ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「FRANK -フランク-」 〜おもしろうてやがて悲しき…〜

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公式サイト:http://frank-movie.jp/
※音声が出ますのでご注意ください

監督:レニー・アブラハムソン
共同脚本:ジョン・ロンスン、ピーター・ストローハン
音楽:スティーヴン・レニックス
(2014年 イギリス/アイルランド制作 95分)
原題:FRANK

※ネタバレを含みます。結末に触れていますので、ご注意ください

【ストーリー】
ミュージシャンになることを夢見て、曲作りに励む
イギリス人青年、ジョン(ドーナル・グリーソン)。
彼は、入水自殺騒ぎを起こしたキーボード奏者に代わって、
インディー・バンド「ソロンフォルブス」のライヴに
飛び入りで参加する。
ステージで彼が遭遇したのは、巨大な張りぼてのマスクを被り、
「スープの中のクルトン。油に沈め!」と絶叫する
フロントマン、フランク(マイケル・ファスベンダー)だった。
(公式サイトより転記させていただきました)

前半コメディ、その後グッとシリアスになる
不思議なテイスト。私はこの人の涙に弱いのです。

ミュージシャン志望とはいえ、失業者でもなく
ブルーカラーの労働者という訳でもなく、
ジョンは普通のサラリーマン。
エキセントリックさのかけらもない
平凡な小市民。ドーナル・グリーソンが
演じてるから、そんな感じがよく出てます。

彼は、頭の中で常に歌詞をつぶやいてるけど、
これがつまらない(笑)

そんなジョンは、ふとした事で出逢った
バンドの中心的存在・フランクに傾倒していきます。
ちなみにこのフランク、外見だけは90年代の
イギリスで人気のあったフランク・サイドボトム
というキャラクターがモデルになっているようです。

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フランクが常に張りぼてのマスクを被っているという
状況に加え、ジョンとバンドメンバーとのちぐはぐな
やりとりなど、前半は結構ユルめのコメディという印象。

ところが、このバンドを売り出そうとジョンが
野心を抱いたとこらへんから、状況が変わっていきます。
彼はフランクを通して、自分の夢を実現しようと
するのですが、見方を変えると自分の価値観を
周りに押し付けてるとも言えるわけで。。。。

ジョンの凡庸さは、フランクの被り物の下の顔に
こだわったという点に象徴されているように思えました。
ずっと被り物をかぶって生きている人が
何故そうなったのかと、明確な理由を
人は欲しがるもんですよねー。そう簡単じゃないのに。

私としては、フランクの被り物の下の顔よりも、
湖畔の別荘を訪れたあのドイツ人女性に
彼が何を話し、彼女の心を開いたのか、
そっちの方がよっぽど気になりましたよ。

ジョンが薄々感じていたこと、自分には
音楽の才能が無いのだと言う事に直面した際の
やりきれない気持ちを考えると、それも
すごく切ない話なんではあるのですが。

そして、マイケル・ファスベンダーの涙、
私は特に彼のファンじゃないのですが、
この人の泣き顔に弱いのです。
ジェーン・エア」「シェイム
それでも夜は明ける」「悪の法則」などなど。
簡単に言ってしまうと演技力の一言で
片付きそうですが、何故かグッときてしまいます。

長年被り続けた被り物の跡が付いた髪、
なんだかとても無防備に見える姿で歌う
あの “I love you all” という歌声に
心震えました。良い俳優だなぁ。

このユニークな映画を撮ったのは
ヨーロッパ映画祭で上映された
『ジョジーの修理工場』(07)が
印象的だったアイルランド出身の監督さん。

バンドメンバーが合宿する。湖畔の別荘と
その周辺の景色、これがまた無駄に素敵で(笑)

シネ・リーブル梅田にて鑑賞