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ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「はじまりは5つ星ホテルから」 〜幸せは人それぞれ〜

映画 は行

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公式サイト:http://www.alcine-terran.com/fivestar/
※音声が出ますのでご注意ください

監督・原案・脚本:マリア・ソーレ・トニャッツィ
(2013年 イタリア製作 82分)
原題:VIAGGIO SOLA

※ネタバレ含みます

【ストーリー】
フランス・パリ<オテル・ドゥ・クリヨン>をチェックアウトし、
タクシーに乗り込むイタリア人のイレーネ(マルゲリータ・ブイ)。
出発したはずの車をホテルの正面に戻し、フロントでそっと名刺を差し出す。
ホテルの従業員に“ミステリー・ゲスト”と呼ばれ恐れられるイレーネの仕事は、
世界中の5つ星ホテルに滞在し、適切なサービスかをチェックする
“覆面調査員”だった!
(公式サイトより転記させていただきました)

 

思ったよりも軽いタッチでそう深くないのですが(笑)、軽やかで楽しい作品です。

なにぶん自宅が大好きで出不精な人間なので、“ホテル”という空間に
それほど魅力を感じる方ではないのですが、“5つ星ホテル”という響きからは、
居心地の良い行き届いたサービスや、非日常を感じさせてくれるような空間、
そんなものを連想します。
この映画では、ホテルが本当に5つ星の基準に達しているかどうかを
調査する覆面調査員が、主人公のイレーネです。

意外だったのは、一通りの調査を終えた後に調査員の身分を明かして
責任者に直接報告するということ。なかなかシビアな仕事です。
フロントでは調査員の事を「ミステリーゲストがお越しです」と
支配人に取り次いでいましたが、本当にミステリー〜と言う名称で呼ぶんですね。

イタリア・トスカーナにあるフォンテヴェルデ・タスカン・リゾート & スパでは、
若いカップルが丁寧な扱いをされなかった事に関して
“5つ星ホテル”としてふさわしくないと、イレーネが苦情を言っていました。
ここは「その通り!」とちょっと胸のすく思い。

例えば若いから、場慣れしてないから、アジア人だからと、様々な要因で
サービス業の従業員から軽んじられる事はあると思うのですが、
プロとしてそれってどうなんだろう。。と前々から思っていました。
もちろん、このホテルの従業員の不親切な態度はあくまでも
フィクションだということを忘れてはいけないのですが(笑)

豪華なホテルを泊り歩く仕事をしている、そんな自分の人生を
まんざらではないと思っていたイレーネですが、
身の回りで起こった様々な出来事に、心がゆらぐのです。

モロッコ・マラケッシュのパレ ナマスカ(ゴージャス!)で
出逢った男性といい感じになった際の「君は魅力的な女性だけれど、
私はベテランの愛妻家だから」というやんわりとしたお断りの言葉も
そのうちの一つかもしれません。

元婚約者で友人の男友達アンドレア(ステファノ・アコルシ)に
交際し始めた女性との間の子供が出来た事にも、動揺します。
はじめは狼狽え、イレーネの仕事先まで相談に来たアンドレアでしたが、
彼の中でしだいに、生まれてくる子供の存在が大きくなっていくのです。
大切な友人アンドレアの交際相手を、こっそり観察しに行く
イレーネにはちょっと笑ってしまいます。

そして、ベルリンのホテル・アドロン・ケンビンスキーで
イレーネと意気投合した人類学者のケイトに起こった出来事。
ケイトの事を連絡する人物が、彼女の別れた夫だけだったという事に
イレーネは激しく動揺し、自分の身に置き換えて考えてしまいます。

ケイト役のレスリー・マンヴィルさん、どこかで見た事ある気がして
調べたら「家族の庭」(2010)でマイク・リー監督が、自己管理できず
けっこうグダグダの生活を送る女性として描いたメアリー役の人でした。
今回のいかにも切れ者、人生とは何たるかを悟ったようなケイトとは
180度違うタイプで、異なるイメージになりきる俳優さんのすごさを
改めて、認識。

「真の贅沢は生をまっとうする歓びで、ここ(ホテル)には真の人生はない」
というケイトの言葉も、イレーネに何か考えるきっかけを与えたようです。
私も、ケイトの「大切にしたいのは人との“ふれあい”」という言葉、
シンプルだけどスーッと胸に入ってきました。

あのベルリンのホテル、部屋ごとにコンシェルジュみたいな人が
付いてくるのは本当なのでしょうか? ケイト同様、私もたぶん
ほっといて欲しくて、居心地悪い事この上ないと思います。

さて、自分の人生に疑問を持ち始めたイレーネは、当然ですが
そうそうガラリと生き方を変える訳でもなく、生活のペースを取り戻します。
独身でも既婚でも、孤独かそうでないかは人によって異なると思うし、
幸せも人それぞれですものね。
自分らしく生きていく決心をしたイレーネに、エールを送りたいと思います。

梅田ガーデンシネマ にて鑑賞