ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「ローマ法王の休日」 〜自分の弱さも受け入れたい〜

HABEMUS PAPAM

公式サイト:http://romahouou.gaga.ne.jp/音が出ます!

監督・脚本・製作:ナンニ・モレッティ
脚本:フランチェスコ・ピッコロ、フェデリカ・ポントレモーリ
撮影:アレッサンドロ・ペシ
美術:パオラ・ビザーリ
衣装:リナ・ネルリ・タヴィアーニ
音響:アレッサンドロ・ザノン
ラインプロデューサー:ルチアーノ・ルッチ
アシスタントディレクター:バーバラ・ダニエル
編集:エズメラルダ・カラブリア
音楽:フランコ・ピエルサンティ
製作:ドメニコ・プロカッチ
(2011年 イタリア/フランス 105分)
原題:HABEMUS PAPAM

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
ローマ法王が亡くなり、新しい法王を選出するため各国の枢機卿がヴァチカンに集められた。
全員が心の中では法王に選ばれないようにと祈る中、
誰もが予想外だったメルヴィル(ミシェル・ピッコリ)が新法王に選出される。
サン・ピエトロ広場に集まった群衆たちを前にバルコニーで
就任演説をしなくてはならないメルヴィルだったが‥‥。
(シネマトゥデイより転記させていただきました)

後々の上映が決まっていたので、イタリア映画祭ではパスした映画。
楽しみに、待ってました。

最初に言っておきたいのは、ハハハと笑ってあ〜っ面白かったと終わる
コメディ映画ではないということ。
あのトレーラーではそんな風に誤解する人が多くても、仕方ないかもしれませんね。

ローマ法王が死去した後に行われるコンクラーヴェ(教皇選挙)。
この“コンクラーヴェ”を耳にする度、“根競べ”を連想するのは
私だけじゃないはず。(ですよね?!)

選挙は案の定、有力な各候補が必要な得票を得られず、なかなか結果が出ません。
何やら談合めいたやりとりの後、ダークホースのメルヴィルが選ばれるのですが、
彼の表情からは、あまりにも急な展開へのとまどいが感じられます。

このコンクラーヴェのくだりは、コミカルです。
「どうか私が選ばれませんように!」と祈る枢機卿達。
投票用紙に名前を書いては消す枢機卿や、隣の用紙を覗き見する枢機卿など。
このおじいちゃん達は、大いに迷う子羊達という感じで実に人間らしくて可愛い。
やぁー、おじいちゃんフェチにはたまらない映画かも?!

バチカン宮殿内で法王に対応するセラピスト役で、モレッティ自身も登場します。
いざ心理療法を行おうとしても、バチカンの決まりごとが障害になり事はうまく運びません。
この辺の描写はちょっと皮肉っぽいですが、くだらなくて笑ってしまいました。

セラピストいわく「聖書の言葉の中には、多くの鬱病の症状がみれらる」と。
なるほど、言われてみるとそういう捉え方もあるなぁと思えてくるから不思議なものです。

効果が出ないせいか、改めて街のセラピストにかかることとなったシークエンスあたりから
法王が、かつては役者を夢見ていたことがわかってきます。
芝居を語るとき、芝居にふれている時のメルヴィルの楽しそうな顔が印象的です。

ポイントとなるのは、チェーホフの「かもめ」。
ざっくりとした物語しか知らないので、俳優志望の登場人物が挫折する部分や、
自分の使命を見失うといったところが重なる。。。。という想像がつく程度です。
そのセリフは結構登場するので、あー読んどけばよかったなと思いました。

そして、ラスト。少し驚きましたが、嬉しい驚き。
「やればできるはず」とか「がんばれ」なんていう、アメリカ映画的ごり押しな
メッセージにはちょっとうんざりなので、このホロ苦いラストは好み♪
むりやり丸くおさめないところが良いです。というか、
自分の弱さを認める、出来ないことを認めるという事は、逆にものすごく
勇気のいる事やと思うので、このメルヴィルの態度には好感が持てました。

映画の中で流れる“Todo Cambia”(トード・カンビア)の歌詞にもあるように、
「世界が変わっていくように、わたしが変わっていくのも不思議ではない」のですね。

ところで現ローマ教皇ベネディクト16世ですが“ベネディクト”と言えば
ベネディクト・カンバーバッチ主演のBBCドラマ「シャーロック」。
(我ながら、ちょっと強引な展開‥‥)シリーズ2も面白いですね。
8月5日(今週の日曜日)で終わってしまうので、早くもシリーズ3が待ち遠しいです。
後は、NHK(BSプレミアム)さんが、字幕放送で再放送してくれれば良いんですけどねー。

大阪ステーションシティシネマにて鑑賞。