ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

セントアンナの奇跡

監督:スパイク・リー
(2008年 アメリカ/イタリア)

【ストーリー】
1983年、平凡な黒人の郵便局員が客を射殺する不可解な事件が発生。
この事件の背景には、第二次世界大戦中のイタリアでのとある出来事が隠されていた。
黒人だけで組織された“バッファロー・ソルジャー”の4人の兵士は部隊からはぐれ、
イタリア人の少年(マッテオ・シャボルディ)を保護する。
4人はトスカーナの村でつかの間の平和を感じるが、ナチスの脅威はすぐそこまで迫っており‥。
(シネマトゥデイより転記させていただきました)

「父よ。彼らをお赦しください。彼らは、何をしているのか自分でわからないのです。」

オープニングクレジットで十字架が効果的に使われている。
人間の罪の愚かさ、それに対する神のさばきの厳しさと愛の豊かさ、
そして救いの確かさといったものの象徴でもあると考えられる十字架から、
この映画の背景にあるものが感じとれます。
カソリック系の学校出身のくせに信仰心のない私は、
絵的に可愛いなぁー、シンプルでおしゃれだぁーなどと単純に思います。
そうは言ってもある種神聖な気分になるというのが正直なところですが。

めちゃ久しぶりにスパイク・リー監督作品の鑑賞となりました。
この作品に関しても多少の気負いは感じられるものの、テーマがわかりやすいということと
なんといってもその思いがこちらにビシバシ伝わってくる(それが重要ですよね!)という
忘れがたい一本となりました。

戦闘シーンではけっこうリアルな死体描写などがありますのでご注意を。
それにしても、バッファロー・ソルジャーの兵士4人が魅力的でカッコいい。
中でも、ヘクター・ネグロンを演じるラズ・アロンソは超クール!で久しぶりときめいてしまいました。
彼みたさに再鑑賞という可能性も大いにあるなぁ。

アンジェロとトレインの存在がこの映画にファンタジーっぽさを与えている。
イタリアの少年子役には今までさんざんしてやられて(?)いるんで用心してましたが、
またしてもまんまとはまってしまいました。ヤレヤレ。(笑)

チラシに「実話からうまれた<奇跡>の物語」とありますが、物語自体はもちろんフィクションです。
当時のイタリアの時代背景、そして第92歩兵師団がイタリア戦線で戦ったことは事実です。
黒人部隊を描いた映画といえば「グローリー」しか知らないですね。これは南北戦争での話ですが。
「ソルジャー・ストーリー」はちょっと意図するところが違う気がするし。
これまで映画でバッファロー・ソルジャーが描かれてないというのは、不思議な気がします。

また、サンタ・トリニータ橋の爆破やセントアンナの大虐殺については史実として記録されてます。
この頃のイタリアでは、ドイツ軍による民間人の虐殺が他にも行われていた様です。
しかしこういった戦争犯罪を行った人物たちの何人かは、後にアメリカの諜報部員として雇われ
その罪を問われる事なく過ごしたのかもしれないと考える時、アメリカという国の矛盾を感じますね。

ラストシーンを観て「ショーシャンクの空に」を思い出した。ある意味ちょっとベタで映画的な終わり方。
けど、163分という長さを感じさせない物語がそこにはありました。

テアトル梅田にて鑑賞。