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ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「白夜」〜乾いたタッチ〜

本編上映前に、ミランダ・ジュライの新作映画「ザ・フューチャー」の
トレーラーが流れてたけど、やっぱりちょっとヘンテコリンな感じで気になる。
公式サイト:hhttp://www.the-future-film.com/

彼女の書いた短編が面白そうなので、図書館で予約してみました。
フランク・オコナー国際短篇賞受賞作という事です。
(一昨年初めてオコナーの短編集を読んだんですが、味わい深くてすこぶる面白かったので)

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(2010/08/31)
ミランダ・ジュライ

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今日の映画は、これまで上映される事が少なかったというロベール・ブレッソンのこの作品。

REVEUR.jpg

公式サイト:http://www.byakuya2012.com/#id77
↑素敵なサイトです♪

監督・脚本:ロベール・ブレッソン
原作:ドストエフスキー
撮影監督:ピエール・ロム
ギャング映画の撮影:ギスラン・クロケ
録音:ロジェ・ルテリエ
音楽:ミシェル・マーニュ、グループ・バトゥーキ、クリストファー・ヘイワード、
   ルイ・ギター、F・R・ダビド
美術:ピエール・シャルボニエ
編集:レイモン・ラミ
(1971年 フランス/イタリア 83分)
原題:QUATRE NUITS D'UN REVEUR

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
画家のジャックは、ある晩、ポンヌフで思い詰めた表情をしている美しい女性マルトと出会う。
翌晩、お互いの素性を語り合うジャックとマルト。ジャックは孤独な青年で、
素敵な女性との出会いを妄想してはそれをテープレコーダーに吹き込んでいた。
一方のマルトは恋した相手に「結婚できる身分になったら一年後に会おう」と去られていた。
(公式サイトより転記させていただきました)

ほとんど予備知識もなく、ブレッソンの映画という事しか頭に入ってなかったから、
「あの白夜かっ!」と気がついたのは、ポンヌフ(橋)で話が展開されだしてから。
“あの”とは、マストロヤンニとマリア・シェルが出てた、ヴィスコンティの映画の事なのですが、
あまりにもテイストが違うからなかなか気がつきませんでした。
そっかー。これってドストエフスキーが原作なのねん。

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マルチェロ・マストロヤンニ、マリア・シェル 他

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ヴィスコンティ版は、マストロヤンニが哀しくて可哀想〜なイメージと
雪が降る(やったような。。。)寒い、でも美しいモノクロの映像の印象が残っています。

が、こちらはセンチメンタルな部分があまり感じられない、
もっと乾いた感じなんですよ、全体的に。ブレッソンらしい言えるのかもしれません。

という訳で、最初はなんの映画かさっぱりわからないまま見ていたので、
主人公のジャックが、なんだか怪しい人に見えました。

ブレッソンの映画恒例というか、演者はプロの俳優ではなく素人だと思うのですが、
ジャック役の人は、トリュフォーの映画で何作もアントワーヌ役だった
ジャン=ピエール・レオに顔が似ていて、彼の背をすごく高くした感じです。

で、背がムダに高いというか、逆にそれが不気味な印象を見る者に与えるのです。
歩き方が全くエレガントじゃなくて、地に足がついていないフワフワした感じ。
この歩き方を見ているだけで、現実と折り合えない夢想しがちな青年というのが
わかる気がします。

なので、最初にジャックがヒッチハイクで家族連れの車に乗せてもらった後、
なんの説明もなく、田舎の風景の中でご機嫌に鼻歌なんか歌ってる様子を見て
「まさか、この青年があの家族を全員殺しちゃったなんていう事はないよね」
なんて想像してしまいましたよ。
もちろん、あの「白夜」なので、そんなホラーな展開になるはずもなく。ハハハッ

それでもジャックは、街で見かけた女性にすぐ胸をときめかせ、
妄想を膨らませてテープに録音するという、かなりマニアックな青年。
特にバスに乗りながら、「マルト」と吹き込んだテープを再生する様子には引きました。
この青年がストーカーになるという心理サスペンスで一本映画が撮れそうなくらい、
かなり不気味です。

しかし、そこは芸術家の夢想という事で、もちろんそんな怖い展開になるはずもなく
マルトとの別れさえもサラリとした様子で受け入れ、まるで自らの創作意欲を
掻き立てる糧として、なんなく消化している様にも見えるのです。

マルトとジャックの間で、一種一方通行とも言えるような会話が繰り広げられて、
なんだかおフランス的やなぁという印象です。
ロシア(ドストエフスキー)やイタリア(ヴィスコンティ)とはまた異なる
お国柄という事も関係しているかもしれません。

この映画がつくられたのは、ヒッピーウーブメントの最中という事もあってか、
ストリートミュージシャンが多く出てきて皆、英語の歌詞で歌っています。
時代の雰囲気が伝わってくる作品です。

監督の個性を感じさせるちょっと風変わりな、でも美を感じさせる映像。
特に夜のパリはハッとさせられる程、美しく撮られている。
ブレッソンは、観客に迎合することなく自分の世界を表現した映像作家やなぁと思います。

それにしても、プレミア上映会のあのくだらん映画(“映画”中“映画”)は
何かを示唆してたのかしらん?!

梅田ガーデンシネマにて鑑賞。