ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

胡同の理髪師

監督:ハスチョロー
(2006年 中国)
原題:剃頭匠/THE OLD BARBER

【物語のはじまり】
北京の胡同の古い家に、93歳のチンお爺さんはひとりで暮らしている。
窓から朝日の差し込む6時には目覚め、入れ歯をはめ、鏡の前で白髪にクシを入れる。
今朝は、毎日きっちり5分ずつ遅れる時計を修理に出そうと思い立った。
(公式サイトから転記させていただきました)

実際に93歳の理髪師チン・クイさんが主演されているこの映画、
何か滋養のあるものをとった時の栄養分みたいなものが、
じわじわと心地よく心に染みわたってくるような作品です。

胡同(フートン)は北京の旧城内にある伝統的な家屋が立ち並ぶ街。
そこに暮らすチンお爺さんや周りの人達の日常風景を描いているのですが、
このチンさんの生きる姿勢というか暮らしぶりがとても清清しい。

理髪師というのは、地味ながらも客には腕の違いがはっきりとわかる職業ですよね。
今まで3度程“顔そり”というものを理容師の方にお願いした事がありますが、
上手い理容師の方には本当に尊敬の念を抱きます。気持ちいいんですよね!とにかく。
そういう人は道具(カミソリ)等も入念にお手入れしているイメージがあります。

と、話を戻してチンさんは淡々と仕事をこなしていますが、その仕事の丁寧さは
おのずと画面からも伝わってきます。カミソリを持つ姿を安心して見られたのは
スウィーニー・トッド」と対照的やなぁ。(^-^;A

そんなチンさんは“職人”としてだけではなく、いろんな面でまっとうにそしてシンプルに
よけいなものをそぎ落として生きてきた人であり、それが顔ににじみ出ているんですね。

また、出演者の人達はほとんどが素人という事ですが、それがなんともいえない味わいを
醸し出しています。先日見た「トゥヤーの結婚」でもそうでしたが、等身大で演じる素人の
人達の素朴さとリアリティにはこちらを物語に引き込むと同時にホッとさせるものがあり、
その作品に愛着を持たせるんです。

近代化によって消えていく運命にある胡同という街、そこに住む人々への愛惜も感じられます。
登場する猫の使い方もあっさりと、けど印象的でグッときました。素敵な映画ですね。
もう一度観に行こうかな。。。

十三第七藝術劇場にて観賞。