ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「ミヒャエル」 〜三大映画祭週間2012 その1〜

三大映画祭週間2012:http://sandaifestival.jp/index.html

01MICHAEL

監督・脚本:マークマルクス・シュラインツァー
出演:ミヒャエル・フイト、ダヴィド・ラウヘンベルガー、ギゼラ・ザルヒャー
2011年/オーストリア/ヴィスタ/96分
原題:MICHAEL 英題:MICHAEL

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
35歳の独身男ミヒャエルは、ろくに友達もおらず、家で地味な暮らしを送っている孤独な男。
勤めている保険会社の知り合いといえば、最近、家が近所だとわかったクリスタぐらいだ。
しかし、彼には誰にも想像のできない秘密があった。
それは彼が家の一室に10歳の少年ウォルフガングを軟禁していることである。
(公式サイトより転記させていただきました)

この映画が初監督作品というマークマルクス・シュラインツァーという人は、
これまでに数多い映画製作に携わったいるようです。
その中にはミヒャエル・ハネケ監督作品のタイトルも何本かありました。
中でも『白いリボン』ではキャスティング等も含め、
子供たちと関わりの多い仕事をしていたようです。

そのせいという訳でもないのでしょうが、余計なセリフや過度な感情表現が
省かれていて、静かな怖さを感じさせる作品です。

もちろん、少年が監禁されている状況そのものが怖いので胸がザワザワするのですが、
彼らの日常が淡々と描かれているだけに、余計に不気味さが増すのです。

そう、あくまでも冷ややかに淡々と描かれているというのが大きなポイントです。
露骨な描写は無くても、ミヒャエルが少年に性的暴力を加えているは明白ですし、
そんな生活の中でも、少年はなんとか少しでも楽しみをみつけようとしています。

少年が高熱を出して寝込んでしまったとき、あわてたミヒャエルがとった行動は
穴を掘るという事。。。。怖いですね。
そして、少年を閉じ込めている地下室に二段ベッドを運び入れ、その後
新たな獲物を物色しているシーン。。。。ここも怖ろしい。

私が小児性愛者に抱く嫌悪感は、その性的嗜好が反社会的行為に結びついた時
犠牲になるのが力を持たない子供達だという事からくるものだと思います。
つまり、その性的行為は絶対的に一方的な押し付けによるものだからです。

映画の中でも、ミヒャエルが少年を喜ばせようとしているような場面があります。
しかし、それはあくまでもミヒャエルの自己満足の為、自分に対する後ろめたさを
軽減するためだけの行動なのです。
二人が山の上で望遠鏡を覗くシーン、ミヒャエルは何かに焦点を合わせて
少年に見せようとしますが、少年の背の高さでは何度やっても望遠鏡の位置が
ズレてしまうという出来事は、二人の関係性を表しているようにも思えます。

決定的な事故の後は、祈るような気持ちで事の成り行きを見守っていました。
はっきりと結末を見せてるわけではないけれど“きっと大丈夫”と感じるラストでした。

シネ・リーブル梅田にて鑑賞。