ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

僕がいない場所

監督:ドロタ・ケンジェルザヴスカ
(2005年 ポーランド)
原題:JESTEM/I AM

孤児院に預けられているクンデル(ピョトル・ヤギェルスキ)は、
将来詩人になるという夢がある。
ある日、孤児院を脱出し母親の元へ帰ったクンデルだったが。

自然の光と影。美しい映像の中で、なんとも残酷で哀しい現実。

映画に登場する少年少女たちが素人の子供達らしいんですが、
ナチュラルで巧いんです。クンデルは小さな子供の愛らしさが抜けた、
ちょっと生活感のしみ出した大人びた表情。彼に好意を寄せる少女は、
無邪気でちょっと哀しい顔をしている。クンデルが彼女をたしなめるシーン等は、
ちょっとした頼もしい“男”の顔になっていて、素敵。
自然とこの二人を応援したくなる。いいキャスティングですね。

そんなクンデルも、母親に甘える時の表情は子供そのもの。誰かに愛して欲しい、
そう願う子供達を何も言わずに抱き締めたいと、またしても自分勝手で感傷的な気分に
陥ってしまいました。

今さらながら、子供が親の愛情を渇望するのはしごく当然な事なんですが、
それに応えられる親は果たして今の日本でも、どれほど存在するんだろう。。。
なんて漠然と考えていた。

もちろん、この映画のようにあからさまに親に拒否される訳ではなく形だけは
家族として整えてみても、内実は他所からはわからない。
子供の虐待のニュースを耳にしたり、余りにも無関心な親を目にする時、
その親自身の抱えている精神的な問題をあれこれと想像してしまいます。

話を戻して、マイケル・ナイマンの音楽は悪くないんですが、
もう少し音の少ない作りの方が好みでした。その方が、自然なタッチの
美しい映像が生きると思われるんですが、どうでしょうか?

第七藝術劇場にて鑑賞。