ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「マイ・ブックショップ」〜ビターな味わい〜

f:id:YURURI:20190402165126j:plain

公式サイト:http://mybookshop.jp/

監督:イザベル・コイシェ
製作:ジャウマ・バナコローチャ、ジョアン・バス、アドルフォ・ブランコ、クリス・カーリング
112分/2017年/イギリス、スペイン、ドイツ
原題:La libreria

※ネタバレを含みます

【ストーリー】
1959年のイギリス、海辺の小さな町に住むフローレンス(エミリー・モーティマー)は、亡き夫との夢だった書店を開こうとする。
町の有力者ガマート夫人(パトリシア・クラークソン)の嫌がらせに遭うが、ブランディッシュ氏(ビル・ナイ)に励まされ。。。。

 

本好き、イギリス好きのための、ほのぼのとした映画かと思いきや。
いやー、そんなのんびりした物語ではありませんでした。

村社会で起こる理不尽な出来事にイーッ!となります。
個人的にはめちゃ好みですが、スカッとハッピーな結末を期待する方には向かないかも。

 

原作はペネロピ・フィッツジェラルドの「ザ・ブックショップ」

ブックショップ (ハーパーコリンズ・フィクション)

ブックショップ (ハーパーコリンズ・フィクション)

  • 作者: ペネロピフィッツジェラルド,山本やよい
  • 出版社/メーカー: ハーパーコリンズ・ ジャパン
  • 発売日: 2019/03/01
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
 

こちらの翻訳本は発売されたばかりのよう。

 

同作家が1979年にブッカー賞を受賞した「テムズ河の人々」

テムズ河の人々 (1981年) (ダウンタウン・ブックス)

この群像劇はとても面白いけど、哀しくてラストもモヤッとした感じが残ります。
そして、真っ直ぐすぎるがゆえに物事がうまく運ばない人が出てきます。

 

この映画の主人公フローレンスも、人が良すぎるのです。
人を疑いうまく立ち回る、なんていう事ができない。
それだけに非常に魅力的な女性なのですが。

これまでは脇役のイメージが強かったエミリー・モーティマーが演じたのは、
ピュアで、理知的で優しくて穏やかで、その佇まいに品性を感じる女性。
こんな店主がいる本屋なら、常連になる!と思います。

「町の小さな本屋さん」
私自身は大都市に住んでいるので縁がないのですが、
その存在自体が今はもう、ほとんどないのかもしれませんね。
好きな本、良質な本を吟味して置く本屋さんは、小さくても良質な映画をかけ続けてくれる映画館と通じる部分もあり、無くなって欲しくない存在です。


ところで、あの偉そうなガマート夫人にも腹たちますが、
飛び抜けてムカついたのが、BBC職員のマイロ!
久しぶりに映画で、大嫌いなキャラクターに出会いました。

もったいぶった話し方に、自分では何も考えないかのような権威主義
その第一印象から胡散臭さを感じていただけに、フローレンスがあっさり信用してしまう事にハラハラしてしまった。

原作者のフィッツジェラルドはBBCで働いていた事があるようなので、その時周りにこの人物のベースとなるような人がいたのかもしれませんね。

 

永年邸宅に引きこもっている、ちょっと変わり者のブランディッシュ氏
どこかユーモラスに感じるのは、ビル・ナイが演じてるからかな。
彼とフローレンスの関係性がしみじみと、控えめで余韻がのこります。
それだけにまた、せつないのですが。

少女クリスティーンのまっすぐな眼差しも印象的でした。
彼女の起こした行動によって、ガマート夫人の野望は挫折したのかしらん?
やっぱり原作を読んでみたい。

その苦みばしった内容とは裏腹に、1950時代の英国らしいとても可愛いファッションや雑貨に目を奪われます。
そして、イギリスらしい景観と曇った空の下ならではの色彩に心惹かれるのです。

 

ブランディッシュ氏のリクエスト「たんぽぽのお酒」

たんぽぽのお酒 (ベスト版文学のおくりもの)

ここから少しだけ世界が広がるかもしれない、そんな映画はいいなぁ。

 

シネ・リーブル梅田にて鑑賞

4月第1週/第2週から公開(大阪市内)の映画で気になるのは

f:id:YURURI:20190405122933j:plain

会社の近く、藤田邸跡公園では桃の花が満開です。

 

f:id:YURURI:20190405203337j:plain

大川沿いは、桜が八分咲き。

花粉症の季節ですが「ガッテン」で見たとおり、鼻腔にワセリンを塗っているとかなりマシな気がします。思い込みもあるのかな?!


