ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

陸に上った軍艦

監督:山本保博
原作・脚本・証言:新藤兼人
(2007年/日本)

シネ・ヌーヴォにて鑑賞。

太平洋戦争末期の1944年、シナリオライターだった32歳の
新藤兼人(蟹江一平)のもとに召集令状が届く。
新藤は宝塚の海軍航空隊に配属されるが、すでにそこには軍艦はなく、
終戦まで新藤は海に出ることもなかった。
94歳の現役監督でもある新藤兼人の戦争体験を
ドキュメンタリー映像とドラマ映像の両方で振り返る。

こういう表現をしていいかどうかわかりませんが、
ユニークな戦争映画。

兵隊でありながら、実際に戦場に行っている訳ではなく、
まさしく自分の敵は自分が所属する軍隊である様な悲惨な状況。
こういう視点で描かれた戦争映画は初めて観ましたが、
いい意味で期待を裏切られた面白い作品でした。
リアルに、戦争の滑稽さや悲惨さが描写されています。

想像以上に馬鹿馬鹿しい軍事作戦等に思わず笑ってしまいましたが、
当時、不条理な状況にさらされていた人達の事を思うと
その後で、なんとも切なくやり切れない気持ちになります。

新藤兼人さんの語り口がまた、とてもいいんです。
素朴で押し付けがましく無く、でもすごく思いが伝わってくる。
ドラマ化された映像と、この語りの部分の両方がいいバランスで
成り立っている映画だと思います。たくさんの人に観て欲しいなぁ。