ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「顔たち、ところどころ」“アート”は楽しい!

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公式サイト:http://www.uplink.co.jp/kaotachi/

脚本・監督・出演:アニエス・ヴァルダ、JR
製作:ロザリー・バルダ
共同製作:チャールズ・S・コーエン、ジュリー・ガイエ
(2017年/フランス/89分)
原題:Visages Villages

※ネタバレを含みます

【ストーリー】
映画監督アニエス・ヴァルダとアーティストJRが、フランスの地方をめぐりつつアート作品を作っていく、ロードムービー

 

芸術がスーッと気持ちに入ってくる感覚、そして圧倒的なセンスの良さ!
もう一度見に行きたくなるような、温かさを感じる映画でした
個人的には、アニエスのドキュメンタリーは眠くなる傾向があるんですが、今回は一瞬だけ(笑)
「計画しない」と言いつつ、結構作り込んでる?と思いますが、やっぱりJRの存在は大きかったよ!


フライヤーを見ただけでは、具体的にどんな映画かわかりにくいかもしれませんね
JRというアーティストを私はこの映画で初めて知ったので、アニエスと一緒にどういったモノを作るのか、予備知識なしで見始めました

冒頭、この二人の出会いを語る映像から溢れるポップな雰囲気は、アニエス・ヴァルダが持つソレと同じ
イギリスの毒を含んだユーモアとは違い、お茶目で可愛らしい

 

二人は田舎で出会った人々を撮影し、顔写真を拡大プリントし、壁などに貼り付けていきます

「顔」は、何かを語りかけてくる
というか、クローズアップされた顔を見た時、人はそこから何かを感じたくなる習性があるのかもしれません
大きく引き伸ばされた「顔」からは、パワーを感じ惹きつけられます

閉ざされた元炭鉱の町、一人で広大な農地を耕す人、忘れ去られた廃墟の村
それぞれの場所で出会う普通の人たちの魅力を引き出す、そんなやりとりや作業の様子も楽しくて、その場に参加したい!と前のめりに見ていました

撮る方も、撮られてる方も、そして見ているこちらにも力を与えてくれる、そんな「芸術」は人に不可欠なもの、とあらためて感じる瞬間
一夜にして波に流されてしまう作品の儚さ、これもまた良いのです

港湾労働者達へのインタビューでは「なぜここに女性がいないの?」とフェミニストらしいアニエスの率直な言葉
そして彼らの妻達を被写体として撮る場面では、それまでとは違うピリッとした空気が流れていて、一瞬芸術家の「エゴ」のようなモノを感じます

 

ラスト、ゴダールとのエピソードはアニエスの悲しみが伝染し、それまでの映画のトーンとは違ってきたと思いきや、JRの優しさにこちらまで救われた気分
最後のショットも美しかったなー

 

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ところで入場時にいただいた紙、これは来場者プレゼントの「オリジナルブックカバー」ではないと思いますが、折りたたんでブックカバーにしたら結構可愛くて使えます


シネ・リーブル梅田にて鑑賞