション・バナルジ
脚本:サタジット・レイ
撮影:シュブロト・ミットロ
音楽:ラヴィ・シャンカル
美術:バンシ・チャンドラグプタ
編集:ドゥラル・ドット
新天地ベナレスに移り住むもオプー一家の苦しい生活に変わりなく、父母の死にあいながらも、
念願の大学に受かり、カルカッタに旅立つオプーの青年時代を描く。
本作も世界で各賞を受け、レイの世界的な名声を確固たるものにした。
『大地のうた』の成功により、製作された続編。

<大樹のうた>
1959年/インド/モノクロ/105分/サタジット・レイ・プロ
原作:ビブティブション・バナルジ
脚本:サタジット・レイ
撮影:シュブロト・ミットロ
音楽:ラヴィ・シャンカル
美術:バンシ・チャンドラグプタ
編集:ドゥラル・ドット
身寄りを失ったオプーは大学は卒業し、カルカッタの粗末なアパートで暮らしながら
小説家として身を立てる日を夢見ているうち、思わぬきっかけで結婚し、
幸福の時間から、失意の存底、父性愛に目覚めるまでをインドの素朴な生活相と
美しい自然の風光の中に描きだし全二作にまさるとも劣らない傑作となっている。
興行的には「大地のうた」を上回るの大ヒットとなった三部作の完結編。

以上、シネ・ヌーヴォさんのHPより転記させていただきました。

「大地のうた」がダントツにいいですね。

冒頭、この家の娘ドゥルガが庭にツバをペッと吐くシーンで、一瞬エッと思いますが、
いかにも野生児的な彼女は、3作品の中で私が一番好きなキャラクターです。
「伯母さん」と呼ばれている親戚の老婆とドゥルガの関係もすごくイイし。
また、この老婆が大地の上で天寿を全うするその姿は、神々しくもありました。

ススキの中、オプーがドゥルガを探すシーンや、蓮の池から雨へのシーン等、
この映画には忘れがたい映像がたくさんありすぎる程。
特に、風やドアの軋む音等が不吉な予感をさせる嵐の夜のシーンは、静かな恐怖心をあおります。

その一方、厳しい現実をまっすぐに見据えるような視点も印象的です。
カースト制度のバラモン出身の父親は教養はあるけど生活力が無くて、
お母さんはいつも何かとイライラし、居候の老婆にもツラくあたるんですよね。
このあたりは見ていてちょっとツライ。
オプーが、かつてドゥルガが隠したであろうネックレスを池に投げるシーンも切なくて
胸が痛いシーンです。

貧しさと人間の弱さから視線をそらさず、なおかつ詩的で美しい映画というのは
人の心を打ちますね。

「大地のうた」では、なかなか家に帰ってこないお父さんのせいで家族は苦境に立たされるんですが、
「大河のうた」でも、結局お父さんは頼りになりませんでした。あーぁ。
ここでのお父さんの病床のシーンは(意識しているのか)一作目の娘の病床シーンと
同じアングルなので、またしてもイヤな予感がします。

二作目は、田舎の村が舞台だった前作とはガラッと雰囲気が変わり、
ガンジスでの沐浴シーンからはこの国の人々の信仰心を垣間見る事が出来る気がします。
オプーの(親からの)旅立ちが描かれてるこの作品では、
母親の末路と、彼女が前作で伯母にした仕打ちを関連付けて考えてしまいました。

三作目「大樹のうた」は、オブーの花嫁がとても美しく、そこに到るまでの展開も意外でした。
初々しい彼女が恥じらう様子、結婚相手の家を初めて見て自分の境遇に涙する様子、
しっかりを家事を切り盛りする様子、夫に甘える様子等、すべてが好ましく感じられたので、
もう少し彼女を見ていたかったなぁ。

オブーは、姉→母→妻と、対象を変えながら相手に支えてもらって立っている人物という
印象が私にはあります。なので、今ひとつ彼には感情移入できなかったんです。

ですが、このラストはとても良いですね。
それまで根無し草のような生活を送っていた彼も、守るべき存在に巡り合い、
大地にしっかり根を張り成長していくのかもしれないなぁと感じさせます。

また、劇場上映してほしい映画です。