ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「シッダールタ」美しすぎる映像

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ビートニク映画祭公式サイト:http://king-of-the-beats.com/

 製作:コンラッド・ルークス   
原作:ヘルマン・ヘッセ   
脚本:コンラッド・ルークス   
撮影:スヴェン・ニクヴィスト   
美術:マルコム・ゴールディング
(1972年 アメリカ制作 85分)
原題:SIDDHARTHA

【映画の紹介】
文豪ヘルマン・ヘッセの世界的ベストセラーで、
ビートニク世代のバイブルと言われた同名小説を原作に、
シッダールタ(釈迦)の悩める一生を描く。
ビートニクたちと交流し東洋思想に傾倒していた
コンラッド・ルークスの『チャパクア』に続く2作目にして
最後の作品。撮影はイングマール・ベルイマン作品で知られる
スヴェン・ニクヴィスト。72年ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞受賞。
 (公式サイトより転記させていただきました)

ブログを放置している間に、すっかり情報が古くなって
しまって申し訳ありません。シネ・ヌーヴォさんでの
「ビートニク映画祭」は既に終わってしまい、
今後は神戸や京都他で開催されるようです。

ジャック・ケルアック原作の映画「オン・ザ・ロード」を
昨年見て、初めて知った“ビートニク”というムーブメント。
それ自体にはあまり興味をそそられなかったのですが、
原作となるヘッセのこの小説には少々思い入れがあるので
久しぶりに、ヌーヴォさんまで足を運びました。

映画の始まり。暗闇の中、遠くに見える小さな日の光。
やがて夜明けを迎えた水平線は、その光によって包まれてゆく。
鏡のような水面が映し出す空の青と、雲の白さ。
沐浴をしようと、青年二人がやってくる。

冒頭からのこの美しい映像を見ると、心の内側から
嬉しくなるような、そんな気持ちになります。
また、人は自然の恩恵を受けて生かされているのだなぁと、
しみじみ感じるのです。

しかし、生きる歓びに溢れているように見えるこの
若者シッダールタは、裕福な家を捨て修行する道を
選びます。

映画での、その後のシッダールタの紆余曲折についての
描かれ方、こちらは少々ベタな印象であまりキラリと
光るものは感じられませんでした。表現が平凡というか。

しかし、とにかく映像が素晴しいのです。
スヴェン・ニクヴィストという人は有名な撮影監督ですが、
今作品のように、自然を背景に生きる人達の息吹が
感じられる様な映像を、私自身は彼の撮影した他の
映画では見たことがありませんでした。

そこで調べてみると、彼の両親はアフリカで宣教活動を行っており、
父親は野生動物の写真などを撮るアマチュアのカメラマン
だったようです。なるほど、雄大な景観というのは、
スヴェン・ニクヴィストのルーツだったのかもしれません。

という訳で、映画そのものの出来以上に映像が
美しすぎる(笑)作品でした。映画館で見られて良かった。

まだ心が柔らかい20代前半、仏教の本をあれこれ
読んでいた延長で手に取ったこの本の内容は、他の
どの本よりもスーッと自然に心に入ってきました。

シッダールタ (新潮文庫)

シッダールタ (新潮文庫)

 

それまで読んでいた本に書かれていた思想や教義とは違い、
ヘッセの仏教理解に基づき彼の目線で描かれた物語が
取っ付きやすくてナチュラルに感じれられたのかも
しれません。今度実家に帰ったら、再読したいと思います。

ヘッセの他の作品では、比較的最近読書会で読んだ
デミアン」も彼自身の思想が垣間見え、面白い本でした。

デミアン (新潮文庫)

デミアン (新潮文庫)

 

シネ・ヌーヴォ にて鑑賞。