さて、今日を含めた週末と、来週末から大阪市内で上映される映画をチェックしたいと思います。

続きを読む

「ナディアの誓い」激しく心ゆさぶられる

f:id:YURURI:20190323131620j:plain

公式サイト:http://unitedpeople.jp/nadia/

監督:アルベール・デュポンテル
監督: アレクサンドリア・ボンバッハ
配給:ユナイテッドピープル
原題:On Her Shoulders
95分/ドキュメンタリー/2018年/アメリカ

 

【この映画について】
ISIS(イスラム国)による虐殺と性奴隷から逃れた23歳のヤジディ教徒、ナディア・ムラドさんを追ったドキュメンタリー

 

このドキュメンタリーを見て心ゆさぶられない人は、たぶんいないと思う。


ナディア・ムラドは2018年のノーベル平和賞受賞者であり、国連の親善大使です。
この映画はそうなる以前の彼女と、彼女をサポートする人々の活動を追うと同時に、その素顔にも迫っています。

「普通の村娘」でいたかったナディア、その細い肩にかかる重責に時にくじけそうになりながら、同胞たちの窮状を訴える彼女の姿に、何度も胸が熱くなります。

先日、2014年ノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイさんの初来日の様子を目にしたばかりですが、ものすごく対照的。
マララさんは故郷にいる時から自分の意見をブログで発信したりと、元々問題意識の高い人だと推測されます。

一方のナディアは、イラク北部の小さく静かなコチョ村で普通に暮らし、ISISの侵略以前は「世界で日々起こる争いや殺戮について、何も知りませんでした」と語っています。
そして、自分は活動家ではなく「難民」の一人だと。

映像を通して見る彼女の瞳には、常に悲しみと絶望感がやどっています。
時折不安にさいなまれ、老女のように疲れた表情をみせることも。

心に負った深い傷をさらけだすような体験(自分に起きた事を語る)を繰り返し行わなければならない、そんな状況から彼女が解放されるのはいつなんでしょうか。

今もISISに捕らえられた子どもや女性をはじめ、世界で絶望的な状況にある人達の事を思う時、その胸は張り裂けそうになっていることでしょう。

一方、ナディアの表情から色々なモノが伝わってくるだけに、感傷的な音楽を使う必要はないなーと思ってしまいました。


「世界に国境はない。あるのは人道だけ」

彼女が語るそんな世界の実現の為に自分には何ができるのか、そこから色々考えさせられます。

一人一人の思いはあっても、国際社会が具体的に動かない限り道は開けない。
そういう意味ではストレスを感じる映画ではあります。


ところで、ギリシャでルイス氏が何度も食卓のグラスを倒すのにちょっと笑ってしまいました。
こういうチャーミングな人が出てくると、人間もそう捨てたものじゃないとホッとします。
そして、ナディアをサポートするムラド氏の優しさにもジンとするのです。

 

THE LAST GIRLーイスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語―

THE LAST GIRLーイスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語―

 

辛いけれど、読みたい本です。

 

テアトル梅田にて鑑賞

3月第4週/第5週から公開(大阪市内)の映画で気になるのは

街中の花壇を見ても、春がもうそこまで! 来てますね

f:id:YURURI:20190323015547j:plain

アレルギーで鼻が詰まってても、沈丁花の良い香りはわかります。

嬉しいけれど、この先の暑い「夏」を想像して暗い気持ちになってる私は超ネガティヴだなー、やっぱり。

 

さて、大阪市内で今週末から&来週末から上映予定の作品をピックアップします。
(気になる映画だけ)

