ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

サルバドールの朝

監督 マヌエル・ウエルガ
(2006年 スペイン/イギリス)

【物語のはじまり】
1970年代初頭、独裁政権末期のスペイン。
サルバドール(ダニエル・ブリュール)は権力に反発する仲間達と、
労働者闘争活動に資金を提供するため、強盗を繰り返していたが。

フランコ政権末期のスペインにおいて、正当な裁判もされないまま死刑を宣告された
サルバドール・プッチアンティックと周りの人達の戦いを描いた実話。

主役のダニエル・ブリュールには、ソフトな好青年というイメージを持っていました。
イギリス・コーンウォール(大好きなクロテッドクリームはここの特産らしい)が
舞台となった映画『ラヴェンダーの咲く庭で』でも
ポーランド人のもの静かなヴァイオリニスト役がしっくりきてたし。
この人『グッバイ、レーニン!』で有名になったんですね。また観ないとなぁ。
なんていうか、育ちの良さが垣間見える感じで、若者特有のガサツさとか
ギラギラした所があんまり見えないんですよね。

そんなわけで、過激な活動をしながらも普段は優しい好青年というサルバドールには
ピッタリではありました。ただ、サルバドールの思想というか哲学というか、
そういうものがあまり見えてこなかったという気もしました。
彼らが行っていた過激な活動は、労働者にもあまり支持されていなかった様で、
どこか甘えの感じられるサルバドール自身に共感できなかったのが残念。

前半は青春映画の様な展開。ノリノリで強盗なんかしちゃっていいのか!と
ツッコミを入れたくなるほど、罪悪感や深刻さがないんですね。キラキラと輝いて。
ところが。。。。
逮捕されてからの彼と家族(特に父親)との交流や、死刑を宣告されてから
奔走する弁護士達の様子等は、非常にリアリティのあるものでした。
不条理な状況での戦いが、やがてその後のスペインに何かしらの影響を与えたのかも
しれないと思いつつ、やりきれないものを感じてしまいます。
なんといっても、死刑方法が残酷でちょっと驚き。

フランコ政権の問題というものは現在のスペインの人達にとって、けりのついていない
わだかまりの様なものを感じさせものなんでしょうか?(スペイン政府は、
かつてフランコが行ったことを未だに否定せず却下も謝罪もしていないらしい)
昨日観た「スパニッシュアパートメント」でバルセロナの人達は
カタロニア(カタルーニャ)語にこだわってたし、なかなか興味深いところではあります。