ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「スリー・ビルボード」〜早くも今年一番の映画、この厚みある描き方が好き〜

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公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/threebillboards/
※音声が出ますのでご注意ください


脚本・監督・製作:マーティン・マクドナー
製作:グレアム・ブロードベント、ピート・チャーニン
撮影監督:ベン・デイヴィス
音楽:カーター・バーウェル
(2017年 制作 116分)
原題:THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI

※ネタバレを含みます

【ストーリー】
アメリカのミズーリ州
田舎町を貫く道路に並ぶ3枚の広告看板に、地元警察を批判するメッセージを出したのは、7カ月前に何者かに娘を殺されたミルドレッド・ヘイズ(フランシス・マクドーマンド)
何の進展もない捜査状況に腹を立てたミルドレッドがケンカを売ったのだ
(公式サイトより転記させていただきました)


グイグイ引き込まれる、先の見えない展開
底辺に流れる緊張感、なのにユーモアを感じさせる

 

マクドーマンドが主役だし、クスッと笑えるところもあるコーエン兄弟ばりのクライムサスペンスかと思いきや。。。

話が進むにつれ、温かなヒューマンドラマ的要素も感じさせられ
見ている側は「人を許すとは」などという事に、思いを馳せてしまうわけです


人の描き方が薄っぺらくない、見応えのある作品でした

 

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娘を殺されたミルドレッドを主とした群像劇で、警察署長ウィロビー(ウディ・ハレルソン)や、巡査ディクソン(サム・ロックウェル)の人生も思わぬ方向に展開して行きます

ミルドレッドの娘に対する「後悔する気持ち」を軸に話を進めるのではなく、彼女の怒りの矛先が地元警察へと向かう事が中心になっているところが良いですね
母親が後悔の念に苛まれてウジウジとした展開になる。。。なんてちっとも面白く無いですからね(笑)

そんなミルドレッドの出した広告は、直接ウィロビー署長を名指ししたものでした
しかし、ウィロビー(ウディ・ハレルソン)は人格者で捜査に手を抜いているとは思えないのです

ここら辺が西洋社会っぽいのかなーと思うのですが、日本だったらまず名指しは無いですよね
責任の所在をはっきりさせるところが、アメリカらしいのか、はたまたミルドレッドらしいのか?

人気のある署長を攻撃したものだから、逆にミルドレッドは非難されてしまいます
アメリカ南部田舎町の閉塞感!をビシバシ感じる展開です
広告を良く思わない歯医者の攻撃に、ミルドレッドが反撃するシーンには笑ったけど、そんな彼女を放置しておいて本当に良いのか?とちょっと心配になってしまいました

 

ここに絡んでくるのが、人種差別主義者のディクソンです
いやー、最低なヤツなんですよ
すぐ暴力振るうし、母親のいいなりで、一番悪いのは仕事をしないこと!
ミルドレッドの広告、ディクソンの名前でも良かったんじゃ無いの?と一瞬思いますが、彼はたかだか巡査ですからねー

しかし、このディクソンが後々キーパーソンになるのだから、面白い映画です

彼が運び込まれた病室で、広告屋のレッド(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)の親切に直面するシーンは、可笑しくて、すごくジンワリきてしまいます
涙誘われるような展開にやられました

 

ミルドレッドの元夫チャーリー(ジョン・ホークス)や、彼女に好意を寄せるジェームズ(ピーター・ディンクレイジ)のキャラクターもすごくイイ!
ジェームズみたいな男性は、すごく好きだな〜私

 

容疑者と思われた人物が、過去にイラクに派兵されたいたらしいなど、アメリカの暗い闇の部分も感じさせながら、最後には温かな気持ちにさせるこの不思議な映画にすっかり魅せられました


TOHOシネマズ梅田にて鑑賞