ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

バグダッド・カフェ ニューディレクターズカット版

バグダッド・カフェ 完全版 [DVD]バグダッド・カフェ 完全版 [DVD]
(2003/04/25)
マリアンネ・ゼーゲブレヒト

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↑こちらは、オリジナル版よりも長いノーカット版

監督:パーシー・アドロン
2008年(1987年) 西ドイツ製作
http://www.bagdadcafe.jp/

【STORY】
ミュンヘン郊外の田舎町、ローゼンハイムから観光旅行にやってきたミュンヒグシュテットナー夫妻は、
ディズニーランドからラスヴェガスの道中で夫婦喧嘩になってしまう。
夫と別れ車を降りたジャスミンは、やっとの思いでたどりついた、
さびれたモーテル兼カフェ兼ガソリンスタンド“バグダッド・カフェ"で部屋を借りようとするが、
女主人のブレンダは不機嫌な迷惑そうな表情を隠そうとしない。
(シネ・ヌーヴォの作品紹介より転記させていただきました)

1987年に製作された「バグダッド・カフェ」。その後、108分のノーカット版が上映された。
パーシー・アドロン監督自らが再編集、全てのカットについて色と構図(トリミング)を
新たに調整し直したのが、今回上映の「ニューディレクターズカット版」。
ちょっとセピアがかったような、生理的に気持ちがいい綺麗な色に仕上がっている。

目の前にひろがる荒涼とした大地。その乾いた空気感と、もえるような夕焼けにしびれる。

この作品、過去のリバイバル上映にも足を運んでいないので、劇場で鑑賞するのは初めてなんです。
出逢いは20年近く前。美容院でこのビデオが流れていて、その映像に強く心惹かれてました。
鏡の中の自分の姿よりも、映画の方が気になって仕方なかった事を覚えています。

その後ビデオやDVDで何度か自宅鑑賞はしていたものの、またまた劇場上映されるという事で
いそいそと行ってまいりました。

不安定なカメラアングルで撮られる、観光客らしい夫婦の喧嘩。
やがて、妻が車を降りスーツケースを引きずりながら歩き出す。
♪I am calling you♪ あぁ、この感じ。何回聴いても不思議な気持ちになるなぁ。
映画の始まりから、これだけどっぷりとその世界に浸れる作品も珍しい。

自分の価値観や文化とはあきらかに異なる存在であるジャスミンを、
ブレンダはまるで排除したがっているように見えますね。
心がささくれだってる彼女の様子が痛々しくも可笑しい。

ジャスミンが太っちょなドイツ女性というのが、ポイント。
ブレンダに怒られる彼女が、もじもじしながらその太った体を小さくする様子は可愛い。
綺麗好きな彼女が事務所を掃除する場面。彼女の脳内で展開されるイメージなのか、
梯子に腰掛け貯水槽(?)を巨大モップで拭くシーンは、あまりにも有名。
こういう、一度見たら頭に残るシュールなシーンがいくつか挟まれています。
まるで魔法のポットのような魔法瓶や、双眼鏡で様子をうかがうブレンダの夫など、
ちょっと不思議な存在たちもファンタジー。

異質な存在であるジャスミンとブレンダとの間にある緊張感。
そして、やがてジャスミンを受け入れようとするブレンダの心の変化。
ここから先、ブレンダの仕草や話し方がどんどん可愛く柔らかくなっていく。
彼女の心がほぐれていく感じ。

惜しい!と思うのは、この終わり方。なんか唐突すぎて余韻が感じられないんですよねぇ。
余韻が無くてもOKな作品とそうでない作品がある気がしますが、私にとってこの映画は後者のタイプなのかな。
それを差し引いても大好きな作品であることには間違いないんですけどね。

これまでこの作品を見て感じていたのは、とてつもなく大きく圧倒的な存在に包み込まれるような感覚。
その感覚がスクリーンで見るとより鮮明になりました。
そして、見知らぬ砂漠の地にたった一人、ストレンジャーになった気分が味わえます。

やっぱりこの歌があってこそかなぁ。

コーリング・ユー 〜バグダッド・カフェ ― オリジナル・サウンドトラックコーリング・ユー 〜バグダッド・カフェ ― オリジナル・サウンドトラック
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サントラジェヴェッタ・スティール

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