ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「さよなら、アドルフ」 〜さよなら、少女の私〜

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公式サイト:http://www.grandillusion.jp/
※音声が出ますのでご注意ください

監督・脚本:ケイト・ショートランド
原作:レイチェル・シーファー
共同脚本:ロビン・ムケルジー
撮影:アダム・アーカポー
編集:ヴェロニカ・ジェネット
音楽:マックス・リヒター
(2012年 オーストラリア/ドイツ/イギリス 109分)
原題:LORE

※ネタバレ含みます


【ストーリー】
1945年春。敗戦後のドイツで、ナチ親衛隊の高官だった父と母が
連合軍に拘束され置き去りにされた14歳の少女・ローレは、
幼い妹・弟たちと遠く900キロ離れた祖母の家を目指す。
 (公式サイトより転記させていただきました)

 

ナチス政府高官の娘ローレは、おそらく自分たちゲルマン民族
優越性と、ユダヤ民族の劣等性などを教育されて育ったのでしょう。
この少女のユダヤ人に対する差別意識に、少々ひるんでしまった私です。
人間は教育でそこまで偏見に染まってしまうものなんでしょうか。。。。

まだ父親に甘えていたローレが、いきなり一家の長というか
乳飲み子を含めた兄弟達を守らなければいけない立場になります。
食べ物もなく、交通手段もなく、戦後はだれしも大変な状況だとはいえ、
彼女達の置かれた状況はかなり過酷です。

気丈に振る舞うローレですが、手持ちの少ないお金や貴金属などを、
結構簡単に人に渡してしまいます。この辺の駆け引きのなさは、
彼女がまだまだ子供だという事と、したたかさを持つ必要のない
恵まれた環境に育ったという事を物語っています。

米軍により街の壁に貼られた、ナチスによるユダヤ人迫害の写真を見て
ローレは強い衝撃を受けます。それまで、正しい事をしていると信じていた
父親がしてきた事は一体なんだったのかと。

それでも彼女は、兄弟たちと共に生き、無事に祖母の家まで
たどり着くしかないのです。逞しくならざるを得ないローレの変化と、
昨日まで信じて疑わなかった価値観と現実とが彼女の中で巻き起こす
葛藤のようなものが、実に痛々しく描かれています。

何かと力になってくれるユダヤ人青年トーマスとローレの関係は
まさにローレの精神的な“揺れ”を表しているようです。

ラスト近く、なんとか祖母の家にたどり着いた兄弟3人ですが、
祖母の態度は戦時中そのままの価値観を引きずったものでした。
そこでローレはそれまで抑えてきた、大人達の作った世界への
激しい憤りのようものを爆発させます。

私は、彼女が怒ってくれてなんだかホッとしたのです。
自分の価値観に陰りがみえ、ついにそれが根底から覆されようと、
まっすぐに未来を、真実を見つめて欲しい。そんな思いに
彼女が応えてくれたような気がしたからかもしれません。

ローレと妹リーゼルの着ているワンピースが可愛い。
手持ちカメラで寄った映像は、ローラの心情を表すのに
効果的だとは思ったけれど、少し酔ってしまいました。

梅田ガーデンシネマ にて鑑賞。