続きを読む

3月第2週/第3週から公開(大阪市内)の映画で気になるのは

f:id:YURURI:20190306134851j:plain

先日見に行った「天国でまた会おう」
素晴らしく私好みの映画でした。近々レビューをあげようと思ってます、、、たぶん


さて、大阪市内で今週末上映される作品と、来週末から上映予定の作品をピックアップします。
(気になる映画だけ)

 

続きを読む

2月第4週/3月第1週から公開(大阪市内)の映画で気になるのは

f:id:YURURI:20190222214740j:plain

最近愛用している小さめサイズのマイボトル

かばんの中で安定するこの大きさ、なめらかな口当たり、なかなかありそうで無かった気がします。

 

今週末&3月第1週から大阪市内で上映予定の映画、気になる作品はなんだったかな

 

※「ねことじいちゃん」(2/22〜)を追記しました

続きを読む

2月第2週/第3週から公開(大阪市内)の映画で気になるのは

今年も、ついに文旦の季節がやってきました!

f:id:YURURI:20190207181026j:plain

食べるのはもちろん、皮をお風呂に入れて香りを楽しめるのが良いのです♪


今週末&来週末から大阪市内で上映予定の映画、気になる作品はどんなんかな〜?!

 

追記:「ノーザン・ソウル」の上映館が間違ってました!

正しくは「シネマート心斎橋」です。申し訳ありません

 

続きを読む

1月第4週/2月第1週から公開(大阪市内)の映画で気になるのは

道端に咲いてた一輪の花

f:id:YURURI:20190122094457j:plain

毎朝、ここを通るのが楽しみになりました

 

さて、今日を含めた今週末から&来週末から上映の映画の中から、気になる作品をチェックします。

※「ひかりの歌」「ゴッズ・オウン・カントリー」「台北暮色」「愛と銃弾」を追記しました!

続きを読む

「刑事リバー」(River) 英国発スウェーデン行き

f:id:YURURI:20190113212320j:plain

企画・脚本:アビ・モーガン
演出:リチャード・ラクストン、ティム・ファイウェル、ジェシカ・ホッブス
(2015年制作 英国)
原題:River


昨年録画した「刑事リバー 死者と共に生きる」を、やっと見ました

2015年に英BBC Oneで放送された後Netflixで配信され、2018年秋にAXNミステリーで放映された、全6話です

主演は、ステラン・スカルスガルド(Stellan Skarsgård)
彼は死者と会話するリバー警部補の役

ユーモラスかつ、ゆるい感じでドラマは始まりますが、しばらくすると「あー!」と軽く驚かされます

スウェーデン出身の主人公で、なんといっても死者と会話するわけですから、根底にはどんよりとした空気が流れるわけです
でもこの暗さ、個人的にはすごく好きです

 

そんな中、相棒スティービーのキャラが明るくかつ、物語に影を落とすというアンビバレントな状況ですが、それについてここでは説明しないことにします

f:id:YURURI:20190113212405j:plain

スティービー役のニコラ・ウォーカーは、良い女優さんですよね
彼女が主役の「埋もれる殺意」(Unforgotten)のシリーズはメチャクチャ面白かった(早く第3シリーズ以降見たい!)

そういえば「埋もれる殺意」も相棒はインド系だし、ここでのもう一人の相棒アイラ(アディール・アクタル)もパレスチナ系、そしてリバー自身がスウェーデンからの移民です
地方とは違って、ロンドンはそういう状況が当たり前の都市なんですね

 

上司クリッシーには、「ファントム・スレッド」が記憶に新しいレスリー・マンヴィル

f:id:YURURI:20190113212442j:plain

この人見るといつも、フラン人女優カトリーヌ・フロと間違いそうになります

 

そして、リバーが読んでる本に登場する毒殺魔役にエディ・マーサンが登場し、不気味に彼につきまといます

 

