ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「もうひとりの息子」 〜母は強し〜

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公式サイト:http://www.moviola.jp/son/
※音声が出ますのでご注意ください

監督・脚本:ロレーヌ・レヴィ
原案:ノアム・フィトゥッシ
製作:ヴィルジニー・ラコンブ / ラファエル・ベルドゥゴ
(2012年 フランス制作 101分)
原題:LE FILS DE L'AUTRE

※ネタバレ含みます

【ストーリー】
テルアビブに暮らすフランス系イスラエル人の家族。
ある日、18歳になった息子が兵役検査を受ける。
そして残酷にも、その結果が証明したのは、
息子が実の子ではないという信じ難い事実。
18年前、湾岸戦争の混乱の中、出生時の病院で別の赤ん坊と
取り違えられていたのだ。
 (公式サイトより転記させていただきました)

「病院で取り違えられた息子達」という設定は同じですが、
「そして父になる」よりも、こちらの方が断然好みでした。
何より俳優の演技が安定していて、特にパレスチナ人の母ライラ役
アリーン・ウマリさんの芝居には、共に涙してしまいました。とはいえ、
センチメンタルに描かれているお涙頂戴的な映画では、決してありません。

「そして父…」とは違い、こちらの息子達は18歳という年齢。
それだけに彼らは自分で考え、自らの道を選択する意思をもっています。
ここでややこしいのは、息子が入れ替わったのがイスラエルに住む
ユダヤ人とパレスチナ人の家族だという事です。

自分の血を分けた息子が、反目する対場にある家族に育てられていた、
そして自分の子だと思っていた子が、実はその家族の息子だった。
この事実をちゃんと受け止められないのは、どちらの家族でも
やはり父親でした。ここら辺の柔軟性のなさは、万国共通なのかしらん。
母親はそんな事よりも息子への気持ちの方が強いのです。

息子達はどうかというと、ヨセフは自分のアイデンティティに揺らぎを
感じ始めます。そもそもユダヤ人の定義が未だによくわからないのですが、
「ユダヤ人の親から産まれた者」でないとわかったとたんに、
ラビの彼に対する扱いが急に変わるというのもおかしな話で、
ヨセフの反発したくなる気持ちはわかります。
神はすべての人を無条件に受け入れるんじゃないのか!と頭にきます(笑)

一方のヤシンは、医者になってパレスチナ自治区に病院を建てるという
目標を持つなかなかの好青年。しかも、ユダヤ側、パレスチナ側という
変なこだわりを感じさせない柔軟性がとても素敵。
この息子達二人は、どちらも素直で良い青年だったので、必然的に
映画が爽やかに仕上がりになっているんですねぇ。

それでも、パレスチナ側からするとユダヤ人は敵だという意識があるに
違いないと想像はできるのですが、ヤシンの兄のあの弟に対する態度は
ちょっと極端なんじゃないかなー。
そんな兄に対してもヤシンの対応は大人で、いやー出来た子!

というわけで、登場する息子達も素敵でちょっと出来すぎた話やなぁという
気がしないでもないのですが、見ていて希望が感じられる映画というのは
良いですね、やっぱり。

ヨセフ役のジュール・シトリュクは「バティニョールおじさん」(2001年)の
少年を演じていた子だそう。この映画好きだった記憶はあるけど、
ジュールくんの顔は覚えてない。。。この機会にもう一度みたい。

梅田ガーデンシネマ にて鑑賞。