ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

ダブリンの時計職人 〜人との繫がり〜

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公式サイト:http://uplink.co.jp/dublin/
※音声が出ますのでご注意ください

監督:ダラ・バーン
プロデューサー:ドミニク・ライト、ジャクリーン・ケリン
脚本:キーラン・クレイ
撮影:ジョン・コンロイ
美術:オーウェン・パワー
(2010年 アイルランド/フィンランド制作 94分)
原題:PARKED

※ネタバレを含みます。結末に触れていますので、ご注意ください

【ストーリー】
ロンドンで 失業し故郷ダブリンに戻ってきた時計職人
フレッド(コルム・ミーニイ)は、職と家を失い
ホームレスとなった悲しい現実を受け止めきれず、
落ち込んだ日々を送っていた。しかし “ 隣人”として
あらわれた青年カハル(コリン・モーガン)との
出会いで次第に新しい自分を発見していく。
 (公式サイトより転記させていただきました)

どんよりとした海、薄暗い寒空の下
一人ベンチに座るホームレスの男性。
そんな主人公が登場する暗い話なんですが、
この映画はどこかユーモラスで、
ふんわりした温かさを感じさせるのです。

フレッドは、駐車場に止めた車の中で
決まった時間に起き、身支度を整え、
植物に水をやるという規則正しい生活を
おくる事で、ホームレスであるという現状を
なんとかやりすごしているように見えます。

蛍の光が流れる大晦日の夜も、もちろん
一人車の中で過ごすフレッド。見ていて
貧困以上に、この孤独感が厳しいですね。

そんな彼に気軽に声をかけてきたのが、
同じくホームレスのカハルでした。
最初は警戒していたフレッドも次第に心を開き、
いつしか、お互いが心の拠り所のような
存在になっていきます。

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カハル役は、ドラマ「魔術師マーリン」で
人気が出たコリン・モーガンです。
人懐っこく陽気な一面を持ちながら、
心の傷を抱えたカハルという青年の心情を
見事に表現していて、しみじみと上手いです。
カハルが幼い頃、家族と見た花火の記憶が
彼の最後を暗示していたようで、涙を誘います。

暗示といえば、プールの飛び込み台で躊躇する
フレッドの様子は、彼の気持ちの変化と今後の
人生の明るい兆しを、象徴しているようでした。

そのプールで出会った、未亡人の
ジュールス(ミルカ・アフロス)も
喪失感を抱えたまま、今の自分の居場所に、
違和感のようなモノを持っているという点で
彼らと通じる部分があるのです。

カハル、ジュールス、それぞれの思いがこもった
時計を修理するフレッドの行為は、
彼らの気持ちを代弁しているようにも思えます。

ジュールスのフレッドに対する言葉を聞いて
ふと思ったのは、たとえ親密な間柄でなくても、
自分の事を気にかけてくれる誰かがいるって
とても心強いということ。

人との繫がりを感じる事ができる、それって
やはり生きていく上で欠かせない事だなぁと
感じさせられ、哀しいけれど良い映画でした。

シネ・リーブル梅田にて鑑賞。