ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「ムースの隠遁」 〜三大映画祭週間2012 その5〜

三大映画祭週間2012:http://sandaifestival.jp/index.html

HIDEAWAY

監督:フランソワ・オゾン
出演:イサベル・カレ、ルイ=ロナン・ショワジー、メルヴィル・プポー
2009年/フランス/シネマスコープ/88分
原題:Le refuge 英題:HIDEAWAY

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
ムースとルイは若く、美男美女で裕福な全てを備えたカップル。
しかし、二人の生活をドラッグが次第に蝕んでゆく。
(公式サイトより転記させていただきました)

ムースとルイがヘロイン注射を打つ場面がつづく序盤は、
ずーっと、うっすらとしか目を開けてられませんでした(笑)
注射は、人がしてるのを見るのも生理的にキツいもんですから。
ルイにいたっては、首にまで針を突き刺して‥。その結果、あっけなく死んでしまうし。
メルヴィル・プポー、あれだけの出演ですか。見事な死体演技でしたけど。

生き残ったムースは、アニマル柄のコートにジーンズといういでたちで
ルイの葬儀に現れたます。なんとなく、彼女がどんな育ち方をしてきたかが窺えますね。
そういえば、入院先にも誰も来てなかったようやし、孤独な身の上なのかもしれません。

とはいっても、ムースのどことなく老けた表情を見ていると、常識のない若者という
風情でもないんですよね。「子供を育てるには若すぎる」というセリフが出てくるので、
おそらく若者という設定だと思うのですが、ムース役のイザベル・カレ、
撮影時の実年齢が38才位で、ちょっと無理があったのかも。

ただ、このムースという人物自体がどことなくミステリアスなので、
年齢不詳な雰囲気は悪くない感じがしました。彼女の、どこかあきらめたような
淡々とした様子、普段はあまり表に出さない感情表現がひそかに爆発する様子など、
イザベル・カレに上手くはまっていたと思います。

ルイの子供を宿したムースが過ごす、田舎の家。
このロケはどこで行われたんでしょうか、とても素敵です。
歩いて海岸に行ける夏の別荘、緑茂る素朴な庭。エリック・ロメールの映画に登場する、
これぞフランス人がバカンスを過ごす所!というイメージの場所です。
ムースが人知れず涙した(というか大泣きした)草原も、こんな所で泣いてみたい
なんていう馬鹿げた考えを、一瞬起こさせるような爽やさがあります。

そこへ、ルイの弟ポールが訪ねてきます。
ポール役は、ルイ=ロナン・ショワジーという人ですが、どうやらミュージシャンのようで、
映画の中でも、ピアノで披露している曲が素敵です。いかにもおフランス的な感じ♪
エンディングではイザベル・カレも一緒に歌っているバージョンが流れます。

この上品な雰囲気を持つ美しい男子は、やっぱりオゾンの好みなんでしょうか。

La Nuit M'AttendLa Nuit M'Attend
(2006/10/16)
Louis

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ポールはそのソフトな印象どおりゲイなのですが、彼に好感を持ち始めたムースは、
彼が村の男性といつの間にかデキてしまった事がなんとなく面白くなさそうです。
それでも、ムースとポールの間には、お互いに共有する想いもあり、
親密な時を過ごすようになります。

結果的に、ムースが一種動物的な勘でポールを信頼し、彼に子供を託す展開に
一瞬納得してしまった私。いや、常識的に考えるとトンデモないんですけど。
そこは、ラストのポールの様子で納得させようという感じでしょうか、オゾン監督。
作品全体に流れる繊細な雰囲気が好きなので、多少強引な展開も良しとしてしまいます。

シネ・リーブル梅田にて鑑賞。