ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

ルイーサ

luisa

公式サイト

監督:ゴンサロ・カルサーダ
脚本:ロシオ・アスアガ
製作:オラシオ・メンタスティ、エステバン・メンタスティ、アントニ・ソーレ、ハウメ・ソーレ
撮影:アベル・ペニャルバ
録音:セルヒオ・ファルコン
オリジナル楽曲:スーペル・チャランゴ
(2008年 アルゼンチン=スペイン)

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
ブエノスアイレスで猫のティノと暮らすルイーサ(レオノール・マンソ)。
夫と娘を失ったつらい過去をひきずりながらも、
仕事を2つ掛け持ちして規則正しい生活を送っている。
人付き合いも人ごみも大嫌い。
ある朝、ティノが死に、同じ日に仕事を2つとも解雇される。
手元に残ったのは、わずか20ペソ(約500円)!
途方にくれながらも、初めて降りた地下鉄の駅でヒントを得て、
ティノの埋葬費を稼ぐため、ついに行動を開始する。
(公式HPより転記させていただきました)

アルゼンチン映画といえば『瞳の奥の秘密』が記憶に新しいところですが、
『今夜、列車は走る』『オリンダのリストランテ』 、『ボンボン』等、
思い返してみればちょっと風変わりで味わい深い作品が多い気がします。

この作品のちょっとハズれた(ハズした?)感じも、なかなかユニークです。

霊園に勤めるルイーサは、几帳面な性格でいかにも人付き合いが悪そう。
そんな彼女が家の中でモップ兼用(?)のスリッパを履いてたり
(これは猫の毛の掃除用やったのか、ティノが死んでからは履いてない)
雇い主でもある女優が留守の間に、彼女の高級化粧品を使ってみたり。
そんなギャップが可笑しい映画の始まりでしたが、話が進むにつれ
ルイーサはただの真面目な老女ではなかったことが判明します。

それは、彼女が全くの世間知らずで突飛な考えの持ち主!ということ。

朝も暗いうちから家を出て着いた頃にはすっかり明るくなってる位、
長い間バスに乗って行く勤め先は、見るからに遠い! こんなに真面目に
ずっと働いて一人で生きてきたルイーサなんやから、人並みにはしっかりしてるはず。

そう思い込んでるこちら側の気持ちをバッサリと裏切ってくれるんですよね。
失業した後の彼女が何かやろうとする度に、これは何か深い考えがあるに違いない、
といつまでも期待した自分がアホやな〜と思います。

アルゼンチンには雇用保険も職業訓練のサポートもどうやらなさそうですが(違ってるかも)、
それ以上に彼女の給料遅延や退職金の規定がどうなってるかが気になって気になって。

それにしても、ある時点からルイーサがかなり暴走しますね〜。
霜だらけのフリーザーに強引にネコをねじ込むショット(オカシイ〜)なんかは、
食事の度に口元をナプキンでぬぐってたあの神経質な人と同一人物とは思えない。
次の仕事を探そうとせずに、何故か物乞いを始めるルイーサにはちょっと感情移入できなかったけど。
なんで中国の幸運のカードを売ろうと思います? このカードも後々いい小道具になるんですが。

物乞いで知り合ったオラシオ(ジャン・ピエール・レゲラス)やアパートの管理人
ホセ(マルセロ・セレ)と、本音で話し合うことができたあたりから彼女の人生には変化が現れます。
いかにして人と関わっていくか、人生に大切なのはやっぱりそこなのかなぁと思います。
役者さんが味わい深くていいですね。ジャン・ピエール・レゲラスは本作品が遺作となったそうです。

帰宅後ちょっと調べてみたら「アルゼンチンでの年金支給開始年齢は男性65歳、女性は60歳、
基礎年金を受給するには30年間の保険料支払いが必要。」とあるので、
ルイーサは近いうちに年金生活か? とあくまでも現実に照らし合わせて考えてしまう私。

音楽が素晴らしくてウキウキしますよ、この映画。特にラストシーンがいい!

梅田ガーデンシネマにて鑑賞。