こんな豪華キャスティングで見応えもあるドラマでしたが、犯人のもってきかたが少々強引というか、ちょっと無理矢理な感じがあったかなー。

それでも、他の刑事モノとは異なる個性をもったドラマだと思います
主役がステラン・スカルスガルドというのがいいですねー
どこか孤独を謳歌しているように見えるイギリス人の主人公ではなく、望んでないのに孤独というのが切実で哀しい
それだけに、ラストは目頭が熱くなってしまいました


そういえば「スウェーデン警察クルト・ヴァランダー」は、ロルフ・ラスゴードが主役を演じてたから面白かった
ぶよぶよの体でベッドシーンというのも、妙にリアルで(笑)

ところが、ケネス・ブラナー主演のBBC版「刑事ヴァランダー」は、空気感が違っててなんだか面白くない
妙にスカしてるヴァランダーなんて要らない!とか思ってしまうのも、私がブラナー嫌いだからかな?!

AXNミステリーさん、以前は「スウェーデン警察クルト・ヴァランダー」の放送してたのに、今は「刑事ヴァランダー」しか扱ってないのが非常に残念!
スウェーデン版の復活を望みます

「バハールの涙」 目を逸らしてはいけない

f:id:YURURI:20190119120424j:plain

公式サイト:http://bahar-movie.com/

監督:エバ・ユッソン
製作:ディダール・ドメリ
脚本:エバ・ユッソン、ジャック・アコティ
撮影:マティアス・トゥルールストルップ
(2018年/フランス・ベルギー・ジョージア・スイス合作/111分)
原題:Les filles du soleil

※ネタバレを含みます

【ストーリー】
夫と息子と幸せに暮らしていた弁護士のバハール(ゴルシフテ・ファラハニ) は、ある日ISの襲撃を受ける
男たちは皆殺し、女性たちは性的奴隷として売買され、少年たちはIS戦闘員として育成される
数か月後、バハールは人質にとられた息子を取り戻すため、女性武装部隊“太陽の女たち”を結成、最前線でISと戦う日々を送っていた
戦地で取材を続ける片眼の戦場記者マチルド(エマニュエル・ベルコ)は、そんな女性達の取材を続ける


強く美しい女性の姿を見るのが好きな人は必見!
そうでなくても、多くの人に見て欲しい映画

絶望的な状況に打ちのめされた女性達が、再び立ち上がり戦う姿が描かれます
その過酷さに押しつぶされそうな気持ちになりますが、鑑賞後は思いの外、前向きな気持ちになれる作品です


2018年のノーベル平和賞はコンゴで性暴力被害者の治療に当たるデニ・ムクウェゲ医師と、ISによる虐殺と性奴隷から逃れたナディア・ムラドさんの受賞でした
共に、世界における紛争下の性暴力や女性の人権の尊重について訴えている二人です

私が戦時下における女性への性暴力を初めて意識したのは、1900年代初頭のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争でした
初めて国際法廷で裁かれ明らかになったのは、「民族浄化」の名の下、セルビア人兵士に行われた集団レイプです。
その時は、もちろん衝撃を受けたのですが。。。

やはり現在進行形で起こっている問題は、もっともっと注目されるべきでしょう
そう言いつつも、どこか他人事として捉えている自分がいる、というのが正直なところですが。
だからこそ、女性達の凜とした美しさに見ほれてしまうとも言えるのかも

「人は希望や夢を見たいもの。悲惨な現実からは目を逸らそうとする」
劇中でそんな言葉をジャーナリストが語りますが、自分の日常とかけ離れた恐ろしい世界とは距離を置きたい、そんな潜在意識が働いているのかもしれません

しかし、、、、
それでもいいと思うのです
要は思考することをやめてしまわないことが重要
アンナ・ハーレントの言葉にも「私が望むのは、考えることで人間が強くなることです」と

ゴルシフテ・ファラハニ目当て(やっぱり綺麗!)でも、なんでも良いと思うのです
この問題について考え始める人が、少しずつ増えていくきっかけとしても重要な映画だと思います
にしても邦題、センスのかけらもない(笑)


ちなみに、ノーベル平和賞受賞者ナディア・ムラドさんのドキュメンタリー映画は、3月にテアトル梅田で上映されるようです


テアトル梅田にて鑑賞