ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「さあ帰ろう、ペダルをこいで」 〜バッグギャモンに人生を学ぶ〜

The world

公式サイト:http://www.kaerou.net/

監督・脚本:ステファン・コマンダレフ
原作・脚本:イリヤ・トロヤノフ
脚本:デュシャン・ミリチ、ユーリ・ダッチェフ
(2008年 ブルガリア/ドイツ/ハンガリー/スロベニア/セルビア 105分)
原題:SVETAT E GOLYAM I SPASENIE DEBNE OTVSYAKADE

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
子どものころ、両親と共に共産党政権下のブルガリアからドイツへ亡命した
アレックス(カルロ・リューベック)は、25年ぶりに帰郷する途中、
交通事故に遭い両親と記憶を失ってしまう。
そんな彼を案じてブルガリアからやってき祖父バイ・ダン(ミキ・マノイロヴィッチ)の提案で、
二人はタンデム自転車でヨーロッパ大陸を横断しながら祖国ブルガリアを目指す旅に出る。
(シネマトゥデイより転記させていただきました)

飄々とした様子だが実は信念を持つ男、ミキ・マノイロヴィッチが演じるのはそんな爺さま・バイ・ダン。
彼の表情一つ一つが味わい深くて、この鷹揚な爺さまには誰もが好感を持ってしまうのではないでしょうか。

バイ・ダンはバッグギャモンの名手なんですが、様々な場面でキーとなるのが
このボードゲーム。ゲームに望む心構えは、人生に対するそれと通じるものがあります。

バッグギャモンの勝ち負けは、時の運と自分の才覚次第。
負けを、サイコロのせい・運のせいにしない。
サイコロを振るのは自分、だから自分のせいなのだ。

記憶を失ったアレックスは、最初バイ・ダンを敬遠していますが、
バッグギャモンを通して二人はお互いの距離を縮め、やがて絆を深めていくのです。

孫と一緒に里帰りするために、バイ・ダンが用意したのはダンデム自転車。
アルプス越え(?)はかなりキツそうやけどこんな旅、いいなぁ。憧れます。

この二人の旅と、20数年前の親子3人の亡命の旅が平行して描かれますが、
自分たちのペースで旅をする現在と、自由を求めて必死に先を急ぐ過去との対比によって
ソ連の衛星国に住む反体制派の人々がたどった、過酷な運命のようなものが映し出されます。

難民収容所で仲良しだったあの少女の一家には、どんな未来が待ち受けていたのでしょうか。
そして無事西ドイツに渡った家族にとっても、その後の人生は厳しいものだったのかもしれません。
描かれていないそれらの部分について想像する時、何かホロ苦いような気持ちを感じます。

国家から不当な扱いを受けても決して屈しないバイ・ダンの逞しさ、
自分の振るサイコロに身をゆだねる潔さと楽観主義が、見ていて爽快なので、
この映画は決して重さを感じさせないのかもしれません。

最後の勝負、あのサイコロの目の出方にはかなり無理があるけどそれもご愛嬌かな。
「人間技とは思えん」て、そりゃそうやんね。

♪名人も初心者も楽しめるバックギャモン♪という歌が出てきますが、
今回、がぜんこのボードゲームに興味を持ちました。
「世界でもっとも遊戯人口が多い」と映画の解説ページにはありましたが、
私の周りでバッグギャモンをしている人がいないので、全くノーマークでしたよ。

シネマート心斎橋にて鑑賞。