ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

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「ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人」 〜気持ちの豊かさとは〜

HERB&DOROTHY

公式サイト:http://www.herbanddorothy.com/jp/

監督・プロデューサー:佐々木芽生
エグゼクティブプロデューサー:カール・カッツ、キャシー・プライス
編集:バーナディン・コーリッシュ
撮影監督:アクセル・ボーマン
音楽:デヴィッド・マズリン
(2008年 アメリカ)

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
ハーブ&ドロシー夫婦は、ニューヨークの現代アート界きっての有名コレクター。
彼らは30年以上にわたり日々ギャラリーやアーティストらを訪ね歩き、
少しずつお気に入りの作品を買い集めてきた。
今では20世紀を代表するアーティストに成長した画家による名作も数多くあったが、
彼らの1LDKのアパートはすでに収納の限界を超えており…。
(シネマトゥデイより転記させていただきました)

郵便局員のハーブ(ハーヴィ)と図書館司書のドロシー夫妻、
現代アートコレクターとしての彼らの足跡をたどるドキュメンタリー。

仲良き事は美しきかな。見ていてなんだか楽しくなるご夫婦です。
ハーヴィが初めてドロシーを見かけた時「知的そうな人」だという印象を持ったと言うと、
「プリティだと思ったわけじゃないのね」と聞き返すドロシーが可笑しい。

確かに若い頃のドロシーの写真を見ると、性的な魅力でアピールするタイプではなく
上品で知的な雰囲気を感じさせる女性ですよね。
そういう女性を好ましいと感じるハーヴィのセンスがいいよなぁ。
そうでないと、夫婦揃っての、このとてつもない道楽は成立してないですよね。

過去に、ハーブ&ドロシー自身が絵を描いていたというエピソードを見て納得しました。
二人からは、アーティストが作品を創る過程にも深く関わっていたいという情熱を感じます。

例えば、画家が下絵にマスキングのため貼ったテープが面白いと思ったら、
本来の作品とは異なっていても、それを一つのアートとしてとらえる等、
自分自身の感覚を最も重視する姿勢がうかがえます。

ウォーホールポロックくらいしか知らない私でも、ここに出てきた作品は面白かったです。
NYの現代アートには“ミニマル”や“コンセプチュアル”なんていうカテゴリがあるんですね。
映画には出てきていませんでしたが、小野ヨーコさんの作品等は“コンセプチュアル”になるのかな?
もっとも、そういうふうに呼ばれる事に抵抗があるアーティストもいらっしゃるみたいですが。

このドキュメンタリーを製作したのが、NY在住の日本人女性というのも何だか嬉しい。
お金儲けが目的ではない、そんな世界とは一線を画した情熱で生きているヴォーゲル夫妻からは、
心豊かに生きるヒントのようなものが見える気がします。

「美は楽しませてくれる。女性と同じだよ」(ハーヴィ)

梅田ガーデンシネマにて鑑賞(アンコール上映)。