ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

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「雪の轍」 〜ゾッとすると同時に、愛おしさも感じる〜

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公式サイト:http://www.cetera.co.jp/h_arendt/
※音声が出ますのでご注意ください

監督・脚本:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
脚本:エブル・ジェイラン
(2014年 トルコ/フランス/ドイツ製作 196分)
原題:WINTER SLEEP

※ネタバレを含みます

【ストーリー】
世界遺産のトルコ・カッパドキアに佇むホテル。親から膨大な資産を受け継ぎ、ホテルのオーナーとして何不自由なく暮らす元舞台俳優のアイドゥン(ハルク・ビルギネル)。
しかし、若く美しい妻ニハル(メリサ・ソゼン)との関係はうまくいかず、一緒に住む妹ネジラ(デメット・アクバァ)ともぎくしゃくしている。
さらに家を貸していた一家からは、思わぬ恨みを買ってしまう。
 (公式サイトより転記させていただきました)

残酷に、そして滑稽に人間の内面をあぶり出した映画。
こんな映画体験は貴重だと思います。

主人公アイドゥンは俳優として大成できなかったものの、父親から受け継いだ財産で悠々自適な生活を送っています。
自負するように、ホテルの客とも気さくに話す社交性もあるし、悪い人では無いのですが。。。。

自分のエッセイを称賛するメールを、妻や友人にわざわざ読み聞かせるその姿は滑稽でもあるのですが、意外だったのは聞き手の反応でした。
本当に信頼し合う相手なら、やんわりとアイドゥンの勘違いを指摘しそうなものなのに。
彼を取り巻く人間関係の希薄さが、見えた気がする瞬間です。

アイドゥンが家賃を滞納する一家との接し方一つとっても、一見親切そうで実は上から距離を置いて眺めているのが判ります。
それでも、彼の妻ニハルがとった行動よりはずっとまともですけどね。

人は他者に認めてもらう事を渇望する生き物なんだな〜とつくづく感じます。
そして、人間ってちっぽけだなぁと思います。
小さな人間だからこそ、自分の中に渦巻く感情や固執した考えなどに縛られ、それが大きな重しとなってしまうのかもしれませんね。

野生の馬を捕獲するシーンは迫力!
自然と馬の美しさが、人とは対照的に感じられました。
そしてカッパドキアは、なんだか宇宙的空間で不思議な場所ですね。

辛辣な言葉の応酬。緊迫する会話劇が苦手な人には辛いかもしれません。
所々でハッとさせられ、自分と照らし合わせ考えこんでしまう
濃密な映画でした。

シネ・リーブル梅田 にて鑑賞

 

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