ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「 博士と彼女のセオリー」 〜勇気ある女性の物語〜

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公式サイト:http://hakase.link/
※音声が出ますのでご注意ください

監督:ジェームズ・マーシュ
製作:ティム・ビーヴァン&エリック・フェルナー、リサ・ブルース
製作・脚本:アンソニー・マクカーテン
原作:ジェーン・ホーキング
(2014年 イギリス制作 115分)
原題:THE THEORY OF EVERYTHING

※ネタバレを含みます。結末に触れていますのでご注意ください!

【ストーリー】
1963年イギリス、ケンブリッジ。ケンブリッジ大学大学院で理論物理学を研究するスティーヴン・ホーキング(エディ・レッドメイン)は、パーティで魅力的な女性ジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)と出逢う。
同じ大学で中世スペイン詩を学んでいる才媛だ。ユーモアのセンスが似通っているふたりは、たちまち意気投合。キャンパスの内外でデートを重ね、舞踏会の夜に満天の星空の下でキスを交わした。
(公式サイトより転記させていただきました)

スティーヴン・ホーキングっていう人は、きっと女性にモテるチャームを備えた人なんだろうなぁ。

どうしても比べてしまうのは、BBCのドラマ「ホーキング(Hawking)」 (2004年)

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ベネディクト・カンバーバッチの瑞々しさも素敵ですが、ピーター・ファースやトム・ウォードも出演していて、キャスティングが楽しい。

↑ こちらは、若き日のスティーヴン・ホーキングがロジャー・ペンローズ(トム・ウォード)と共に特異点定理を証明するまでを描いています。
そこに、ペンジアスとウイルソンという二人のノーベル物理学賞受賞者の記者会見映像が、時折挟まれるという構成になっています。
最後まで見てやっと、これがビッグバンの余熱の発見による受賞だとわかり、この二人とホーキングの繫がりが理解できます。

過去にディスカバリーチャンネルの放送を見た時は、少々難しい内容だと思った記憶があります。
そこに、後に妻となるジェーンとのエピソードが柔らかさをプラスしているという感じでしょうか。

一方今回の映画はホーキング博士の研究云々というより、スティーヴンとジェーンとの関係性に焦点が当てられています。
ホーキングよりも、むしろジェーンが主役という印象を受けました。
と思ったら、彼女の著書が原作だったんですね。納得。

運動ニューロン疾患と診断されたスティーヴンと共に生きて行こう、たとえ2年の命であっても彼の側にいようという、ジェーンの強い意志と行動力に敬服します。
寿命は2年と宣告されたのに、実際には発祥から40年以上が経過した現在も博士は研究を続けているのですから、彼自身もすごい気力と生命力の持ち主だなぁと感心するんですが。

前半は、スティーヴンとジェーンが知り合い互いに惹かれていく過程が描かれます。
そこにはウィットに富んだ会話と、光あふれる映像がキラキラと存在します。
正直、ここら辺はあまり面白く有りません。個人的にはちょっと退屈でした。
コーヒーカップに注がれるクリーム、カレッジの螺旋階段といった映像がリンクして美しいのですが。

結婚後年月が経ち、ジェーンは夫と子供の世話に加え自分の研究と忙しさに苛立っています。
ここら辺からドラマが複雑になってきてちょっとずつ面白くなってきます。

ちょっと気になるのは、あの時点まで介護士の助けなしで長年暮らしていたんでしょうか?
だとしたら、妻の負担が重過ぎる!とビックリしてしまうんですが。。。。
妻の研究をサポートする気はないんかい? とスティーヴンに憤りさえ感じてしまいます。
あれじゃまるで、家に妻をしばりつける傲慢な夫みたいじゃないですか〜

ジェーンは母の勧めで聖歌隊に参加し、そこで知り合ったジョナサン(チャーリー・コックス)との親交が始まります。
スティーヴンと子供達も含めた彼らの関係が、ちょっと不思議で微妙なバランスを保っている感じです。
配偶者以外との人間関係を下世話な感じではなく、精神的なバックアップに焦点をあてて描いているのですが、3人目の子供についての義母の質問だけは超現実的でした。
本当にあんな質問をされたとしたら、もうやってられへん!とちゃぶ台ひっくり返しますよ、私だったら。

ジョナサンとジェーンは、宗教的な面からもしっくり来るだろうし、良かったねジェーン、良い伴侶に恵まれて!と個人的には思います。
事実はどうであれ、26年もスティーヴンを支えたジェーンという人の存在はものすごく大きいものだったと思います。
彼女のサポートなしに、ホーキング博士の名声はなかったでしょうし。

ベネディクトがホーキングを演じた際も、BAFTAでノミネートされたり何かの主演男優賞を受賞してましたが、こういう役は賞をとりやすいという面があるのは事実だと思います。
エディは、見た目もホーキングそっくりですね。はまり役とはこういう事かと。

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その演技も素晴しいと思いますが、個人的にはフェリシティ・ジョーンズの成長ぶりが嬉しかったのです。
彼女、容姿は結構平凡だと思うのですが、一歩引いたような謙虚さが感じられるのが魅力だと思います。
ITVのドラマ「ノーサンガー・アベイ」から7年たって、すっかり大人の女性になりましたね。
そういえば、先日WOWOWで放送された「あなたとのキスまでの距離」(2013年)でも、とまどい迷う女心を表現してたっけ。

全体的に奇麗にまとまりすぎてる感じがあって、感情移入できなかったのが残念。
監督は「マン・オン・ワイヤー」(2008年)などを撮ったジェームズ・マーシュ。
「イミテーション・ゲーム」の直後に見たから、よけいに薄味に感じてしまったのかもしれません。

TOHOシネマズ 梅田にて鑑賞。

 

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