ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

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「裁かるるジャンヌ」〜タイムリーな映画〜

裁かるるジャンヌ 2Kレストア版 カール・Th・ドライヤー DVD

「ゴーモン 珠玉のフランス映画史」公式サイト:http://gaumont-movie-2019.com/


監督:カール・テオドール・ドライエル
脚本:カール・テオドール・ドライエル、ジョゼフ・デルテーユ
撮影:ルドルフ・マテ
1928年製作/80分/フランス
原題:LA PASSION DE JEANNE D'ARC

※ネタバレを含みます


【物 語】
百年戦争においてオルレアンの地を解放に導いたジャンヌ・ダルク。
だが1431年、戦いで捕えられた彼女は、イングランドに引き渡され、異端審問を受けることになる。


年初から、強烈な出逢い
予想以上にすごい映画だった


1928年のカール・テオドア・ドライヤーの作品
サイレントかトーキーかとか、そんな事忘れるほどの迫力でした。
というよりも、サイレントだから、表情で語る映画だからこそ、このインパクトなのかも。

ほぼジャンヌの顔のクローズアップなのに、表情での表現が突出しているせいか、全く見飽きることがない。

サイレント映画終焉の時代に、こういう素晴らしく芸術性の高い作品が生まれた事、しかしそれが当時の観客に受け入れられまなかった(興行的に大失敗だったそう)事は、なんとも惜しまれる気がします。
しかしそれが復元され、大勢の人が観ることができるようになったのは素晴らしいことですね。

 

実際の裁判記録をもとに脚本が書かれたということですが、15世紀の書類ががちゃんと残ってるよう。
公文書をすぐに処分したとか平気で言っちゃう、どこかの国とは大違いですね。


物語はシンプルに見えて、 色々と考えさせられる問題を含んでいます。

 

私は中・高校と6年間キリスト教系の学校で、少し宗教を学びました。
その際「隣人への愛」といった道徳的な側面に理解・共感できる部分はありましたが、「福音」にはどうも馴染めなかったのです。
様々な「奇跡」が、どうしても信じられない。

なので、ドライヤーの「奇跡」を見た時、その結末の神々しさに感動しつつも、どう捉えていいか少々とまどいを感じました。
今作でも「聖ミカエルのお告げを聴いた」というジャンヌのストーリーに、正直乗れない部分はあります。

が、ここで描かれるジャンヌの信仰心、「神の啓示を受け」それに従う情熱や恍惚感、戸惑い、死への恐怖、達観など深層心理には、強く惹きつけられるのです。


また、看守達の下卑た笑い顔がおそろしい。恐怖でした。
高校の授業で、熱心なクリスチャンだった先生が、ジャンヌがドレス(スカート)を着用しなかった理由について話していたことを思い出します。

この、女性に対するセクシャルハラスメントと、時の権力者が司法を牛耳る構図、これは日本においても表面化してきてる問題で、私の中で妙にタイムリーでした。


それにしても、信仰に裏打ちされているとはいえ10代の少女が軍の指揮官として活躍したこと、後に復権裁判が行われ守護聖人の一人となっていることなど、そういう土壌があるフランスが羨ましい。
いやしかし、火刑はないよなー。それだけはイヤ!

 

この作品同様、裁判記録をもとに作られたロベール・ブレッソンの「ジャンヌ・ダルク裁判」も、いつか見て比べてみたい。


念願だった映画をやっと見ることができて、それが傑作だったんだから、今年は幸先いいわー。
感謝です、ハイ。


シネ・リーブル梅田 にて鑑賞