ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「陽だまりハウスでマラソンを」〜走りはじめたくなる〜

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公式サイト:http://hidamarihausu.com/
※音声が出ますのでご注意ください

監督・脚本:キリアン・リートホーフ
脚本:マーク・ブレーバウム
製作:ボリス・シェーンフェルダー
撮影:ユーディット・カウフマン
編集:メラニー・マーガリト
録音:ミロスラフ・バビッチ
美術:アーウィン・プリブ
衣装:ガブリエレ・ビンダー
キャスティング:シモーネ・ベーア
音楽:ペーター・ヒンデルトゥール
(2013年 ドイツ制作 115分)
原題:Back on Track

※ネタバレを含みます。結末に触れていますので、ご注意ください

【ストーリー】
元オリンピック選手で伝説のランナー・パウル(ディーター・ハラーフォルデン)は、最愛の妻(タチア・サイブト)の病気をきっかけに夫婦で老人ホームに入居する。
忙しく働くひとり娘(ハイト・マカッシュ)に負担をかけられないからだ。
70歳を越えても心身共に健康なパウルは子供だましのレクリエーションや規則にとらわれる施設側の態度に耐えられず、ウン十年ぶりに走り始めることに。
 (公式サイトより転記させていただきました)

久しぶりのドイツ映画
ドイツの老人ホームの実情を知らないんですが、本当?って首をひねる事だらけでした。それは、

● さほど面白そうでもないリクレーションに、ほぼ強制参加?
● なぜマラソン禁止?
● マラソンを始めるのは、精神が安定していないせい?
などなど

病で倒れる事が多くなった母親マーゴを心配した娘のビルギットは、両親を説得して老人ホームに入居させます。
自宅では庭の手入れなどをしていてまだまだ元気なパウルは、この施設の活気のなさに馴染めません。

カウンセラーのミュラーが指導する「クリ人形」の制作に、パウルはうんざり。
しかも、仕切り屋のルドルフ(オットー・メリース)が、いちいち横から口を挟んできます。
付き合いきれないパウルは、退屈なリクレーションには参加せずマラソンを再開しようと決心します。

この「栗人形」、実際にドイツでは秋に栗を使って子供が作ったりするようです。
でも、こういうのを全員揃ってやるのってどうなんでしょうね。
昔から団体行動が苦手な私は、パウルの行動に共感。
逆に、枠にはめようとするカウンセラーには???

「ベルリンマラソンに参加する」というパウルを同居人達は笑います。
規則からはみ出し、いわゆる「出る杭」のような存在になったパウルを批判する人も現れます。
しかし、彼を応援する気持ちが次第に住人の中に湧いてきます。

施設側はパウルに庭を走らないようと注意し、さらには走ろうとするパウルに精神鑑定を受けさせようとします。
「その年で走り始めるなんておかしい」というミュラーの発想は、あまりにも極端ですよね。

映画「アメリ」のポスターが目につく部屋にいる、カウンセラーのミュラー。
パウルよりも、この若い女性の内面の方が心配になります。
心に何かを抱えているんじゃないのかと想像するのですが、そこはあえて描かれていません。

このガチガチな施設の方針には、ありえへん!と思ってしまいました。
管理する責任があるから、目が行き届かない事は許可できないという事なんでしょうか。
高齢者であっても、というか逆に残りの時間が限られているのなら、自分が打ち込める事に時間を費やしたい気持ちがあって当たり前です。

周りの人の噂話やゴシップにしか興味のない人生なんて、貧しい。
自分の人生と全く関係ない人の噂なんてどーでも良くて、自分がやりたい事を追求する方が色んな意味で豊かだし。

パウル役のディーター・ハラーフォルデンさん、この方の面構えがめっちゃイイ!

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そして、この夫婦のようにお互いを一番の理解者として信頼できる関係性は素敵ですね。
それだけに、どちらかが先に亡くなったときの喪失感はいかばかりか。

文字通り「最後まで走りきる」パウルの姿から勇気をもらえますが、
ちょっとラストの演出が大げさだったかなー、個人的好みでは。

考えてみると「走る」って一人になれる時間ですね。
体を動かしながら、頭の中や気持ちを整理するのってなんだか良いかも。
ちょっとランニングに興味がわく映画でした。

シネ・リーブル梅田にて鑑賞。