ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「ブルージャスミン」突き放される心地よさ

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公式サイト:http://blue-jasmine.jp/
※音声が出ますのでご注意ください

監督・脚本:ウディ・アレン
製作:レッティ・アロンソン、スティーヴン・テネンバウム、
エドワード・ウォルソン
共同製作:ヘレン・ロビン
製作総指揮:リロイ・シェクター、アダム・B・スターン
共同製作総指揮:ジャック・ロリンズ
撮影監督:ハビエル・アギーレサロベ
美術:サント・ロカスト
編集:アリサ・レプセルター
衣装:スージー・ベンジンガー
(2013年 アメリカ制作 98分)
原題:BLUE JASMINE

※ネタバレを含みます。結末に触れていますので、ご注意ください

【ストーリー】
サンフランシスコの空港に美しくエレガントな女性が降り立った。
彼女は、かつてニューヨーク・セレブリティ界の花と謳われた
ジャスミン(ケイト・ブランシェット)。
しかし、今や裕福でハンサムな実業家の
ハル(アレック・ボールドウィン)との結婚生活も
資産もすべて失い、自尊心だけがその身を保たせていた。

最初から最後までケイト・ブランシェットの独壇場!

主人公のジャスミンですが、冒頭の初対面の人との会話からして、
見ている側に「この人なんかヘンだわ…」と感じさせます。
そう、彼女は精神安定剤が欠かせない状態なのですよね。

ゴージャスな生活から一転、一文無しで
夫もその息子も失ったジャスミンは、
決して裕福ではないシングルマザーの妹
ジンジャーの家に居候することになります。

かつてジャスミンの夫の会社に投資した大金を失った事が、
夫と離婚する一端となっているジンジャーですが、
ジャスミンを気の毒に思い、彼女の力になろうとします。

人は良いけど、選ぶ男性も服もセンスの悪いジンジャー役は、
ドラマ版・オースティンの「説得」(2007年)のアン役や
マイク・リーの映画で御馴染みのサリー・ホーキンス。
そういえば彼女自身、アカデミー賞の時、センスが
良くなかった(笑)そういう点でもこの役に合ってる?!

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ジャスミンとジンジャーは共に里親の元で育った姉妹なので、
血のつながりが無いという設定なのですが、なんの共通点もない
対照的なキャラクターです。

なので、ジャスミンはジンジャーの婚約者チリや、騒々しい
暮らしぶりが気に入らず、労働者階級のチリはお高くとまる
ジャスミンを敵視しています。

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この関係性は公式サイトにも記載がありましたが、
一瞬、テネシー・ウィリアムズの「欲望という名の電車」の
ブランチとその義弟を彷彿とさせます。

しかし、映画のキャラクターはあくまでデフォルメされてるというか、
あの下品な男達との食事にジャスミンを連れて行くジンジャーの
見る目のなさは、いくらなんでもナシでしょう(笑)

という訳で、出てくる人達は滑稽で、アレン流の笑いもありますが、
大変辛口でシリアスな物語でした。笑いは圧倒的に少ない。

過去に固執し、ある意味社会に適応できないジャスミンは
決定的な精神の崩壊に至ります。
なんとかなるやろぉ〜的な淡い期待を抱いてこの映画を見ていると、
思い切り突き放されるのです。いや、それが逆に気持ち良かった。

今回、病的な表情も含めた迫力あるケイトの顔芸(?)も
楽しめますが(笑)、鼻持ちならない役だとしても
立ち居振る舞いに彼女の持つ気品と優美さがにじみ出ていて、
私自身は、ジャスミンという人物を嫌いになれませんでした。
ラストのスッピン風の顔や、心細げなその表情にも
愛らしさを感じたのは、やはりファンだからでしょうかね。

大阪ステーションシティシネマ にて鑑賞